脳

多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)

多系統萎縮症とは

 多系統萎縮症とは、脊髄、小脳、脳幹といった脳の様々な部位が障害を受けることから発症する病気を指します。多系統萎縮症は脊髄小脳変性症と呼ばれる疾患の一部を構成しており、特に遺伝性がなく弧発する例のものを指します。
多系統萎縮症では、ふらつきや立ちくらみ、尿失禁、震え、動作が遅くなるなどの症状を呈するようになります。以前は、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイドレーガー症候群の三つが分類されて考えられていましたが、いずれも病理学的な特徴を共有することから現在では一つの疾患概念として捉えられるようになっています。
多系統萎縮症では、病気を根本的に治療する方法は確立されていません。多系統萎縮症では様々な症状を呈することになるため、薬物や周囲の環境整備を含めて各種症状に応じた支持療法を行うことになります。

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https://medicalnote.jp/contents/160428-002-EJ

原因

 神経細胞が障害を受けると細胞は「変性」と呼ばれる変化を受けて、最終的には神経細胞がなくなって脳が萎縮していきます。神経変性疾患の一つに「脊髄小脳変性症」と呼ばれる疾患が存在しますが、遺伝性の有無に応じて大きく分類されています。このなかでも遺伝性のない脊髄小脳変性症は70%ほどを占めています。遺伝性のない脊髄小脳変性症のことを「弧発性脊髄小脳変性症」と呼びますが、この中の多くを多系統萎縮症が占めています。
多系統萎縮症では、「αシニクレイン」とよばれる異常構造物が神経細胞内に蓄積しています。小脳や脳幹、脊髄における神経細胞が蓄積を呈することが多く、同部位の障害を受けることから病気が発症すると考えられています。
「多系統」の名前が示唆する通り、脳神経の中でもどの部位が障害を受けるかに応じてそれぞれ出現する症状は異なってきます。例えば脳幹の一部が障害を受けるとパーキンソン病のような症状が出現しますし、小脳が障害を受けるとバランス調整に障害を受けますし、脊髄に関連して自律神経障害を呈することもあります。

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症状

 多系統萎縮症では、小脳、脊髄、脳幹の障害に応じた症状が出現します。中でも多系統萎縮症では、小脳の障害に起因した歩行障害から発症することが多いです。小脳に障害を受けると体幹のバランスをとるのが難しくなるため、千鳥足のようなふらふらとした歩行を見るようになります。また両足を揃えた形で起立するのも難しくなるため、体幹のバランスをよりとりやすくするために足を広げて歩くようになります。また、しゃべり方にも影響が生じ、ろれつが回りにくくなります。さらに手の障害も認め、震える、字が書けないなどの症状が出現します。
脊髄に障害が生じると、自律神経系の症状を見るようになります。具体的な症状としては、尿失禁や頻尿、立ちくらみ、頻尿、汗をかきにくいなどを認めるようになります。
さらに脳幹に関連した症状としてパーキンソニズムと呼ばれる症状が出現します。歩幅が狭くなったり、動作が遅くなります。表情も乏しくなり、方向転換時に転倒をしやすくなります。多系統萎縮症では、手足の突っ張りや嚥下障害を見るようになり数年かけて悪化していくとされます。
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検査・診断

 多系統萎縮症では、頭部MRIを行い病変部位の萎縮性変化を含めた病変を確認します。また脳の血流を評価するためにSPECTと呼ばれる検査が行われます。また、PETと呼ばれる検査を通して、脳細胞の代謝機能を評価することができます。多系統萎縮症ではSPECTで血流低下が、PETで代謝の低下がそれぞれ確認されることになります。神経系の働きを評価するために、聴覚誘発電位、視覚誘発電位などの検査も行われ浮ことがあります。
多系統萎縮症では自律神経機能異常が生じることがあります。ヘッドアップチルト検査と呼ばれる検査を通して、体位に応じた血圧の調整がうまくいかないことを確認します。また、心電図検査、膀胱自律神経検査、サーモグラフィーなども同じく自律機能を評価することを目的として実施されることがあります。また、多系統萎縮症では睡眠時無呼吸を生じることもあるため、ポリソムノグラフィ検査が行われることもあります。

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治療

 多系統萎縮症では、病気を根本的に治療する方法は残念ながら存在していません。そのため、出現する症状にあわせた支持療法を組み合わせて行うことになります。例えばパーキンソニズム症状に対しては、初期であればパーキンソン病で使用される薬剤(エルドパなど)も有効なことがありますが、時間経過と共に無効となることが多いです。小脳性の運動障害に対してはタルチレリン、尿障害に対しては抗コリン薬や間欠的自己導尿、睡眠時無呼吸症ではCPAPなどがそれぞれ行われることになります。
多系統萎縮症では、薬物治療による治療効果よりも、リハビリテーションによる治療効果が高いと考えられています。残存している筋力を保持することが、転倒のリスクも減りますし、最終的には寝たきりの予防にもつながると考えられています。生活の質を長い時間維持するためにも、リハビリテーションはとても重要です。

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