ほっしんちふす

発疹チフス

同義語
発しんチフス
最終更新日:
2023年12月26日
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2023/12/26
更新しました
2017/04/25
掲載しました。
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概要

発疹チフスとは、シラミを介して細菌の一種である発疹チフスリケッチアに感染することで発症する病気です。感染すると1~2週間程度の潜伏期間を経て、発熱や頭痛、吐き気・嘔吐、発疹などの症状が引き起こされ、重症例の半数には幻覚などの精神神経症状を伴います。適切な治療を行わない場合の致死率は年齢で異なりますが、10~60%に上ります。過去には多くの犠牲者が出たとされていますが、衛生環境が整った現在では、世界的に発疹チフスの発生数は減少しています。

日本では1957年の1例以降、発生はみられていません(2023年10月時点)。治療の主体は抗菌薬の投与ですが、シラミが広範囲に生息する地域ではシラミの駆除などを行って、発疹チフスを予防することが重要とされています。

原因

コロモジラミというシラミを介して“発疹チフスリケッチア”という細菌に感染することで発症します。

シラミは吸血中に糞を排泄するとされています。感染しているシラミの糞の中には発疹チフスリケッチアが含まれることから、皮膚の刺し口や引っかき傷が潰れたシラミの体液や糞に汚染され、発疹チフスリケッチアが体内に入り込むことで感染すると考えられています。

また、シラミの糞に汚染された粉塵を吸い込むことで感染するケースがあることも報告されています。アメリカではムササビの糞を介して発疹チフスを発症したとの報告もありますが、どのような経路で発疹チフスリケッチアがムササビに感染し、さらにヒトへと感染が広がるのか明確には解明されていません。なお、シラミは発疹チフスの感染者を咬むことで発疹チフスリケッチアを体内に取り込み、また別のヒトを咬むことで感染を広げていきます。発疹チフスの感染者から周囲のヒトに直接感染を広がることはありません。

症状

発疹チフスは感染後1~2週間程度の潜伏期間を経て、39~40℃の高熱、頭痛、寒気、吐き気や嘔吐、だるさ、手足の筋肉痛などの症状が現れます。

発症後は2~5日経過すると発疹が現れて、顔、手のひら、足の裏を除く全身に広がり、点状の皮下出血を伴うあざへと変化していくのが特徴です。また、幻覚、けいれん、昏睡(こんすい)(刺激を加えても眠ったままの状態となること)などの神経症状、咳などの呼吸器症状や頻脈を伴うこともあります。

年齢によって異なりますが、発疹チフスは適切な治療を行わないと10~60%が死に至るとされる重篤な感染症です。重症な場合には腎不全肺炎、発疹部分の壊疽(えそ)(皮膚の組織が死んでしまうこと)などが引き起こされることもあります。

検査・診断

発疹チフスが疑われる場合には、以下のような検査が行われます。

PCR検査

血液などを用いて、発疹チフスリケッチアの遺伝子があるか否か調べる検査です。発疹チフスの確定診断のために必要な検査の1つです。

血液検査

発疹チフスリケッチアに対する抗体の有無を調べるために血液検査を行う必要があります。また、腎機能など全身の状態も確認できます。

微生物学的検査

もっとも確実な診断をすることができるのは、血液や病変部の組織に発疹チフスリケッチアが存在するか確認する検査です。しかし、発疹チフスリケッチアは非常に感染力が強いため、この検査を行うには感染対策が行き届いた特殊な環境下で行わなければならず、一般的には推奨されていません。

画像検査

発疹チフスは肺炎などを引き起こすこともあるため、X線などの画像検査が必要に応じて行われます。

治療

発疹チフスの基本的な治療は、抗菌薬の投与による薬物療法です。治療が遅れると重症化につながるため、発疹チフスが疑われた際には診断結果を待たずに治療が開始される場合もあります。また、適切な治療をしない場合の致死率は最大で60%と考えられていますが、抗菌薬の投与によって症状は改善することが多く、致死率は4%ほどに下がるとの報告もあります。

予防

発疹チフスはシラミを介して広がる感染症であるため、感染を予防するにはシラミを駆除し、寝具や衣類などを清潔に保つことが大切です。なお、発疹チフスにはワクチンが開発されていますが、広く出回っているものではなく、日本国内で接種することはできません。

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