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心タンポナーデ

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

心タンポナーデとは、心臓の周囲を覆う心嚢(しんのう)と呼ばれる空間に液体が大量に溜まってしまうことから、心臓の運動が制限される状態を指します。心嚢に液体が溜まる原因は多岐に渡り、症状が出現するかどうかは液体の容量だけでなく、どの程度急速に液体が貯留したか、という要素も重要です。

心タンポナーデを発症すると、全身に血液を送る心臓のはたらきが阻害されるため血圧が低下し、最悪の場合、亡くなることもあります。そのため、原因を特定することも大切ですが、できるだけ速やかに貯留した液体を取り除く治療が必要になります。

原因

心嚢の液体が増加する原因は、いくつかあります。具体的には交通事故で胸を強く打ち心嚢内に出血をきたす、胸を刺されて出血をする、などの外傷性の出血を挙げることができます。その他、急性心筋梗塞の合併症として「心破裂」がありますが、この場合でも血液成分が心嚢内に貯留することになります。

心タンポナーデを引き起こす心嚢内の液体成分は、血液以外のものが原因となることもあります。たとえば、ウイルスや細菌などの感染に伴って心膜炎を起こすことがありますが、この場合は炎症性の成分液が心嚢内に貯留します。また全身性エリテマトーデスSLE:全身のさまざまな場所に多彩な症状を引き起こす病気)でも心膜炎を発症することがあり、心タンポナーデの原因となりえます。

外傷や心筋梗塞などの場合は急速に心嚢液が増加するため、少量の血液でも心タンポナーデを発症します。一方、結核など慢性的な感染などの場合は徐々に液体が増加するため、液体増加に対して心臓が適応できる時間的な余裕があります。そのため、1リットル以上の大量の液体貯留をして初めて心タンポナーデを発症することもあります。

症状

心臓は、心嚢と呼ばれる空間で周りを覆われています。心嚢には正常な状態でも「心嚢液」と呼ばれる液体が存在していますが、量としては10~20ml程度です。しかし、心タンポナーデの発症時には心嚢に満たされる液体の量が劇的に増加しており、原因によっては1リットル以上の液体成分が溜まっていることもあります。

心嚢に異常な量の液体が貯留すると、心臓はうまく広がることができなくなる拡張障害を起こします。本来であれば心臓が拡張する際に血液が心臓内に満たされ、その後心臓が収縮して血液が全身に送り出されます。しかし、拡張障害があると、十分量の血液が心臓に戻ってくることができなくなります。その結果、全身に送り出される血液量が低下することになります。

心タンポナーデでは全身への血液供給が不安定になるため、血圧低下が起こります。全身の血圧低下に関連して意識障害や呼吸困難、胸の苦しさを訴えます。外傷性や心筋梗塞後の心破裂などの場合は、急速に症状が現れて悪化し、ショック死することもあります。

その一方、慢性的に徐々に液体が心嚢に貯留する場合、初期の場合は無症状です。液体成分が増えるにつれて、ゆっくりと息苦しさや呼吸困難を覚えるようになります。

検査・診断

心タンポナーデの診断には、心臓超音波検査が有効です。心臓超音波検査はベットサイドでも簡便に行うことができる検査であり、急速に症状が悪化するような場合などでは特に大きな効果を発揮します。またリアルタイムに心臓の動きや心嚢液の貯留具合を観察することができるため、診断をしつつ治療効果を目の前で観察することも可能です。

心臓超音波検査では、心臓の周りに貯留する液体成分を確認することができます。また、同時に、液体成分がどの程度心臓を圧迫しているか、どの程度正常に心臓が機能しているか、などの項目も確認することが可能です。胸部レントゲン写真でも、心嚢液の貯留を疑うことは可能です。心嚢液が貯留すると、大きくなった心臓として確認されます。

また、心タンポナーデを引き起こした原因をみつける必要があることもあります。たとえば、ウイルスや細菌、結核などの感染症で引き起こされた場合は、血液検査や培養検査でより正確に状況を確認します。心タンポナーデ治療のために行った心嚢穿刺で、吸引して得られた心嚢液の検査も行います。

またSLE全身性エリテマトーデス)に関しては心臓以外にも、腎臓の機能や血小板の数など全身臓器に異常が生じます。この場合においても各種臓器障害の評価をするために、血液検査や尿検査などが追加されることもあります。

治療

心タンポナーデの治療では、心嚢に貯留した液体を取り除きます。急性発症した心タンポナーデについては、血行動態(心臓が送り出す血液の量とその流れ方)が急激に悪くなっていることもあり、できるだけ速やかな対応が求められます。

胸に針を刺し心嚢液中の液体を除去する心嚢穿刺(しんのうせんし)と呼ばれる治療が行われます。心嚢穿刺は、動いている心臓に向かって針を刺すことになるため、大きな危険性を伴う治療方法といえます。

このため、少しでも安全性を高めるために心臓超音波検査や心電図で確認しながら実施されます。心臓超音波検査では針の動きを目視で確認することができますし、心電図では針が心臓に当たった際に電気信号の変化として確認することもできます。

心嚢穿刺のみで心タンポナーデが解除できない場合もあり、心膜切開術や心膜開窓術と呼ばれる手術が行われることもあります。心タンポナーデを引き起こした原因の病気に対する治療も必要になります。具体的には、心筋梗塞、感染症、SLEなど多岐に渡るため、病気に特化した治療法を選別することが必要になります。

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