せんてんせいこうじょうせんきのうていかしょう

先天性甲状腺機能低下症

別名
クレチン症
最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

先天性甲状腺機能低下症とは、うまれつき甲状腺のはたらきがうまく機能していない疾患です。発症頻度は2,000~5,000人に1人程度といわれており、先天的にみられる内分泌疾患としては頻度の高いものです。

甲状腺そのものが存在していないことから発症することも多いですが、それ以外にも原因は多岐に渡ります。甲状腺の機能が低下した状態が放置されると、身体面や知能面での発達が遅れることが知られており、無症状の場合であっても積極的なホルモン補充を行うことが推奨されています。

日本においては生後間もなく行われる新生児マススクリーニングの対象疾患になっており、早期に発見できる仕組みになっています。

原因

甲状腺機能低下症は、胎児期やお産の際に生じた何かしらの原因がきっかけとなって甲状腺ホルモンのはたらきが低下することから発症します。80%以上の症例においては、甲状腺ホルモンを産生する甲状腺そのものが正常に形成されていなかったり(低形成、無形成)、正常な位置に存在していなかったりする(異所性)ことから発症し、甲状腺形成異常と呼びます。

甲状腺は妊娠初期から形成され、妊娠7週頃までに本来位置するべき前頚部に認めるようになります。この発生過程において何かしらの異常があることで甲状腺形成異常に伴う甲状腺機能低下症が発症しますが、発症には遺伝的要素・環境因子などが複雑に関与すると推定されています。

また、甲状腺そのものは適切に存在するにもかかわらず、甲状腺ホルモンの産生が低下している場合もあります。さらに、甲状腺ホルモンを適切に産生する能力があるにもかかわらず、甲状腺ホルモンがはたらきかける先の臓器が異常を示すこともあります。

症状

甲状腺ホルモンの作用不足に関連した症状が出現します。出生後間もなくから甲状腺ホルモンの作用は不足していますが、生後しばらくは明らかな症状がないことも多く、新生児マススクリーニングで初めて指摘されることも少なくありません。

正常な甲状腺ホルモンには、全身の代謝を正常に保ったり、各種臓器の運動を活発にさせたりするはたらきがあります。甲状腺ホルモンの機能が低下すると、全身の代謝機能が落ちるようになります。そのため、低体温や、何となく元気がない、といった全身症状を認めるようになります。

また、消化機能の低下もみられるようになるため、生理的な黄疸が長引くようになったり、便秘になったりします。その他、脈が遅い、臍ヘルニアがある、皮膚が乾燥している・むくんでいる、舌が大きい、などの症状を認めることもあります。

甲状腺ホルモンは、骨の成長や脳の発達にもとても重要なはたらきをしています。そのため、もし無治療のまま放置をされると成長障害や知的発達面での遅れが生じます。また、さらに年長児になると、成人の場合と同様の症状を認めるようになります。

検査・診断

日本では、新生児マススクリーニングの対象疾患として先天性甲状腺機能低下症が含まれています。甲状腺ホルモンの産生量は、脳から産生されるTSHと呼ばれるホルモンの指令によって調整されています。

多くの場合、先天性甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの産生そのものが低下しており、脳からより多くのTSHが分泌されています。新生児マススクリーニングでは、TSHの値をもとに検査がなされており、異常に高い値の場合には、要検査として通知されるようになります。

しかし、原因によってはこのスクリーニング方法をくぐり抜けるものもありますし、検査のタイミングによっては正確な評価ができない場合があることには留意が必要です。

スクリーニングで精密検査が必要になった場合には、より詳細に、甲状腺ホルモンに関連した血液検査(甲状腺ホルモンやTSH、サイログロブリンなど)が行われます。また、甲状腺が正常な位置に存在しているかどうかを確認するための甲状腺超音波検査も行われます。

甲状腺機能低下症では、骨の発達に異常を認めることもあるため、膝周囲のレントゲンを撮影することで骨の成熟度を評価することもあります。

甲状腺機能低下症にはさまざまな原因があることが知られていますし、一過性であることも永続性であることもあります。しかしこれらを区別するための検査に時間をかけることはせず治療をはじめることを優先します。どの原因によるのかを判断する病型診断は通常3歳以降に行われます。この目的のために、より詳細な検査(甲状腺シンチグラフィーや負荷試験など)が行われます。

治療

甲状腺機能低下症の治療の第一目標は、成長障害や精神発達遅滞を避けることです。こうした合併症は、病気を早期に発見して適切な治療をすることで避けることができるため、甲状腺機能低下症と診断された場合には、仮に無症状であっても積極的な治療が行われます。

具体的には、レボチロキシンナトリウムと呼ばれる甲状腺ホルモンを内服することになります。内服後は定期的な採血や発達のフォローが必要です。永続的に内服を継続するか、どこかの段階で内服を終了できるかは、病型や治療経過などによります。

新生児マススクリーニングの導入による早期発見・早期治療が行われるようになってから、患児の長期予後は改善していることが報告されています。

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