過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)

過換気症候群とは

過換気症候群とは、精神的な不安や緊張などを感じている時に、自分の意志とは無関係に呼吸回数が通常よりも多くなってしまう状態のことを指します。過換気症候群を発症すると、手足にしびれや筋肉のけいれんを来すようになります。過換気症候群は男性よりも女性に多く、特に若い方に見ることが多い病気です。

過換気症候群を発症すると、自分自身でもどうしていいのか判らなくなってしまい、より一層不安が助長されてしまいうまく発作を止めることができませんが、発作そのもので命に関わることはありません。発作が生じる誘因をコントロールしつつ、発作が生じないような環境を作ることが大切です。なお、過換気症候群を起こしている状況で「ペーパーバック法」と呼ばれる方法がとられることがありますが、危険を伴うことがあるため充分な注意を払うことが警鐘されています。

原因

呼吸は、脳の中に存在する「呼吸中枢」によって調整をされていますが、基本的には自分の意識とは無関係に適切な呼吸回数に保つことが可能です。呼吸回数を規定するのは血液中の酸素や二酸化炭素の濃度やpHです。すなわち、血液中の酸素が低くなる状況や二酸化炭素が蓄積している状況では、呼吸回数を増やすことで体内により多くの酸素を取り入れようとします。また、二酸化炭素は血液中のpHを規定する一つの重要な要因であり、二酸化炭素を増減することでpHを中性に保つことも必要です。そのため、pHが過度に酸性もしくはアルカリ性に傾くような状況では、呼吸回数が増減することになります。

このように厳格にコントロールされる呼吸ですが、過換気症候群では呼吸中枢が過度に興奮することから呼吸が不必要に多くなってしまうことから発症します。呼吸中枢の異常な興奮は、不安や緊張、恐怖、疲れ、興奮などをきっかけとして引き起こされることになります。こうした要因が存在する環境におかれると、呼吸が不足していると呼吸中枢が誤って認識することになり、呼吸回数が増加する過換気症候群が生じます。多くの場合は、先に挙げた不安や緊張を慢性的に感じていることから、呼吸中枢が過敏に反応してしまうことになります。

症状

過換気症候群の症状は、突然発症する異常な過呼吸です。発作の誘因は不安や緊張、興奮状態などであり、きっかけとなる場面に遭遇した際に過呼吸が発症します。発作を自覚すると呼吸が出来ない不安感を感じることになり、さらに呼吸をしなければという気持ちになってしまい、悪循環的に呼吸回数が増加します。

呼吸回数が増加すると、肺からの二酸化炭素排泄が増加し、血液中の二酸化炭素が正常よりも低下します。二酸化炭素が不足すると血液のpHはアルカリ性を示すようになり(アルカローシスと呼ばれる状態です)、様々な症状が引き起こされることになります。また同時に、交感神経も亢進した状態になります。こうしたことから、手足のしびれや筋肉の収縮や硬直症状(筋肉が固まることです)、頻脈、血圧上昇などが出現します。その他、胸の痛み、めまいなども自覚します。

過換気症候群では、低カルシウム血症を発症します。この状況では筋肉の症状を反映して、手をすぼめたような形を取る「助産師の手」といった症状を見ますし、耳の前を走行する顔面神経を刺激することから唇が上方に偏位する「チョボスティック徴候」という反応も誘発されることがあります。

検査・診断

過換気症候群の診断は、発症までのエピソードや発症時の発作状況を確認することからなされます。過換気症候群では血液がアルカローシスを示したり、低カルシウム血症を呈したりするため、このこと血液検査で確認することもあります。また、呼吸困難や呼吸回数の増加を来す他の疾患(例えば気胸など)を除外するために、胸部単純レントゲン写真や心電図などの検査が行われることもあります。

しかし、発作時のエピソードから過換気症候群が明らかであると判断される場合も多く、これらは必ずしも必要な検査ではありません。

治療

過換気症候群の発作時の治療は、患者さんの不安が取り除かれるように気持ちを落ち着かせ、意識的に呼吸を遅くするあるいは呼吸を止めることができるように促します。過換気症候群の発作時の治療方法として、口元に紙袋やスーパーの袋をあてがい、袋の中の空気を再呼吸する「ペーパーバック法」と呼ばれる方法が取られることがあります。ペーパーバック法では、自身が呼出した空気を再度取り込むことになるため、二酸化炭素が通常よりも高い空気を吸い込むことになります。このことで血液中の二酸化炭素を正常に近づくように促す治療方法になりますが、危険性を伴う方法であるため、使用する際には充分注意を払うことが必要です。なお、発作そのもので命に危険性がおよぶことはありません。

また不安が強い患者さんでは、抗不安薬などの投与を行うことがあります。過換気症候群は何度か発作を繰り返すことも稀ではなく、発作を引き起こす環境から避けることも大切です。発作の誘因は、慢性的な不安や緊張、興奮などであることが多く、発作状況を確認することが重要になります。