きゅうせいういるすせいかんえん

急性ウイルス性肝炎

最終更新日:
2024年04月16日
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2024/04/16
更新しました
2017/04/25
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概要

急性ウイルス性肝炎とは、肝炎ウイルスなどに感染することによって起こる肝臓の病気の総称です。感染経路はウイルスによって異なりますが、水や食べ物、血液などを介して感染します。感染によって急性ウイルス性肝炎になると、肝臓の細胞が壊れて機能が低下します。肝臓は“沈黙の臓器”ともいわれており、目立った症状は現れないことも多いものの、発熱、倦怠感、吐き気、食欲不振黄疸(おうだん)(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状が現れることもあります。

また、B型やC型炎ウイルスが原因の場合は、急性期の症状が改善しても慢性的な炎症が生じて肝硬変肝がんを引き起こすリスクがあることも知られています。急性ウイルス性肝炎は根本的な治療法がなく、それぞれの症状を和らげるための対症療法が主体となります。

原因

急性ウイルス性肝炎を引き起こす原因となる肝炎ウイルスには、主にA型、B型、C型、D型、E型の5つのタイプがあることが分かっています。

感染経路はタイプによって異なります。A型とE型は主にウイルスの含まれた糞便に汚染された水や食べ物を介して感染します。A型は、衛生環境の劣悪な地域や下水施設が不十分な地域(発展途上国など)での感染が多く認められています。一方、B型、C型、D型肝炎は主に血液を介して感染し、感染者の血液に触れること(輸血や注射針の使いまわしなどによる)や性行為などが感染の原因となります。ただし、D型は不完全なウイルスであり、増殖するためにはB型炎ウイルスの存在が必要です。そのため、B型炎ウイルスがいなければD型による感染は起こりません。

そのほか、肝炎ウイルス以外にもEBウイルスやサイトメガロウイルスなどによって急性肝炎を発症することもあります。

症状

急性ウイルス性肝炎の症状は、原因となるウイルスによって大きく異なります。ウイルス性肝炎は、肝炎ウイルスのタイプによって発生頻度は異なるものの、いずれの型でも、急激に肝臓の細胞が壊死(えし)して急速に肝機能が低下する“劇症肝炎”に進行し、命を落とすケースもあることが知られています。

A型

食欲不振、倦怠感、腹痛、嘔吐、発熱、下痢、黄疸などがみられます。感染者の約1%は劇症肝炎に進行するとされますが、そのほかは基本的に1~2か月程度すると回復し、慢性肝炎に移行することはありません。

B型

症状は倦怠感や疲労感、食欲の低下から始まり、嘔吐や腹痛、黄疸などが現れます。場合によっては関節炎などが現れることもあります。また、B型炎ウイルスに感染したときの年齢や健康状態によって、短期間の感染で回復する“一過性感染”と、生涯にわたって肝臓にウイルスが残り感染が続く“持続感染”に分けられます。特に3歳未満の乳幼児期や出産時に感染すると持続感染に移行しやすいため、注意が必要です。持続感染によって慢性肝炎を発症すると、肝硬変肝がんに進展する場合もあります。

C型

C型の場合はそのほとんどが無症状です。そのため、気が付かないまま症状が進行する場合が多くあります。感染者の6~8割程度が慢性肝炎へと進行し、さらにそのうちの3~4割程度が時間をかけて肝硬変に進行し、肝がんを合併するケースもあるとされています。

D型

D型肝炎ウイルスはB型炎ウイルスがいなければ感染しません。つまり、B型とD型の同時・重複感染となるので、B型単体よりも症状が重くなります。症状としては、食欲不振、倦怠感、嘔吐、腹痛、黄疸などがみられます。B型とD型に同時感染した場合、重症化や劇症化することが多いとされています。さらに、B型慢性肝炎のある患者がD型にも感染する重複感染の場合、肝硬変への進行を約10年早めるとされています。

E型

黄疸や発熱、食欲低下や腹痛などの症状がみられますが、慢性化はしないとされています。ただし、重症度や致死率はA型肝炎より高く、劇症化することもあります。特に妊婦がE型炎ウイルスに感染すると劇症化しやすく、命に関わる危険があるため注意が必要です。

検査・診断

急性ウイルス性肝炎が疑われるときは、以下のような検査が行われます。

血液検査

炎ウイルス感染の有無を調べるためには血液検査が必須です。ただし、感染が成立してからウイルス量が増加するまでに時間を要するので、感染後3か月程度経過しないと陽性にならない場合もあります。また、急性ウイルス性肝炎は肝機能低下を引き起こすため、肝機能など全身状態を把握するためにも血液検査が必要です。

画像検査

肝臓の腫大や萎縮がないかなど、肝臓の形態を画像検査で確認します。急性の肝障害が出現した場合、肝がんや胆道結石が原因のことがあるため、ほかの病気を除外するためにも画像検査を行います。

また、急性ウイルス性肝炎は、慢性肝炎や肝硬変、肝がんに発展することがあるため、定期的な経過観察が必要です。その際に、腹部超音波検査やCT、MRIなどの画像検査を行い、肝臓の状態を確認します。

治療

急性ウイルス性肝炎に対しては根本的な治療がなく、感染したウイルスは人の免疫力により排除され、多くは自然に回復するため特別な治療は必要ありません。しかし、強い症状がある場合には安静を維持して、それぞれの症状を和らげるための対症療法を行います。また、劇症肝炎へ移行した場合などは血漿交換や肝移植などの治療が必要になることがあります。

*血漿交換:体外に取り出した血液を血漿分離器で血球成分と血漿成分に分離させ、病気の要因となる物質を含む血漿成分を破棄し、破棄した分と同じ量を健康な方の血漿に置き換える治療法。

予防

急性ウイルス性肝炎の発症を予防するには、原因となるウイルスの感染を防ぐことが大切です。A型、E型は主に水や食べ物を介して感染するため、不衛生な生水、十分に加熱していない肉類などを口にしないことが予防につながります。また、主に血液を介して感染するB型、C型、D型の予防には、むやみに人の血液や分泌物に素手で触れないこと、カミソリや歯ブラシの共有は避けること、不特定多数との性交渉は控えることなどが大切です。

なお、A型やB型炎ウイルスにはワクチンがあります。B型炎ウイルスに対するワクチンは2016年から乳児期の定期接種に指定されていますが、A型炎ウイルスワクチンは任意での接種となります。A型による急性ウイルス性肝炎が流行している地域に渡航する場合などは、医師と相談のうえワクチン接種を検討しましょう。

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