かぞくせいこうこれすてろーるけっしょう

家族性高コレステロール血症

同義語
FH
最終更新日:
2023年11月07日
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2023/11/07
更新しました
2023/03/28
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概要

家族性高コレステロール血症とは、遺伝的に血中のコレステロールが高くなる病気です。コレステロールはLDL(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク質)の内部に包み込まれ、LDLコレステロールとして全身に運ばれます。家族性高コレステロール血症ではLDLを肝臓で取り込む受容体に関係する遺伝子(LDL受容体遺伝子)に異常があるため、血液中のLDLコレステロールが高くなります。

コレステロールは主に食品から取り込まれ、細胞膜の成分になったりホルモンの原料になったりするものですが、多すぎると血管壁に沈着し、動脈硬化を引き起こします。

家族性高コレステロール血症の患者は、子どもの頃から血液中のコレステロールが高い状態が続くため動脈硬化が進むスピードが速く、若くして心筋梗塞(しんきんこうそく)脳梗塞などの重篤な病気を引き起こすことがあります。

ヒトは通常LDL受容体遺伝子を2つ持っていますが、このうちいくつに異常がみられるかによって家族性高コレステロール血症にも軽症と重症があります。1つのLDL受容体遺伝子に異常がある場合は軽症で“ヘテロ接合体”と呼ばれ、患者の頻度は200人~500人に1人です。LDL受容体遺伝子2つともに異常がある場合は、重症で“ホモ接合体”と呼ばれ、16~100万人に1人の頻度で発症します。

原因

家族性高コレステロール血症はLDL受容体に関係する遺伝子に変異がみられることで、LDL受容体がうまく作られなかったり、機能が大きく障害されたりすることで起こります。

LDL受容体の遺伝子の異常は遺伝によって起こり、両親のいずれか、または両親共にLDL受容体遺伝子の異常がある場合に、子どもがその遺伝子を受け継ぐ場合があります。

特に、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子の両方が変異を起こしている場合はホモ接合体と呼ばれ、LDL代謝の大部分を担う肝臓の機能が著しく低下します。

症状

血液検査で若い頃からLDLコレステロールが高い状態がみられますが、ほとんどの場合自覚症状はありません。重症のホモ接合体の患者では、皮膚にコレステロールが沈着することで手の甲や膝、肘、まぶたなどに皮膚黄色腫(ひふおうしょくしゅ)と呼ばれる黄色っぽい塊ができることがあります。

血中のLDLコレステロールが高い状態が続くと、血管壁に沈着し動脈硬化が進行します。動脈硬化が進むと脳や心臓の血管が詰まり、脳梗塞心筋梗塞など重大な病気を引き起こします。

LDLコレステロールの代謝機能が正常な方でも加齢により動脈硬化が起こりやすくなりますが、家族性高コレステロール血症の方では子どもの頃から動脈硬化が始まり、20~30歳代で脳梗塞や心筋梗塞を発症することもあります。

検査・診断

家族性高コレステロール血症は、未治療時の血中LDLコレステロール値、腱や皮膚への黄色腫の有無、家族性高コレステロール血症や早発性冠動脈疾患(若くして脳梗塞心筋梗塞などが起こること)の有無によって診断されます。

  • 未治療時のLDLコレステロールが成人で180 mg/dL以上、小児で140 mg/dL以上
  • 腱黄色腫(手の甲、肘、膝などの腱黄色腫またはアキレス腱肥厚)や皮膚結節性黄色腫がある(小児の場合は腱黄色腫が現れにくいため、必須ではない)
  • 2親等以内の血族に家族性高コレステロール血症または早発性冠動脈疾患に罹患した人がいる

また、血中総コレステロールまたはLDLコレステロール値が著しく高い(総コレステロール値が450 mg/dL以上、LDLコレステロール値が370 mg/dL以上)場合、小児期から皮膚黄色腫が認められる場合、脂質異常症治療薬などを使用しても症状が改善しない場合などは、家族性高コレステロール血症の中でも重症のホモ接合体である可能性があります。

ホモ接合体かどうかは、家族性高コレステロール血症の発症に関わる遺伝子の遺伝子解析、LDL受容体活性測定と呼ばれる検査によって判別することができます。

治療

家族性高コレステロール血症は、幼少期から動脈硬化を進行させるため、若くして脳梗塞心筋梗塞を引き起こすことがあります。特に重症(ホモ接合体)の場合はリスクが高くなるため、できるだけ早期に発見し、積極的な治療を行うことが必要です。

主な治療には生活習慣の改善、薬物療法、LDLアフェレシスがあります。

生活習慣の改善

コレステロールや動物性脂肪の少ない食事を心がけ、LDLコレステロール値が高くならないような食生活を身につけます。家族性高コレステロール血症では小児期から動脈硬化が進むため、子どもの頃から正しい食生活を送るようにします。また、運動はLDLコレステロールを下げる効果があります。

肥満、喫煙高血圧糖尿病は動脈硬化を発症、進展させる危険因子となるため、これらを避けることも大切です。

薬物治療

生活習慣の改善だけでLDLコレステロール値をコントロールできない場合は、治療薬の使用が必要になります。

主に使用される薬はスタチン系と呼ばれるコレステロールの合成を抑える薬です。薬の量が多いほどLDLコレステロールを低下させる作用は高くなりますが、その分副作用のリスクも高くなるため、まずは低用量から開始して薬の使い方を決めていきます。また、スタチンだけで効果が低い場合は、エゼチミブ、コレスチラミン、コレスチミド、プロブコールなど別の作用機序の薬を併用することもあります。

また、最近ではこれまで使われていた高コレステロール血症治療薬に加えて、PCSK9阻害薬と呼ばれる新しいタイプの注射薬が使えるようになりました。作用が非常に強力なため、従来のスタチン系などを使っても十分な効果が得られない患者さんで使用されることがあります。

LDLアフェレシス

LDLアフェレシスとは、血液透析のように血液を体外に循環させ、機械を使ってLDLを吸着して除去する治療です。ホモ接合体の家族性高コレステロール血症患者を中心に、いかなる薬物治療を行っても効果がみられない場合に用いられることがあります。

また、家族性高コレステロール血症治療の中心となるスタチン系薬剤は妊娠中、授乳中は使用できないため、スタチン系以外の薬剤でコントロールが難しい妊婦はLDLアフェレシスが必要になることがあります。

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