にほんこうはんねつ

日本紅斑熱

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

リケッチアの一種類であるリケッチアジャポニカ(Rickettsia japonica)と呼ばれる細菌による感染症のことを指します。病原体はマダニによって運ばれ、ダニに刺されることから人に病原体がうつります。媒介者であるマダニは、日本各地に広く生息しています。マダニすべてが病原体であるリケッチアを持つわけではなく、病原体を持ったマダニに咬まれることで感染します。刺された部位の刺し口と発熱、発疹がメイン症状であり、ツツガムシ病の症状と似ているといわれています。

日本での扱いとしては感染症法にて4類感染症に指定されており、全数把握対象疾患(患者を診断した医師から保健所への届け出が義務づけられている感染症)となっています。これによると、全国で毎年200件前後の発症例があると報告されています。患者報告数は、5~10月にかけて増加し、マダニの活動時期と一致します。

同じくマダニに刺されて感染する病気としては、重症熱性血小板減少症候(SFTS)やライム病Q熱、ボレリア症、野兎病などがあります。マダニに関連して発症する病気の一つとして、その動向に注目が集まっています。

原因

日本紅斑熱は、Rickettsia japonicaと呼ばれる細菌に感染することから発症します。Rickettsia japonicaは、リケッチアと呼ばれる細菌の一種類です。リケッチアに属する細菌は、人などの細胞に感染することで初めて増えることができるという特徴を持っています。また、リケッチアはダニやノミなどの昆虫に寄生しており、そうした昆虫に人が刺されることで感染します。日本紅斑熱の場合は、マダニが病原体の運び屋となります。同じくリケッチアに分類される細菌により引き起こされる病気としては、ツツガムシ病が代表的で、症状に類似する点があることなどから、比較されることの多い疾患です。

また「日本紅斑熱」という名前から推察されるように、本疾患は日本特有の疾患です。国内を感染推定地域とするリケッチア症は、極東紅斑熱をはじめとする複数の紅斑熱群リケッチア症、ノミ媒介の発疹熱なども報告されています。世界を見渡すと、リケッチアを原因として紅斑を呈する疾患はいくつか存在します。たとえば北米大陸にみられるロッキー山紅斑熱、地中海沿岸にみられる地中海紅斑熱、オーストラリアにみられるクインズランドダニチフスなどが代表的です。わが国において輸入感染症として、African tick bite feverなどの各種紅斑熱群リケッチア症、発疹熱、2016年にはクイーンズランドマダニチフスも初めて報告されました。

症状

病原体を有するダニに刺された後、2〜8日の潜伏期間を経て症状が出現します。この潜伏期間はツツガムシ病のそれと比較すると、やや短い傾向にあります。典型的な症状は、発熱、発疹、ダニの刺し口です。ツツガムシ病においてもこれら三つの症状を認めますが、発疹の広がる部位や刺し口の大きさにやや違いがあります。

ツツガムシ病よりも播種性血管内凝固症候群DIC: disseminated intravascular coagulation)と呼ばれる病態を生じやすいともいわれています。DICを発症すると全身の臓器に血の塊(血栓)が生じやすくなり、臓器障害を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

検査・診断

病原体に対する抗体(IgG抗体、IgM抗体)を血液検査で検出します。また病原菌であるRickettsia japonica由来の遺伝子を検出することを目的として、PCR法と呼ばれる検査方法が用いられることもあります。日本紅斑熱は、検査可能な施設は限られています。臨床的に日本紅斑熱を疑う患者を診た場合には、地方衛生研究所や国立感染症研究所等で検査が可能です。

病状が進行すると播種性血管内凝固(DIC)を発症することから、血液検査にて各種臓器のマーカー(たとえば、腎臓であればクレアチニン、肝臓であればASTやALTなど)、血液の固まりやすさをみる検査(APTTやPTなど)などが併用されることもあります。

治療

治療は抗生物質により行い、第一選択としてはテトラサイクリン、その他ニューキノロン系と呼ばれる抗生物質が使用されます。日本紅斑熱を引き起こすRickettsia japonicaに対しては、一般診療上使用されることが多い「ペニシリン系」や「セフェム系」といった抗生物質が効果を示しません。したがって、日本紅斑熱を疑い、意識的に効果のある薬剤を使用する必要があります。なお、臨床症状からツツガムシ病と鑑別することは難しいこともありますが、ツツガムシ病に対してもテトラサイクリンは有効です。

日本紅斑熱については、マダニに刺されないように予防策を講じることも重要です。行楽シーズンや野外での活動中にマダニに刺される機会が増えます。そのため、自身が赴く地域におけるマダニの生息場所を事前に確認することが大切です。手足の皮膚を覆う服を着用し、マダニに触れる機会を減らすことが大切です。また、野外活動の後には、しっかりと体を洗うことや服に付着したマダニを排除することも重要です。

さらに、マダニに対する虫除け剤として、ディートとイカリジンと呼ばれる成分が入ったものが市販されています。これらの虫除け剤を使用することも重要です。
マダニに関連した病気に対する一般認知度が高まっており、国立感染症研究所からもこれらの重要性が強調されています。

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