かんせんせいかんせつえん

乾癬性関節炎

同義語
関節症性乾癬
最終更新日:
2020年12月22日
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2020/12/22
更新しました
2017/04/25
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概要

乾癬性関節炎とは、皮膚疾患の1つである“乾癬(かんせん)”に、関節の炎症を合併する病気です。乾癬は、皮膚に炎症が生じることから皮膚の新陳代謝が亢進し、ぽろぽろと皮膚がはがれる症状が現れます。皮膚症状や全身症状に応じていくつかのタイプが知られており、乾癬性関節炎はそのうちの1つです。

日本の乾癬の患者数は40~50万人と推定されています。このうち、乾癬性関節炎を発症するのは乾癬の方の14~15%と報告されています。乾癬性関節炎は幅広い年代で起こりますが、30~40歳代で発症することが多いです。海外では男女差はほぼないとされていますが、日本ではやや男性に多いといわれています。

乾癬性関節炎の関節症状は、主に指先や手首、膝、足首などに生じ、指全体の腫れや痛み、関節の変形をきたします。多くは皮膚症状を伴い、皮膚に対しての治療に加えて関節の炎症を抑える治療も必要です。治療法は消炎鎮痛剤、免疫抑制剤、生物学的製剤(生物から産み出されるたんぱく質を利用して作られた新薬)など関節の炎症を抑える薬物療法や、皮膚に対して外用療法、免疫抑制剤や生物学的製剤を用いた薬物治療、光線療法など多岐にわたります。

原因

乾癬性関節炎の発症原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や外傷、感染、薬剤、ストレス、肥満、生活習慣などの環境要因が複雑に関与していると推定されています。

乾癬性関節炎の発症には遺伝的な要因も関連していると考えられています。赤血球には血液型があるように、体の中には、個人によって特有のHLA型と呼ばれるものがあります。このHLA型は、血液型のABO型とは比較にならないほど複雑で多様性があります。なかでもHLA-Cw6、B27などのタイプが、乾癬性関節炎の発症と関連性があると考えられています。

症状

乾癬性関節炎では、主に乾癬による皮膚症状と関節症状が見られます。

皮膚症状

皮膚症状として、表面に銀白色の皮膚のかさつき(鱗屑)を伴う、比較的境界のはっきりした紅斑ができます。好発部位としては、肘や膝、頭部など外的な刺激が加わりやすい部位に多いですが、全身の皮膚のどこにでも出現します。

皮疹の原因は、皮膚の表面にある表皮が生まれ替わるサイクル(ターンオーバー)が10倍程度短縮していて、皮膚が厚くなるためです。これは、免疫に関わるリンパ球や好中球などが異常に活性化して、炎症に関わるたんぱく質(サイトカイン)を作ることで表皮を刺激しているためと考えられています。

関節症状

関節の炎症も、皮膚と同様に外的な力のかかりやすい場所におこりやすく、手指のDIP関節(第一関節)の腫れや、指全体が腫脹するほか(指炎)、足趾、手関節、アキレス腱周囲の足関節、踵部、足底などに痛みが出現します。手指の関節の腫れに伴って、爪の肥厚や変形を認めることが多いです。

乾癬性関節炎では、腱や靱帯などの付着部に炎症がおこることで、炎症が波及して関節に及びます。そのほか、腰痛(仙腸関節炎)や頸部痛・背部痛(脊椎炎)なども起こりえるため、関節の破壊による変形が進行する前に治療する必要があります。

検査・診断

乾癬性関節炎の約70~80%は、関節の症状よりも皮膚症状が先行します。そのため、好発部位に関節の痛みや腫れを認めた際には、乾癬の皮疹がないかを確認します。特に頭部や爪、臍部などに皮疹がある方は乾癬性関節炎がおこりやすいといわれています。

リウマチ疾患に関連して、血液検査では「リウマトイド因子」と呼ばれる物質が測定されます。関節リウマチの患者さんの多くが陽性になるリウマトイド因子は、乾癬性関節炎では陰性になることが多いです。関節炎・腱付着部炎の評価は、診察のほか、X線、関節エコー、MRIなどの画像で評価して、関節リウマチや変形性関節炎、痛風などとの鑑別を行います。

治療

乾癬性関節炎は、皮膚症状と関節症状の両方に対しての治療を行う必要があります。

皮膚症状

軽症例の場合には、ステロイド剤や活性型ビタミンD3剤を用いた外用治療が中心です。重症度があがるにつれて、光線療法、免疫抑制剤による内服療法、さらには、生物学的製剤を用いた治療などを単独、もしくは併用して行います。慢性の免疫の病気なので、継続的な治療は必要ですが、ほぼ皮疹を気にせずに生活できる状態(寛解)を目指します。

関節症状

関節の慢性的な炎症によって、関節破壊が進行すると元に戻すことが難しくなります。そのため、関節症状に対しては、炎症を抑え、関節破壊の進行を抑える薬物療法が中心に行われます。

軽症であれば関節の炎症や痛みを抑える非ステロイド性抗炎症薬の内服やステロイドの関節内注射が用いられます。炎症の範囲や進行の状況に応じて、さらには、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)や生物学的製剤の使用が検討されます。

乾癬性関節炎に使用される生物学的製剤は、TNFα阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23p19阻害薬など、多くの種類が使用できるようになってきました。皮膚症状と関節症状の程度に合わせて、皮膚科専門医やリウマチ専門医と相談のうえ、薬剤を選択することになります。

生活習慣の改善

そのほか、乾癬性関節炎では、肥満、動脈硬化高尿酸血症メタボリックシンドローム糖尿病などの併存症が多いことが知られており、それらのコントロールを一緒に行うことがとても重要です。そのため、禁煙、食事療法・運動療法、減量などの生活習慣病の改善を目指す指導も併せて行います。

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