のうちゅうしょう

嚢虫症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

嚢虫症とは、有鉤条虫と呼ばれる寄生虫の幼虫(すなわち嚢虫のことです)が人に寄生することから発症する病気です。有鉤条虫はおもに豚に感染しており、嚢虫症はアフリカ、アジア、東欧、中南米など衛生環境が整っていない地域において多く発生します。

嚢虫は体のさまざまな部位に入り込み、寄生先の臓器に関連した症状を引き起こします。眼球に入り込んだ場合は失明の危険性が出てきますし、脳に寄生した場合にはてんかん麻痺(まひ)を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。事実、世界のなかにはてんかんの原因の多くが嚢虫症である地域もあります。

嚢虫症では、外科的に嚢虫を摘出することもあれば、成虫に感染している方を駆虫薬で治療することもあります。ワクチンや予防薬はありませんが、有鉤条虫を体内に摂取しないように気を付けることが、発症予防につながります。有鉤条虫の生活環を理解すること、食べ物の取り扱いには注意することが重要です。

原因

人が有鉤条虫の虫卵を摂取すると、小腸内において孵化し、幼虫である嚢虫が小腸から血流に乗って体内にばらまかれます。ばらまかれた先が皮下や筋肉であればしこりができるだけですが、運悪く脳や眼であった場合、神経症状や失明などを伴う嚢虫症を引き起こします。この場合、嚢虫はやがて死んでしまい、有鉤条虫は成虫になりません。

嚢虫は、たどりついた臓器の組織の中では、さまざまな方法で免疫から逃れることが知られています。しかし、やがて免疫によって嚢虫が攻撃されると周囲に炎症が起き、このときに症状がでることが多いとされます。嚢虫が死ぬと、石灰化した肉芽腫として残るか、吸収されて消えてしまいます。

人の体内で有鉤条虫が成虫になるのは、汚染された豚肉を充分に加熱せずに食べることで感染した場合です。豚の筋肉内の嚢虫が人の小腸で成虫になると成虫は年単位で生存し、長いと最長7mにもなることもあります。このとき豚肉の嚢虫では人は嚢虫症をきたしません。

体節の1つに5~10万の虫卵が含まれ、体節がちぎれると便と一緒に排泄されます。体外で体節が壊れ、虫卵がばらかまれて、虫卵で汚染された水、食べ物などを摂取することで、人や豚に感染します。自分で排泄した有鉤条虫の体節の虫卵から再び感染することを自家感染といいます。このとき同居者などにも感染するリスクがあり、虫卵を摂取すると嚢虫症になることがあります。

宗教上、豚肉を一切、食べない方が嚢虫症を発症した報告があり、流行地域出身の使用人が成虫に寄生していて、排泄された虫卵に料理が汚染されて感染したと考えられています。嚢虫症は、虫卵からの感染で起き、豚肉の嚢虫からは直接には生じません。

豚が虫卵を摂取した場合、小腸で幼虫となって嚢虫が血流に乗って、豚の筋肉に嚢虫症をきたします。この豚肉を人が充分に加熱しないで食べると、小腸で成虫になって、虫卵を含む体節を排泄するようになります。

症状

虫卵からかえった嚢虫は人の体内において血流に乗って、あらゆる臓器へと寄生することがあります。筋肉や皮膚に嚢虫症をきたした場合、しこりを触知することがあります。嚢虫が眼球や脳に寄生した場合にはより重篤な症状を引き起こすことがあります。眼球に関連した症状として、かすみ目や視力障害、最悪の場合には失明することがあります。脳や神経に関連した症状としては、頭痛、手足の麻痺、認知症症状、てんかんを思わせるけいれんなどが出現することがあり、最悪の場合、亡くなることもあります。
 

検査・診断

有鉤条虫の診断に際しては、血液検査で有鉤条虫に対しての抗体をみることがあります。また、便検査で有鉤条虫の虫卵や虫体の一部を確認します。

ただし嚢虫症の診断では、便検査は自家感染を除いて、便から虫卵や虫体が検出されることがないため意義が低いです。また、筋肉などの組織に寄生していることもあるため、病変部位を生検して嚢虫を確認することがあります。その他、CTやMRI検査などを行うことで嚢虫によって形成されている病変部位を確認することもあります。

治療

有鉤条虫の成虫の治療方法としては駆虫薬(プラジカンテル)の使用が一般的です。ガストログラフィンという造影剤で駆虫する方法もあります。嚢虫症の治療では、陳旧性の場合、虫体が死滅しているため駆虫薬は不要です。陳旧性でない場合、状況に応じて、駆虫薬、ステロイド、抗けいれん薬による治療、外科的な摘出術などが行われます。嚢虫症では寄生した組織に炎症を起こすことがありますが、その炎症を抑えるためにステロイドを使用することがあります。また脳に寄生して反復性のけいれんの原因となることがあり、抗けいれん薬が使用されることもあります。実際にどのような治療方針を取るかは、個々の症例によって異なり、状態を正確に把握した上で決定されます。

予防

有鉤条虫の成虫に感染している場合は、環境が虫卵で汚染されるため、駆虫します。高度に罹患がみられる地域では、一斉に駆虫することもあります。また、食べ物と共に体内に虫卵を摂取するため、調理前の手指衛生を徹底することや、豚肉はしっかりと加熱処理をすることが重要です。

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