概要
世間で言われる「みずむし」は、足にできるいろいろな病気を含んでいます。足の“みずむし”の3分の2は、人の皮膚の角質を栄養として生きるカビ(真菌)の感染症です。これは白癬菌と呼ばれる菌が原因になっているため、医学用語では足白癬と呼ばれます。皮膚の外側の角層がむけてぼろぼろになったり、湿ってジュクジュクしたりします。一方、“みずむし”の3分の1は湿疹やかぶれなど別の病気が原因といわれています。
白癬菌は足のほかにも、体、頭などさまざまな部位の皮膚に感染します。手足の爪にも入り込んで感染することがあり、この場合は爪水虫(爪白癬)と呼ばれます。
白癬菌が原因の水虫の場合、同居している方との間など人から人に感染する可能性があるため、足白癬と診断された場合には家庭内で感染対策を行う必要があります。
原因
足白癬は、白癬菌というカビ(真菌)の一種が皮膚の最外側の層(角層)に感染・増殖して起こります。白癬菌の感染は、白癬菌のついた人・動物の皮膚や白癬菌が付着したものに直接触れることで起こります。たとえば、以下のような場面で感染が起こりやすくなります。
- 同居人が白癬菌を散布している
- プール、風呂場の脱衣所を裸足で歩く
- 格闘技やスポーツでほかの人の患部と接触してしまう
- 猫などペットと密に触れる など
また、次の条件に当てはまる方は、足白癬にかかりやすく、かつ悪化しやすい傾向があります。
- 足の指が太く、足指同士が接触しやすい
- 汗をかきやすく、靴の中の湿度が高い
家族に足白癬の方がいる場合、同居家族にカビを移してしまうことが多いため、気になったお1人だけを治療しても、繰り返し足白癬にかかる心配があります。足白癬と診断された場合、家族全員、少なくとも“水虫”の症状のある人は皮膚科医による診断と治療を受けることが重要です。
症状
足の指の間の皮がむけ、ときには皮膚が湿ってジュクジュクすることがあります。あるいは、足の裏の皮膚の角質がむけたり、厚くなってごわごわした感じになったりします。小さな水ぶくれができることもあります。強いかゆみを伴うことがありますが、かゆみがない足白癬も多く、かゆみの有無は診断に役立ちません。片方の足からうつってくることが多く、軽症例では左右対象に出てくることはまれです。両足に同程度見られた場合はしばしばほかの病気(汗疱、掌蹠膿疱症)が疑われます。
検査・診断
足白癬の可能性がある場合、顕微鏡検査を行います。皮膚の表面のはがれ落ちそうな角質(鱗屑)をピンセットなどで採取し、水酸化カリウム(KOH)という液体で溶かして顕微鏡で観察します。この検査で白癬菌を確認できれば、足白癬と診断できます。
多くの場合はこの検査で、似た症状を起こすほかのカビの感染症(カンジダ、癜風)や、菌によらない“みずむし”と区別できます。ただし、患者さんが自己判断で市販の水虫の薬をすでに塗っている場合は、診断がつきにくくなることがあります。そのほか、白癬菌の詳しい種類を特定する場合は、真菌の培養検査、遺伝子検査を行うこともあります。
治療
カビの増殖を抑える外用薬(抗真菌薬)での治療が基本になります。抗真菌薬はクリームや軟膏、液剤などさまざまなタイプがあり、皮膚の状態によって選択されます。足白癬の場合、症状がない部分も含めて足の裏や指の間からアキレス腱まで、足の裏全体に薬を塗布します。また完全に菌が消えるまで、最低でも4週間は薬を塗り続ける必要があります。
白癬菌への感染が足だけでなく広範囲に広がった場合や、ごわごわした感じが強い場合などには、内服の抗真菌薬が処方されることもあります。白癬の治療に使用される抗真菌薬としてイトラコナゾールやテルビナフィンが挙げられますが、ほかの薬との飲み合わせに注意が必要なため、服用する際は医師や薬剤師に今飲んでいる薬について伝えるようにしましょう。
予防
予防には白癬菌が足に長期間付着しないようすることが有効です。不特定多数の人が裸足で過ごす場所の床や、共用で使用するマット、スリッパなどから白癬菌が足に付着することが知られています。そのため、裸足で歩いた後は足の裏を洗う、乾いたタオルで拭うなどして菌が1日以上付着したままにならないようにしてください。また、足が蒸れると白癬菌が増殖しやすいため、乾燥に心がけてください。通気性がよい靴や靴下を選ぶのもよいでしょう。
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