あいじーえーけっかんえん

IgA血管炎

同義語
アレルギー性紫斑病,血管性紫斑病,アナフィラクトイド紫斑病
最終更新日:
2020年08月21日
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2020/08/21
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概要

IgA血管炎とは、皮膚に紫斑(出血性の皮疹)、腹痛、関節痛、腎炎などの症状を呈する、免疫の異常による病気です。“IgA”と呼ばれる抗体がさまざまな臓器の小さな血管に沈着して血管に炎症が起き(血管炎)、症状が出現しますが、発症原因は解明されていません。

IgA血管炎は3~10歳の子どもに多く、やや男児に多い傾向があります。日本における患者数の正確なデータはありませんが、欧米の報告では10万人あたり10~20人とされています。成人の患者数は全体の25~30%程度です。発症には季節性があることが知られており、秋と冬に多く夏には少ない傾向があります。一般的に成人期に発症したIgA血管炎は小児期の発症と比較し、再発率が高く、重度の腎障害をきたすことが多い特徴があります。

原因

IgA血管炎の発症のきっかけとして、溶血性(ようけつせい)連鎖(れんさ)球菌(きゅうきん)を代表とする細菌やウイルス水疱(すいほう)風疹(ふうしん)など)の急性感染症、副鼻腔(びくう)炎や深い虫歯などの慢性感染症、薬剤、悪性腫瘍(しゅよう)、食物が知られていますが、明らかな原因が分からない場合がほとんどです。これらの病原体や物質は、IgAと結合する抗原であると考えられています。IgA血管炎では、IgAと抗原が結合した免疫複合が血管の壁に沈着し、炎症反応が生じ血管が障害され発症に至ると考えられています。IgA血管炎のIgAは、正常のIgAと異なり糖鎖が欠損している異常なIgAであることが特徴です。

IgA血管炎の血管炎は大動脈や冠状動脈などの大きな血管ではなく、むしろ小さい血管に生じます。皮膚、腎臓、消化管、関節などの小さい血管が障害された結果、皮膚の紫斑、腎炎、消化器症状、関節痛などの症状が出現します。

症状

皮膚症状

IgA血管炎で見られる皮膚症状は“紫斑(しはん)”と呼ばれるものであり、血管からの出血により生じます。紫斑は下肢に左右対称に認めることが多いのですが、上肢や顔などにも出現します。指先で皮疹を押しても、皮下出血が原因であるために、消えたり色が薄くなることはありません。また、周囲の正常な皮膚の表面と比較して、かすかに盛りあがっています。重症では血液を含んだ水ぶくれのようになることもあります。

腹部症状

IgA血管炎の発症早期に半数程度の患者に合併し、臨床上大きな問題となります。腹痛、嘔気、嘔吐などの症状が多く見られます。激しい腹痛や下血など症状もしばし経験されます。紫斑の出現以前に腹部症状がでる場合があり、その場合は診断に難渋することもあります。

関節症状

IgA血管炎における関節症状は、膝や足関節の腫脹や痛みが一過性に生じます。運動時に痛みの増強が見られることもありますが、日常生活に支障をきたすほど重症化することはまれです。

腎症状

半数の患者においてたんぱく尿や血尿や浮腫などの腎炎の症状が出現します。腎炎はIgA血管炎の発症まもない急性期に発症する場合がほとんどです。実は、ほとんどの小児患者では、腎炎の発症から半年程度で自然治癒することが多く、1-2割のみが治療対象となります。一方、成人では腎障害が慢性化することもあり、注意が必要です。

検査・診断

IgA血管炎を診断するための特異的な検査はありません。小児においては、臨床症状や超音波などの画像検査をもとにIgA血管炎と診断します。一方、成人では、同じような紫斑を呈する病気としてANCA関連血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎、続発性血管炎などがあります。これらを鑑別するために、皮膚生検を行い、直接蛍光抗体法という検査で小型血管にIgAの沈着があるかどうかを確認し診断することがあります。

腎炎の評価のために定期的な尿検査を行い、血尿・たんぱく尿の有無と程度を評価します。また、必要に応じて血液検査で腎障害の程度を評価します。高度たんぱく尿や腎機能障害などの重い症状がある場合は、腎生検により腎炎の重症度を評価し、治療方針を決定します。

腹部症状がある場合には、腹部エコー検査で腸管の浮腫、腸重積、腸管穿孔(せんこう)を確認し、腸からの出血を確認するために検便を行います(便潜血)。

治療

IgA血管炎では、軽症の場合であれば無治療でも自然に軽快することが多いです。原則的に、軽症例に対しては安静と対症療法をしながら経過観察を行います。

薬物治療では、中等度以上の消化器症状や関節症状に対して短期の副腎皮質ステロイドの投与を行います。腹部症状は副腎皮質ステロイドがよく効く場合が多く、減量や中止により再発することが少なくありません。

腎炎については、腎生検の組織所見を参考に、重症度に準じた治療が選択されます。組織所見が重症の場合は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を選択します。小児では腎炎の治療反応性は良く、再発もまれですが、成人では腎機能障害や尿異常の遷延を認めることがあります。

腹部症状や関節症状には、副腎皮質ステロイドが主に選択されますが、血液を固めるために必要な因子である第XIII因子の低下を認める場合は第XIII因子製剤が投与されることもあります。

小児においては比較的予後良好な病気ですが、成人では腎障害を残すこともあるため注意が必要です。

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