しきゅうかすい

子宮下垂

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

子宮下垂とは、子宮が本来の位置よりも下がる状態のうち、子宮の下降が軽度で腟の外に脱出しない状態をさします。子宮下降の状態が進むと、子宮脱の状態に移行します。また、子宮の下降が軽度でも、子宮周囲の膀胱、直腸、尿道、小腸などの臓器も一緒に下がってしまうことがあり、それぞれ膀胱瘤直腸瘤、尿道脱、小腸脱と呼ばれます。これら骨盤内の臓器が本来の位置より下がってくる状態を総称して、骨盤臓器脱もしくは性器脱と呼びます。

原因

骨盤の底には、筋肉(骨盤底筋群)や、器官や組織をつなぐ靭帯組織(内骨盤筋膜)があり、これらが協調して骨盤内の臓器を支えています。子宮下垂は骨盤底の筋肉や結合組織などの骨盤支持構造が経腟分娩や骨盤内の外科手術などにより障害された状態や、加齢により支持構造自体が緩むことで生じます。長時間の立ち仕事、重いものを持ち上げる仕事、肥満や便秘など骨盤への負担が強い状態も要因となります。

症状

子宮下垂は、子宮の下降の程度が軽度で、自覚症状はほとんどないことが多いです。しかし、歩行時や重いものを持ったとき、トイレでしゃがんだとき、入浴時などに子宮が腟の入口近くまで下降することで、腟にものが挟まったような違和感(子宮下垂感や外陰部違和感)が生じる場合があります。またそのような状態で腟に指をいれるとピンポン大の硬い塊(子宮の入口部分)に触れます。

膀胱や直腸が下がった場合には、膀胱の出口が圧迫されることで排尿困難、夜間の頻尿、尿意の切迫感などの症状、直腸の出口が圧迫されることで便意が頻回に生じる、排便が困難になるなどの症状が見られる場合があります。

検査・診断

内診により容易に診断できます。さらに、腹圧を加えることで子宮が下がる状態を作り出し、子宮の下降の程度を評価します。必要に応じて、超音波、MRIやCT等の画像検査を行い、子宮や子宮と周囲との組織との関係を調べることがあります。

治療

症状が現れていない場合は、経過観察の上で骨盤底筋体操を行うことが基本です。症状が現れている場合や、子宮周囲の臓器の骨盤臓器脱膀胱瘤直腸瘤など)がみられる場合には、程度に応じて保存的加療(ペッサリー)や手術療法を選択する場合があります。

骨盤底筋体操

骨盤底の筋肉を鍛える運動により、軽度の尿漏れや子宮下垂を改善できる場合があります。具体的には、尿道、肛門、腟を締めて緩めるというトレーニングを、仰向け、四つん這い、座位などで行います。

保存的加療

手術を望まない場合や手術適用となるほどの骨盤臓器脱を認めない場合には、腟内にペッサリーと呼ばれるドーナツ状のリングを挿入し、子宮や膀胱、直腸などの下降した臓器を押し上げ支えます。ペッサリーには硬質プラスチック製やシリコン製など素材があり、さまざまなサイズがあります。腟の広さや臓器の下降の状態は患者さんごとに異なるため、最適なリングのサイズもそれぞれに異なります。初回の挿入段階では、リングのサイズが合わないとリングが抜けたり、痛みを生じたりすることがあり、何度か最適なサイズを調整する必要があります。また、長期的に使用すると、リングが腟壁に当たることで発赤(ほっせき)したり、感染により帯下(おりもの)が増加したりすることがあるため、子宮下垂の状態評価と合わせて定期的なリングの交換を行います。

手術療法

脱出している臓器の種類や程度に応じてさまざまな方法があり、施設や術者によっても多少のばらつきがみられます。障害を受け、緩んだ骨盤底の筋肉や結合組織などの骨盤支持構造を修復あるいは補強することが手術の基本です。

手術は、腟から行う場合とお腹から行う場合、あるいはそれを組み合わせる場合があります。お腹からの手術は、侵襲の少ない腹腔鏡手術で行われることが増えています。

膀胱の下降がみられる場合は腟の前壁の修復 (前腟壁形成)、直腸の下降がみられる場合には腟の後壁の修復 (後腟壁形成)や 肛門挙筋縫縮術が単独あるいは併用して行われます。

近年は、ポリプロピレン素材のメッシュを腟の後方に入れ、丈夫な壁を作り補強する方法が行われています。子宮摘出の有無にかかわらず施行可能ですが、メッシュ特有の合併症(感染、疼痛、メッシュの脱出など)もあります。また、腹腔鏡下で行う腹腔鏡下仙骨膣固定術が保険適応となり、注目を集めています。

こうした手術は、術後に再度骨盤支持構造が緩むことで再発するリスクがあります。再発予防のために肥満、便秘を防ぐ、骨盤周りの筋肉を鍛える (骨盤底筋体操)などを行うことが大切です。

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