概要
慢性円板状エリテマトーデスとは、エリテマトーデスの中でも特徴的な皮膚所見の1つを指します。エリテマトーデスとは、自己免疫性疾患のひとつに含まれ、皮膚を含む全身の臓器障害を伴う全身性エリテマトーデスと、皮膚だけに症状の出る皮膚エリテマトーデスに分類されます。
皮膚エリテマトーデスとして認められる慢性円板状エリテマトーデスは、皮疹が頭や首に限局する場合と、手足や体など広範囲にみられる場合があります。後者の場合には全身性エリテマトーデスへ移行することがあります。また、全身性エリテマトーデスの1〜3割の患者さんに慢性円板状エリテマトーデスが認められます。
原因
慢性円板状エリテマトーデスは、遺伝的体質と紫外線暴露などの環境要因が組み合わさって免疫機能に異常が生じ、自分の細胞成分に対して過剰に反応するリンパ球が自分自身の皮膚を攻撃することから発症します。ちなみに、免疫機能とは、ウイルスや細菌など自分とは異なる異物から身体を守るシステムを示すものです。
慢性円板状エリテマトーデスの皮膚症状は、紫外線にあたることで悪化するといわれています。そのほか、寒冷、外傷、喫煙習慣、薬剤、妊娠・出産、ストレスなども皮膚症状が悪化する因子のひとつであると考えられています。
症状
慢性円板状エリテマトーデスは、名称から想像されるように、赤みを伴うは円形の皮疹が生じます。周囲の健康な皮膚との境界が明瞭で、やや盛り上がりをみせます。表面は白くカサカサとしており、毛穴も同時に障害を受けます。
慢性円板状エリテマトーデスの皮疹は、頬や鼻、耳、頭部などにみられることが多いです。頭に生じた場合には、髪の毛が抜けてしまうこともあります。唇にできることもあり、潰瘍が生じることもあります。慢性円板状エリテマトーデスでの皮膚症状は、慢性な経過を辿り、軽快と再燃を繰り返します。最終的には皮疹の中心部が固くなり、皮膚の色素が脱失します。
慢性円板状エリテマトーデスの皮疹は、全身性エリテマトーデスの皮膚症状としてみられることもあります。この場合には、腎機能や神経などの内臓に障害が生じると、生命の危機に瀕することもあります。
検査・診断
慢性円板状エリテマトーデスの診断は、特徴的な皮膚症状を詳細に観察することからなされます。全身性エリテマトーデスの1症状として皮膚変化が生じている可能性もあるため、臓器障害の有無を評価するための診察や検査も行われます。たとえば、血液検査を行い白血球数や貧血の有無を評価したり、尿検査や血液中のクレアチニンを測定することで腎機能障害を確認したりします。また、エリテマトーデスに特徴的な自己抗体の測定も検討されます。
また、他の疾患との鑑別を目的として皮膚生検が行われることもあります。皮膚生検で得られた検体を詳細に顕微鏡で観察し、慢性円板状エリテマトーデスに特徴的な所見があるかどうか確認します。
治療
慢性円板状エリテマトーデスは、日光にあたることで症状が悪化する可能性があります。そのため、紫外線対策を講じることは、症状を悪化させないためにとても重要です。具体的には、屋外での活動時間をできるだけ短くする、外に出る場合には日焼け止めをしっかりと塗る、長袖長ズボンを着用する、日傘を使用する、などの一般的な紫外線対策が考えられます。屋内にいる場合も、窓の側は紫外線の量が多いため、窓の近くに長時間いないことも大切です。
皮膚症状をよくするために、ステロイド外用薬を使用します。また、ヒドロキシクロロキンというお薬を内服する治療を検討することもあります。
また、慢性円板状エリテマトーデスが、全身性エリテマトーデスの1症状として生じている場合には、全身性エリテマトーデスによる内臓病変の治療を兼ねて、ステロイドの内服による治療も必要となる場合があります。
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