しょうにとうにょうびょう

小児糖尿病

最終更新日:
2021年03月15日
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2021/03/15
更新しました
2017/04/25
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概要

小児期に発症する糖尿病のことを指します。糖尿病には、肥満や食生活などに関連して発症する「2型糖尿病」と、自己免疫などに関連して発症する「1型糖尿病」があります。

一般的に「糖尿病」として語られることの多いタイプは前者の2型糖尿病ですが、小児に発症することが多いのは後者の1型糖尿病で、発症年齢は10歳から13歳がピークとなっています。しかし、近年では肥満を伴う小児の2型糖尿病も増えてきています。

1型糖尿病と2型糖尿病では、治療方法でも異なる点があります。しかし、糖尿病と関連した長期的な合併症である心筋梗塞(しんきんこうそく)脳卒中、腎障害や視力障害などを発症しうるという共通点もあり、長期的な医療介入が必要とされます。

原因

血液中に存在するブドウ糖は、インスリンを介して細胞に取り込まれます。インスリンとは、膵臓(すいぞう)にある「β細胞」と呼ばれる細胞から分泌されるホルモンであり、血糖を下げる効果があります。インスリンが適切にはたらくことで、細胞は糖分をエネルギー源として利用することができるようになります。

しかし糖尿病の状態では細胞がうまく糖分を取り込むことができなくなり、血液中のブドウ糖の量が上昇することになります。ブドウ糖は十分量血液中に存在しているにもかかわらず、細胞はエネルギー源として利用できずに飢餓(きが)(うえた状態)に陥ることになります。

糖尿病の発症機序としては、(1)そもそもインスリンが分泌されなくなる、(2)インスリンは分泌されていてもインスリンの細胞に対してのはたらきが悪くなる、の2つが考えられます。こうした発症機序の違いから、1型糖尿病2型糖尿病が分類されています。

1型糖尿病

小児糖尿病では1型糖尿病が多いことが知られています。

何らかのきっかけで免疫機能に異常が生じ、インスリンを分泌するβ細胞が自身の免疫により破壊されることから病気が発症します。発症する原因は、自己免疫以外の関連性も指摘されています。

1型糖尿病は膵臓のβ細胞に対する自己免疫が証明される自己免疫性(1A型)と、自己免疫が証明されない特発性(1B型)に分けられます。2型糖尿病と異なり、生活習慣は発症に関わりません。

2型糖尿病

主としてインスリンのはたらきが悪くなることが原因となって発症します。

2型糖尿病では、食べ過ぎや肥満、運動不足などの生活習慣と関連してインスリンに対しての細胞の反応性が鈍くなっています。これによりインスリンを介したブドウ糖の細胞への取込みが不十分になることから血糖値が上昇し、2型糖尿病が発症します。2型糖尿病は成人にみられることが多いですが、小児、特に思春期以降の年代においても近年増加傾向にあります。

2型糖尿病には、遺伝的素因もあることが分かっており、両親が2型糖尿病の場合にはその子どもは2〜3倍発症しやすくなることが報告されています。

症状

1型糖尿病のほとんどの症例では、高血糖の症状として、のどが渇いて水をたくさん飲むようになったり、尿の回数が増えたりします。一方で、2型糖尿病の多くの症例や、一部の1型糖尿病の症例では、学校の尿検査の異常を通して初めて指摘されることもあります。

インスリンの作用が欠乏した状態では、細胞はブドウ糖をエネルギーとして利用することができません。そのかわりに自らの脂肪を分解することでエネルギーを得ます。そのため、食べているのにもかかわらず、体重が減るようになります。またこのような状態では、血液中にケトン体(脂肪の分解産物)がたまり、何となくだるいといった不定愁訴(ふていしゅうそ)が出ることもあります。ケトン体が異常に高い状態が放置されると中枢神経機能にも影響を与えることがあり、意識障害や、最悪の場合死に至ることもあります。

検査・診断

糖尿病の検査のなかでも重要な項目としては、血糖値HbA1cです。

血糖値

1型糖尿病では、初診時に明らかな高血糖となっていることが多く、それだけで糖尿病の診断がつくことが多いです。しかし高血糖が明らかではない場合は、実際に糖分を摂取してもらい血糖の変動を確認する負荷試験を行うこともあります。

HbA1c

血中のヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合した状態を指します。ヘモグロビンは血液中のブドウ糖が多いほど糖と結合するため、糖尿病になるとHbA1cが増加します。

HbA1cはその場で測った血糖値ではなく、過去1~2か月間の平均の血糖値を反映して変動します。すなわち直近1~2か月の血糖コントロール状況を反映することから、治療効果判定をする際にも重要となる項目です。

その他

糖尿病では合併症に対しての検査も重要です。血糖値のコントロールが悪い状態が長く続くと、糖尿病の合併症が生じることがあります。代表的なのは、腎障害からの腎不全網膜症からの失明、末梢神経障害(まっしょうしんけいしょうがい)からのしびれなどです。そのほか、心筋梗塞脳卒中などの重篤な合併症を引き起こすこともあります。腎障害を発見するためには、血液検査(クレアチニンなど)や尿検査(特に尿中微量アルブミン)が重要です。網膜に対しての変化を確認するために、定期的に眼科を受診して網膜症の検査も受ける必要があります。

治療

1型糖尿病2型糖尿病かによって治療方法が異なります。しかしいずれの場合であっても、血糖コントロールを良好に保ちながら、長期合併症を予防することが重要になります。

1型糖尿病

1型糖尿病は、体内のインスリンをつくる細胞が破壊されている状態のため、経口血糖降下剤などの内服薬の適応はなく、インスリン療法を一生涯にわたって行う必要があります。インスリン療法をきちんと行うことで、健常な子どもと同じような日常生活を送ることが可能です。

インスリン製剤の種類や注射の方法はさまざまで、患者さんごとに適したインスリン製剤、注射方法が選択されます。また、1型糖尿病の場合は食事療法の必要はありませんが、栄養バランスの取れた規則正しい食事を心がけることで、血糖コントロールの改善が期待できます。

2型糖尿病

2型糖尿病の場合は、食事療法や運動療法が治療の基本です。肥満や食べ過ぎが原因と考えられる場合には、年齢に合わせた必要摂取カロリーを意識した食事制限が必要となります。ただし、成長に必要な栄養素をしっかりと摂取するために、過度な食事摂取は避けなければなりません。食事療法や運動療法のみでは十分な改善が得られない場合に、内服薬による治療やインスリン療法を行うことがあります。

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