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老年期うつ病
うつ病は2週間以上持続する抑うつ、興味または喜びの喪失、体重減少、不眠または過眠、精神運動焦燥や制止、無気力、集中力の減退などの症状によって特徴づけられる病気です。高齢者の場合、若年者と比較して...
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老年期うつ病ろうねんきうつびょう

更新日時: 2017 年 04 月 25 日【更新履歴
更新履歴
2017 年 04 月 25 日
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概要

うつ病は2週間以上持続する抑うつ、興味または喜びの喪失、体重減少、不眠または過眠、精神運動焦燥や制止、無気力、集中力の減退などの症状によって特徴づけられる病気です。高齢者の場合、若年者と比較して不安や心気症状の頻度が高く症状は非典型的です。

老年期には身体的、環境要因などから抑うつ的になりやすく、診断においては常に認知症やその他の器質的疾患との鑑別、併存を考慮し、生活歴や病歴を聴取することが重要です。

2011年時点で日本はは高齢化率23%超という高齢者社会であると同時に、高齢者の自殺率も高く、その背景にはうつ病・うつ状態が関与する割合が高いと報告されています。一般的に身体疾患への罹患、死別や離職などの環境変化、心理的援助の不足なども自殺のリスクとなりますが、これらを高齢者では経験されることが多いこと、高齢者が心気症状を訴える場合、うつ病が見逃されやすいことが若年者のうつ病と比較して自殺率が高いと考えられています。
 

原因

高齢者は、加齢に伴う身体のおよび脳機能の低下という生物学変化のみならず、喪失体験や新たな役割の獲得などの様々なライフイベントに遭遇します。そのようななかで抑うつ症状を呈することも、まれではありません。

高齢者のうつ病における心理・社会的因子

高齢者におけるうつ病は、加齢に伴うライフイベントに対する反応として二次的に出現することが多いです。配偶者や近親者の死といった喪失体験、経済状況、社会的孤立とそれに伴うサポートの欠如といった周囲を取り巻く環境の変化により、自身も死に直面化せざるを得ない状況となります。若年者とは異なり、高齢者はこれらの状況が構築化されやすく、修正も困難となるため、慢性的なストレス・緊張が継続することとなります。

高齢者はこれらを感情的な問題として表出することが少なく、身体的な問題として解釈する傾向にあります。漫然とした身体的な加療が行われる傾向にあることが、高齢者のうつ病の一因となっています。

高齢者のうつ病と身体疾患の関係

高齢者のうつ病患者は、慢性的な身体合併症を罹患してることが多いです。高血圧・糖尿病などの慢性的な身体疾患とうつ病の関連は相関関係にあり、これらはうつ病のリスク因子ともなる一方で、うつ病が慢性身体疾患の予後不良因子となります。

これらの身体疾患の罹患は、日常生活技能(Activity of Daily Living: ADL)の低下をもたらします。ADLを含む健康状態と抑うつ症状は有意な関連があり、身体合併症を有する患者は、向精神薬の投与がより長期になると報告されています。
 

症状

高齢者のうつ病は、抑うつ気分などのうつ病の基本症状よりも倦怠感・痛み・しびれなどの身体愁訴や体重減少を主訴とすることが多いです。また、それ以外にも、不安・焦燥が目立ちやすい、もの忘れなどの認知機能低下を訴え、抑うつ気分が目立たないといった特徴があります。
 

検査・診断

高齢者のうつ病が厳密に診断基準を満たすことが少なく、実際、DSM診断基準におけるうつ病の定義を厳密に満たさなくても、症候学的に抑うつ症状を呈している高齢者は一定数存在すると考えられています。

うつ病患者の一部には、記憶力や集中力の低下から認知症が疑われ来院するものの、記憶機能の臨床検査ではそれに対応する欠陥がない場合があります。これは仮性認知症と呼ばれ、日内変動や気分障害の既往があることがあるため、鑑別にあたっては情報提供者からの詳細な病歴聴取や患者の精神状態、行動の観察が必須となります。

また、うつ病の仮性認知症では気分障害が先行して出現します。うつ病患者では質問に関心を示さず、答えたがらないことで真の認知症と鑑別することができますが、うつ病と認知症の併発例も多いため鑑別は一層困難とされています。
 

治療

ほとんどの点で若年者のうつ病の治療法と同様ですが、自殺のリスクは年齢とともに増加する傾向にあるため、自殺リスクの評価が重要です。薬物療法については、加齢に伴う生理的な薬物動態の変化の結果、向精神薬の副作用が生じやすく、また慢性的な身体疾患の罹患が多くなれば併用薬剤数が必然的に多くなる傾向にあります。そのため、他の薬剤との相互作用を考慮する必要があります。

このような背景から、本邦では2015年に、高齢者の安全な薬物療法ガイドラインが策定されました。これは、高齢者において有害作用が出やすく、効果に比べて安全性が劣る薬剤を特に慎重な投与を要する薬物のリストとして公開したものです。例を挙げると、三環系抗うつ薬やベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系を含む睡眠薬は認知機能低下やせん妄、転倒・骨折のリスクにより、高齢者への投与は推奨されないとされています。

薬剤投与のみで寛解に至らない場合には、他の選択肢も考慮します。特に、軽度から中等度のうつ病高齢者に対しては、対人関係療法や認知行動療法といった精神療法が有効なこともあります。

高齢者における抑うつ症状は、生物学的要因よりも、上述のような社会・心理的な要因に起因する部分が多いです。また、高齢者のうつ病は慢性化することも知られており、抗うつ薬を使用しても寛解に至らない場合は精神療法をはじめ代替療法への移行もしくは併用が望ましいと考えられます。高齢者のうつ病に代表される精神症状に対する治療は、薬物療法の前提として、病気の十分な理解と社会・心理的背景および身体疾患の既往などを包括的に考慮する必要があります。