敗血症(はいけつしょう)

敗血症とは

Sepsis-3の定義では、敗血症とは、「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」となっており、感染に対する生体反応が調整不能となり、生命を脅かす臓器障害を引き起こす状態です。敗血症性ショックは、敗血症の一分症であり、「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義されます。敗血症は感染を基盤として発症する急性循環不全です。臓器などでの血管内皮細胞の障害が深く関わり、脳の血管内皮細胞が傷害されると脳浮腫に、肺では急性呼吸窮迫症候群に、四肢では浮腫が起こると考えられます。

敗血症を発症すると高い死亡率を示すため、早期の段階で敗血症を診断し治療介入を行うことが必要とされています。

敗血症を発症すると全身各種臓器に症状を生じ、中枢神経障害(突然精神機能障害や意識障害が起こり、頭が混乱状態になるなど)を引き起こすこともあります。また、敗血症を乗り越えてからも、Post Intensive Care Syndrome(PICSビックス;集中治療後症候群)と呼ばれる疾患を続発することが問題となっています。PICSは「重症疾患後に新しく、または悪化した身体機能、認知機能、メンタルヘルスの障害をおこすことの総称」です。

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原因

敗血症は、感染症が原因となって発症します。原因となる感染症は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など多岐に渡ります。

また敗血症では感染症の併発と同時に、全身に炎症反応が生じています。この炎症反応のことを、「SIRS(全身性炎症反応症候群)」と呼びます。全身性炎症反応症候群を発症している状況では、生体への侵襲(何らかの感染源や疾病が原因となり生体へ攻撃を仕掛けること)に対し免疫細胞が炎症性サイトカインという物質を放出して全身性の急性炎症反応を起こしています。全身性炎症反応症候群は、感染症以外にも自己免疫疾患や悪性腫瘍などに関連して生じることもあります。

すなわち敗血症とは、「感染症(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫)」を原因として「炎症反応症候群」が発症している状況と定義されています。

症状

敗血症とは、感染症により炎症反応症候群を生じている状態です。したがって、敗血症では炎症反応症候群に関連した症状を認めることになります。具体的には、体温が38℃以上もしくは36℃未満になります。また心拍数も正常より高くなり、成人であれば、一分間に90回以上の心拍数を示すようになります。加えて、呼吸回数の増加もみられるようになり成人で1分間に20回以上の呼吸をするようになります。

敗血症の症状が重篤になると、敗血症性ショックと呼ばれる状態に陥ることもあります。敗血症性ショックになると、尿量が低下したり、意識障害を引き起こしたり(せん妄など)、皮膚の色が変わったりなどの症状を認めるようになります。また血液の固まりやすさに影響が生じることもあります。

さらに敗血症から回復した後に、認知機能障害や筋力低下、心的外傷後ストレス障害などの症状を呈することもあります。こうした状態をPICS(Post Intensive Care Syndrome)と呼びます。

敗血症の診断にはSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)が利用されます。集中治療室では、感染症が疑われ、SOFA総スコア2点以上の急上昇があるときとされています。また、非集中治療室では、quick SOFA(qSOFA)2項目以上で敗血症を疑って対応することになります。

qSOFA: 1)  呼吸数22回/分以上、2) 意識レベルの低下、3) 収縮期血圧 100mmHg以下。

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検査・診断

敗血症では、炎症反応症候群を発症していることを確認するために、血液検査が行われることがあります。具体的には血液中の酸素濃度の低下や、白血球の数が異常に増加・低下していないか、凝固機能の確認として血小板の数の減少がないか、肝機能の確認として血漿ビリルビン値の上昇がないか、腎機能の確認としてクレアチニン値の上昇が見られないかなどを調べます。 プレセプシン、エンドトキシン、プロカルシトニンの測定も参考になります。

また敗血症は、感染症をきっかけとして発症するため、原因となっている感染症を検査することも大切です。たとえば細菌感染を検査するためは、感染が起きている臓器に関連した細菌培養(肺であれば痰培養、腎臓であれば尿、胆嚢であれば胆汁など、髄膜であれば髄液など)に加えて血液培養が行われます。

また、より重篤な敗血症性ショックになると、各種臓器障害が生じるようになります。そのため、臓器障害の程度を評価することも必要です。

治療

敗血症の治療では、原因となっている感染症の治療に加えて、血液循環を保つための治療が主体となります(初期蘇生の循環管理:early goal-direct therapy[EGDT])。血液循環を保つための基本は輸液であり、生理食塩水や乳酸リンゲル液などが投与されます。感染症の治療については、細菌が原因であれば抗生物質、ウイルスが原因であれば抗ウイルス薬、真菌が原因であれば抗真菌薬を投与します。

これらの治療でも状態が安定しない場合には、昇圧薬と呼ばれる循環作動薬の投与、人工呼吸器の装着、急性血液浄化法、人工心肺、血糖コントロール、栄養管理、ステロイド投与、免疫グロブリン投与、タンパク分解酵素阻害薬投与などを検討します。これらの薬剤や治療は容態に併せて選択されることになります。

敗血症のきっかけとなっていることが腹腔内膿瘍、消化管穿孔等の場合には緊急手術が必要となります。敗血症の治療ではより早期に治療介入を行うことが重要であり、診断後1時間以内を目標として、広域な抗菌薬の速やかな投与が必要となります。1時間投与が遅れると7.6%ずつ予後が悪くなると考えられています。

敗血症では病気からの回復後に認知機能障害や筋力低下、心的外傷後ストレス障害などの症状を呈することもあります(PICSビックス;集中治療後症候群)。そのため、退院後も継続したケアが必要であると考えられます。

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