概要
舟状骨骨折とは、手の関節を構成するひとつの骨である「舟状骨」と呼ばれる骨に骨折が生じた状態を指します。舟状骨骨折は、スポーツのケガのなかでも代表的な骨折のひとつとして知られています。
舟状骨骨折を発症した場合、痛みを生じますが、骨のずれが大きくないため、それほど強い痛みにならない場合もあります。また、受傷間もなくではレントゲン写真での変化が乏しいこともあり、実際には骨折していてもわからないことがあります。
しかし、骨折としての適切な治療を受けずに放置すると、手の機能障害や慢性的な痛みの原因となりえます。そのため、舟状骨骨折が疑われる受傷機転がある場合には、診断がはっきりしない場合でも、経過を追いながら注意深く骨折の有無を評価することが大切です。
原因
手の関節は8つの骨で構成されており、舟状骨とはそのうちのひとつです。舟状骨は手関節のなかでも親指側に位置する骨であり、船底の湾曲に似た形からその名前がつけられました。カシューナッツのような形とも形容されます。親指を反らせると、親指の付け根の部分にくぼみが形成されますが、この部位に嗅ぎタバコを置くことがあるため「解剖学的嗅ぎタバコ入れ」と呼ばれます。舟状骨は、解剖学的嗅ぎタバコ入れを構成する骨としても知られています。
舟状骨骨折はサッカーなどの競技者に多くみられるもので、10〜20歳代でよくみられる骨折です。主に競技プレー中に後ろ向きに転んで手をついたときに起こります。多くの場合、骨の中心部がひび割れて骨折を起こします。その他、交通外傷でも同様の外傷機転が生じることから舟状骨骨折が発症する場合があります。
舟状骨のなかでももっとも骨折を来たしやすい部位は、舟状骨の腰部と呼ばれるくびれた部分です。舟状骨に対しての血液供給は指先側から手首に向かってなされており、腰部の骨折によって手首側の血流不全が生じやすいです。舟状骨は血液供給が乏しいという特徴をもともと持ち合わせており、骨折の治癒も遅れがちです。
症状
舟状骨骨折は、手首を強く背屈させることから生じます。舟状骨は、ちょうど親指の付け根に存在する骨であるため、受傷直後には同部位が痛み、腫れます。しかし、骨のずれが少ない場合には痛みはさほど強くなく、捻挫として認識されることもあります。
受傷後しばらくすると症状は軽快し、一見すると治癒傾向にあるようにも感じられます。しかし、舟状骨が放置され適切に骨が元の形に戻らないような状況においては、骨が分断されたままになってしまいます。骨の分断が残ると、本来は関節ではないにもかかわらず、関節のように動くこととなってしまい、偽関節を形成します。偽関節では骨の変形が進行し、痛みや手の機能障害を引き起こします。
検査・診断
舟状骨骨折は、受傷機転から疑われます。また「解剖学的嗅ぎタバコ入れ」を圧迫すると、痛みが誘発されることからも疑われます。
舟状骨骨折が疑われる場合、レントゲン写真が撮影されます。ただし、骨折をしても早期では診断がつかないことも少なくありません。そのため、レントゲンを撮る場合は、通常の正面や横から撮影するだけではなく、斜めや特殊な角度からも撮ることが必要となります。
受傷後初期の段階で確定診断がつかなくとも、舟状骨骨折が強く疑われる状況であれば、2~3週間後に再度診察、検査を行うこともあります。舟状骨骨折であれば、時間の経過とともにレントゲンにはっきりと写るようになります。単なる捻挫で済ませてしまうと再び病院を受診する機会も逃してしまうため、症状が上記と合致していてしばらく経っても痛みや腫れが引かない場合はもう一度レントゲンを撮影することが重要です。
また、CTやMRIといった画像検査では、より早期の段階から舟状骨骨折を形態学的に捉えることが可能となるため、こうした検査が行われることもあります。
治療
腫れや痛みが軽く、レントゲン写真でも骨折と判断できないような場合でも、明らかに手をついてケガをしていたり、ピンポイントで親指側の痛みや圧痛を訴えていたりするようであれば、骨折と想定して治療を開始することが推奨されています。
治療は、局所の安定を図るためにギプスによる固定を行います。ギプス固定は長期に及ぶことも多いので、最近では特殊なネジを使って固定することで治療期間を短縮できる方法も取り入れられています。
偽関節になってしまうと、骨の細胞が壊死してしまうため、骨を削り、移植が必要となります。専門医でも非常に難しく大変な手術となるため、このような状態になる前に早期に発見して治療することが大切です。
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