概要
尋常性疣贅とは、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因で皮膚もしくは粘膜に良性腫瘍が生じる病気の1つです。一部では、“いぼ”と呼ばれることもあります。
尋常性疣贅は、あらゆる年齢層の方にみられるいぼですが、特に小児を中心とした若年層の患者が多いといわれています。好発部位は手足で、一つひとつのいぼは、えんどう豆程度の大きさをしており表面が乾燥していることが特徴です。
種類
尋常性疣贅は、大きく分けると典型例と非典型例に分類されます。また、非典型例については発症する部位により主に6種類に分けられ、患者の免疫状態により発症するものが異なります。
典型例
典型例では、表面が乾燥した円形に近い形状の尋常性疣贅が生じます。
非典型例
非典型例の尋常性疣贅としては、以下のようなものが挙げられます。
- 指/糸状疣贅……顔や首に生じやすい尋常性疣贅で、糸状に細長く生じるもの
- 足底疣贅……足の裏に生じる尋常性疣贅で、表面の乾燥が目立つもの
- モザイク疣贅……足底疣贅の中でも、複数の尋常性疣贅が融合し、石が敷き詰められたような見た目のもの
- 爪囲疣贅……爪の周辺に生じる尋常性疣贅で、治りにくいとされるもの
- 爪甲下疣贅……爪甲下から隆起してくるもの
- ドーナツ(リング)疣贅……ドーナツの輪のような形状をした尋常性疣贅で、再発した際などによくみられるもの
原因
尋常性疣贅を発症する原因は、HPV2a型、HPV27型、HPV57型などの特定のHPVへの感染です。皮膚に生じたささくれなどの小さな傷からウイルスが入り込み、徐々にいぼを形成していきます。
主な感染経路は感染者との直接的な接触です。しかし、公衆浴場やプール、ジムなどの公共施設で感染者と間接的な接触を起こすことで感染することもあります。そのほか、肉や魚を扱う職業の人は、手指がふやけやすくHPVの侵入を許しやすいことから手の尋常性疣贅を発症しやすいことも分かっています。
症状
主に、手足に数mm~1cm程度の小さないぼが生じることが一般的です。いぼそのものには痛みやかゆみは感じないことが多く、1つだけ生じることもあれば複数生じることもあります。
検査・診断
典型的な尋常性疣贅であった場合には、多くの場合視診で診断が可能です。
しかし、一部の尋常性疣贅では状態をさらに調べたり、ほかの病気との鑑別を行ったりする必要があるため、ダーモスコピー検査や病理組織学的検査、免疫組織学的検査、HPV遺伝子型同定検査などを実施することがあります。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピー検査は、ダーモスコピーと呼ばれる機器を用いて、患部をより詳しく観察する検査です。いぼやほくろの状態を詳しく観察できるため、いぼの状態やほくろのがんなどを判別するために用いられています。
また、尋常性疣贅の病変部位の残存具合などを確認するためにも使用することがあります。
病理組織学的検査
病理組織学的検査は、ほかの病気との鑑別が必要なときに用いられる検査です。
鑑別が必要な病気は発症する部位により異なりますが、脂漏性角化症やボーエン病、日光角化症、反転性毛包角化症、エクリン汗孔腫、汗管腫など多岐にわたります。
免疫組織学的検査
免疫組織学的検査は、HPV抗原の有無を検出し、病気であるかを診断するために用いられる検査です。
尋常性疣贅の発症にはHPVへの感染が関与していることから、免疫組織学的検査が選択されることがあります。しかし、HPV抗原の有無を検出しているため、HPV粒子が少なかった場合には、まれに尋常性疣贅であっても陽性反応を得られないことがあります。
HPV遺伝子型同定検査
HPV遺伝子型同定検査は、ダーモスコピー検査や病理組織学的検査で診断が難しい場合に検討される検査です。この検査は、尋常性疣贅を検出するためのプローブと呼ばれる針が必要なことから、ほかの検査と比較して選択される頻度は少ないといわれています。
しかし、HPVの型を特定することができるため、最終的な尋常性疣贅の診断方法として取り入れられています。
治療
尋常性疣贅の治療は多岐にわたり、症状や患者の状態に応じて選択されます。
近年では液体窒素を使用する凍結療法やサリチル酸外用による治療が比較的推奨度の高い治療とされている一方で、尋常性疣贅の治療の中には保険適用のない治療が多くあり、特別優先的に推奨される治療もないとされています。そのため、治療を受ける際は具体的な内容や費用などについても詳しく説明を受けるようにしましょう。
液体窒素凍結療法
液体窒素凍結療法は、液体窒素により尋常性疣贅を凍結させて除去を試みる治療方法です。溶かすための融解と凍結を4~5回程度繰り返して行われますが、発症している部位や尋常性疣贅の種類を踏まえて治療を進めていきます。
また、人によってはジンジンとした痛みを伴う場合があります。
サリチル酸外用
サリチル酸が含まれた軟膏を塗ったり、絆創膏を貼ったりして尋常性疣贅の除去を試みる治療です。化学熱傷*を引き起こしたという報告もあるため、周辺の皮膚に対する影響を観察しながら使用することが大切です。
*化学熱傷:化学物質が皮膚などに触れることによって、やけどのような傷ができること
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