概要
福山型先天性筋ジストロフィーとは、生まれたときから症状が認められる先天性筋ジストロフィーのひとつです。筋ジストロフィーとは、時間の経過と共に筋肉が徐々に壊れて、筋力が衰えていく病気です。
ほかの筋ジストロフィー同様、運動機能に問題が生じたり、心機能や呼吸機能などの内臓機能に症状が起こったりすることもあります。また、大脳の形成異常が認められ、精神発達の遅れを伴うことも特徴として挙げられます。常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性疾患であり、有病率は日本人10万人あたり2~4人と推定されています。
原因
福山型先天性筋ジストロフィーは、FKTN遺伝子というfukutinと呼ばれるタンパク質を生成する遺伝子の異常により引き起こされます。fukutinは、筋肉の安定化に関わるタンパク質(α-ジストログリカン)に対して重要な役割を果たしていると考えられています。
FKTN遺伝子に異常があると、筋肉の安定化が十分に保たれず、筋組織が徐々に壊れていきます。また、発生過程における神経細胞の遊走(移動)が上手くコントロールされなくなることで、脳の形成異常が生じると考えられています。
この疾患は、常染色体劣性遺伝形式と呼ばれる遺伝形式をとります。人の細胞は、父親および母親それぞれから受け継いだ2本の染色体を持っています。この2本の染色体の両方にFKTN遺伝子の異常があると、福山型先天性筋ジストロフィーを発症することになります。
症状
生まれたときから全身の筋力低下や筋緊張低下(手足がぶらぶら動くなど)が認められ、哺乳不良や発育の遅れなどから気がつかれることも多いです。顔面の筋力低下が起こることから、口を開いている、頰がふっくらとしている、よだれが多いなど特徴的な顔貌(かおかたち)を示します。
筋力低下や関節拘縮(関節の曲げ伸ばしが困難になる)により運動機能が制限されます。座ることはできるけれど歩行は難しい、という場合が多いです。5〜6歳頃をピークに運動機能が低下していきます。福山型先天性筋ジストロフィーでは脳の形成異常も伴うことから、知能に障害が認められます。
このほか、目に症状が現れる例も多くります。熱性けいれんやてんかんを合併する例もめずらしくありません。また、ほかの筋ジストロフィー同様、運動機能のみならず、呼吸機能や心機能、消化管機能にも問題が生じるようになることもあります。
検査・診断
福山型先天性筋ジストロフィーの診断にあたっては、血液検査・筋病理検査・遺伝子検査・脳CT・MRI検査が用いられます。
血液検査
筋肉が破壊されると筋肉中に含まれるタンパク質が血液に流れ出るため、クレアチニンキナーゼ (CK) という数値の上昇が確認されます。
筋病理検査
筋繊維が細くなっていることや、筋肉の壊死および再生像が確認されるとともに、結合組織が増生している様子が認められます。
遺伝子検査
FKTN遺伝子の異常を調べることができます。痛みを伴う筋生検を行わずにいきなり遺伝子診断を行う場合があります。
脳CT/MRI検査
多少脳回、小脳嚢胞、大脳白質髄鞘化の遅延といったことが確認されます。
治療
現在(2018年2月時点)のところ福山型先天性筋ジストロフィーに対する根本的な治療法はありません。筋肉が硬くなってしまったり衰えたりするのを少しでも遅らせ、運動機能を維持できるよう、ストレッチやマッサージなどによりリハビリテーションを行います。
このほか、各症状に応じた対症療法が中心となります。これまでの研究で明らかになった原因などから、新しい治療法の開発・研究も進められています。
医師の方へ
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