クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
Noimage s500x350
分娩後異常出血
分娩時出血とは、分娩時に正常分娩の出血量を超える量の出血が起こることを指します。日本産科婦人科学会用語集では「正常分娩の出血量は500mL 未満とされており、それを超える量の出血を分娩時異常出血...
Male consulter resolved
クリップに失敗しました

分娩後異常出血(ぶんべんごいじょうしゅっけつ)

更新日時: 2017 年 04 月 25 日【更新履歴
更新履歴
2017 年 04 月 25 日
掲載しました。
閉じる

概要

分娩時出血とは、分娩時に正常分娩の出血量を超える量の出血が起こることを指します。日本産科婦人科学会用語集では「正常分娩の出血量は500mL 未満とされており、それを超える量の出血を分娩時異常出血という」 と定義されています。

ただし、分娩時出血量を検討した報告 などでは、単胎・経腟分娩:800mL、単胎・帝王切開:1,500mL、多胎・経腟分娩:1,600mL、多胎・帝王切開:2,300mL までが全体の90%を占めると報告されており、500mL以上の出血は決して珍しくないといえます。

原因

大きく分けて4つの原因があります。

(1)弛緩出血(子宮筋の弛緩)

弛緩出血とは、胎盤が排出される際におこる出血を予防するためにはたらく筋肉の収縮が弱くなってしまうことで起こります。

胎盤は赤ちゃんに酸素と栄養を届ける器官なので、血流がとても豊富です。その量はおよそ700mL/分ともいわれています。子宮の筋肉の収縮が弱くなってしまう原因としては、分娩による子宮筋の疲労、多胎、羊水過多、巨大児、胎盤の一部や卵膜の一部の胎盤内遺残、子宮筋腫などが挙げられます。

(2)分娩時外傷

外傷が起こる原因として以下があげられます。

頸管裂傷(けいかんれっしょう)

頸管とは、子宮の出口の部分を指し、妊娠中は胎児が子宮の中に留まっていられるように閉じている部分です。分娩の際には、この子宮の出口が開きますが、その際に子宮の出口に圧力がかかり裂けてしまうことがあります。

また、出産の際に会陰(えいん)といわれる部位に圧力がかかり、そこが裂けてしまうこともあります。初めてのお産の際には会陰が硬く、赤ちゃんが生まれる際に障害になってしまうことがあるため、医師の判断で、あらかじめ麻酔をして会陰を少し切ることもあります。傷がついた会陰は出産後に縫合しますが、縫合した皮膚の下に血腫(けっしゅ)ができてしまうことがあります。

子宮内反症

子宮が裏返しになることで、腟内や外陰に出てきてしまうことを指します。胎盤をとり出す際に起こりやすく、臍帯(さいたい)(へその緒)を引っ張りすぎると子宮が裏返り、大量に出血することがあります。

子宮破裂

起きる頻度は低いですが、巨大児の分娩や、陣痛促進剤の使用による過度な子宮の収縮、帝王切開や子宮筋腫核出術などにより、子宮の筋肉が瘢痕化(傷の部分が固く伸びが悪くなること)するなどがあります。赤ちゃんを娩出する前に子宮が破裂した場合は、胎児死亡や脳性麻痺のリスクが高く 、母体の命も危険にさらされることがあります。

(3)組織

胎盤の一部や卵膜の一部が、子宮内に残ってしまい、子宮の筋肉の収縮が妨げられたことによる出血です。胎盤が正常時に付着する部位よりもより深い筋層に付着することで、出産後に剥がれにくくなる癒着胎盤も組織による出血に含まれます。また、前置胎盤といわれる子宮の出口に胎盤が覆ってしまう病気の場合、分娩時に大量出血が起こりうるため、事前に自分の血液を貯めたり、輸血の対応が可能な分娩施設への転院を検討したりする必要があります。

(4)血液の凝固不全

凝固不全の原因疾患としては、妊娠高血圧症候群・HELLP症候群・ITP・TTP・血友病などがあります。また一部の薬剤が原因となる場合もあります。

播種性血管内凝固不全症候群(DIC)という状態になると、非常に重い出血を引き起こします。DICの原因は、過度の出血以外にも、羊水塞栓症、胎盤早期剥離、死亡胎児の長期けい留(死胎児症候群)、敗血症などがあります。

症状

症状は、原因によってさまざまですが、共通してみられるのは大量の出血です。出血に伴って、頻脈となり、血圧の低下、そのほか貧血症状が現れます。この状態が続くと出血性のショック状態になってしまいます。出血性のショック状態に続く重要な状態として、先述の播種性血管内凝固不全症候群があります。ショック状態に陥ると、意識障害や更なる血圧低下、頻脈などが起こり、命の危険もあります。

検査・診断

大量出血がおこった場合、まず重要なのがバイタルサイン(脈拍、血圧など)の確認です。そのほか、出血部位の特定と原因検索、血液の状態を確認するために適宜採血を行います。

貧血の状況、凝固因子、電解質、肝臓腎臓の状況なども評価します。出血部位を特定するために、体外から子宮の触診をおこなったり(子宮収縮の状況を確認)、内診をおこない子宮頸部や産道の裂傷がないか、子宮内に遺残物がないかなどを確認します。子宮内の遺残物に関しては経腹エコーや経腟エコーを使って確認することもあります。

治療

まずは、バイタルサインに注意して全身管理がおこなわれます。太い血管に点滴を取り、補液を開始します。その後、原因に合わせて治療を行います。

弛緩出血の場合には、まず双手子宮圧迫およびマッサージを行います。子宮収縮を促すための薬剤を点滴したり 、子宮の筋肉に直接注射したりします。子宮頸部や産道に裂傷が確認されれば、出血部位を縫合して出血を止めます。

子宮内に遺残物が確認できた場合には、手や器具を用いて遺残物を掻き出します。出血が1000mLを超えてもなお止まる気配がない場合は輸血の準備を開始します。ショック状態に陥るようであれば、輸血に加えて、気道の確保や酸素投与、昇圧剤の投与などを行います。