にょうまくかんいざんしょう

尿膜管遺残症

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概要

胎児期において、一時的に膀胱と体表(へそ)が「尿膜管(にょうまくかん)」と呼ばれる管で空間的につながっている時期があります。通常は妊娠週数が進むにつれて尿膜管は閉鎖するのですが、尿膜管の閉鎖がうまくいかないことがあります。この状態を「尿膜管遺残症」と呼びます。
尿膜管遺残症では、無症状なまま経過することがある一方、尿がおへそから出たり、感染症を併発したりすることもあります。小児期の間から病気を指摘されることもあれば、成人になってから症状を初めてみることもあります。まれではありますが、尿膜管癌を発症するリスクもあります。
尿膜管遺残症に関連した症状(感染徴候や尿の排泄など)がある場合には、尿膜管を摘出するための手術が行われることになります。

原因

妊娠初期の段階で、赤ちゃんの膀胱は「尿膜管」と呼ばれる管を介して体の外の空間(へそ)とつながっています。胎児の尿は、胎児期において初期の段階では尿膜管を通して体外へ排泄されています。尿膜管は通常は妊娠12週頃までに閉鎖し、線維性の組織として膀胱とへそをつなぐのみとなり、物理的空間としての連続性は消失します。
ところが、尿膜管がうまく閉鎖せずに残存したときに尿膜管遺残症が発生します。尿膜管遺残症のタイプは大きく4つに分類することができます。尿膜管瘻(膀胱とへそが完全につながっている状態です)、尿膜管洞(膀胱との交通性は遮断されていますが、へそと尿膜管が交通している状態です)、尿膜管憩室(へそと尿膜管の交通性は遮断されていますが、親指のような突起物が膀胱から突出している状態です)、そして尿膜管のう胞(尿膜管の中間地点にて水の溜まりが形成されている状態です)、です。これらの尿膜管遺残症のなかでも、尿膜管のう胞が最も頻度的には多いといわれています。

症状

尿膜管遺残症を有していても、タイプによっては症状なく経過することもあり、全く別の理由でお腹の超音波検査を受けた際などに偶然尿膜管遺残症が指摘されることもあります。尿膜管遺残症に関連した症状は、平均して2〜4歳頃に生じるとの報告もありますが、成人期になってから初めて病気を指摘されることがあります。
尿膜管のう胞や尿膜管洞では、感染症をきっかけとして腹痛を来したり、がへそから排泄されたりすることがあります。尿膜管遺残症の腹痛は当初は原因が判らず、何度も腹痛を繰り返すことがあります。虫垂炎と診断されることもありますし、原因不明の腹痛として診断がつかないこともあります。
膀胱とへそが物理的に連続性を持つ尿膜管瘻の場合、膀胱内に溜まる尿がへそから排泄されることになります。
膀胱から親指状の突起物として遺残する尿膜管憩室では、物理的な異常構造物が膀胱に存在することになります。この部位に尿が蓄積しやすく、細菌が増殖しやすい環境になるため、尿路感染症としての症状を呈することになります。
 

検査・診断

尿膜管遺残症では腹痛や尿路感染症、へそからのや尿の排泄などをきっかけとして疑われることになります。尿膜管遺残症を確認するためには、超音波検査やCTなどの画像検査が重要になります。これら画像検査を行い、物理的な構造異常物を同定することが可能です。
超音波検査やCTでは尿膜管遺残症を同定できないこともあり、その場合には臍を通して造影剤を実際に注入する検査が行われることがあります。また、排尿時膀胱造影と呼ばれる検査を行うこともあります。この検査では膀胱内に造影剤を入れ、排尿と同時に造影剤がどのような部位に分布するかを確認しますが、体の内側から尿膜管遺残症を描出することが可能です。
また、尿膜管遺残症では尿路感染症を発症することもあります。尿路感染症を確認するために、尿を用いた尿検査・細菌の検出(グラム染色と呼ばれる顕微鏡を用いた検査や培養検査など)が行われることになります。
 

治療

尿膜管遺残症の治療は、手術が基本です。特に、腹痛を繰り返していたり、尿路感染症の原因となっていたり、膀胱とへそが交通性を持っている場合には、積極的な手術療法が検討されることになります。ただし、感染症をきっかけとして尿膜管遺残症が診断されている場合には、手術に前だってしっかりと感染症をコントロールすることが重要です。すなわち、抗生物質を用いて感染症を治療してから、炎症所見が改善するのをまってから手術を行うことになります。
尿膜管は正常であれば閉鎖した線維物として存在するのみであり、生体にとって必要な物質ではありません。したがって、尿膜管遺残症の治療では、残存している尿膜管を切除することで治癒することになります。
手術方法としては、小さな傷口で済む「腹腔鏡」と呼ばれる手術方法がとられることも多いです。腹腔鏡を用いることでより短期間のうちに体力が回復することが期待でき、早期退院が可能となります。
 

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