まーず

MERS

別名
中東呼吸器症候群
最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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医師の方へ

概要

※2019年12月に中国で発見された新型コロナウイルス及びそれによる肺炎については、新型コロナウイルス関連肺炎をご覧下さい。

最初の事例は、2012年6月に急性肺炎後に腎不全を呈し死亡したサウジアラビア人(60歳)であり、死後に肺組織から新規のコロナウイルスが検出されました。

引き続き、2012年の9月にサウジアラビアに渡航歴があるカタール人(49歳)が重症な呼吸器感染症を呈したため、患者はカタールからイギリスに運ばれ、そこで分離されたコロナウイルスの塩基配列が、最初の事例のウイルスとほぼ同じことから新規ウイルスによる疾患、「中東呼吸器症候群(MERS: Middle East Respiratory Syndrome)」、としてイギリスからWHOに報告されました。中東への渡航歴のある方に発症しうる病気です。

2017年7月におけるWHO(世界保健機関)からの報告によると、中東諸国での発生例(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダン、カタール、オマーン、クウェート、イエメン)と輸入感染例(中国、韓国、アメリカなど)を合わせて、2,070例の方が本ウイルス感染症を発症しており、うち少なくとも712名が亡くなっています。

中東のなかでもサウジアラビアでの発生例が多く、また2015年には韓国でも中東に渡航歴のある帰国者を介した大きな流行が確認されています。2017年7月現在まで、日本における発症例の報告はありませんが、中東への渡航歴のある方が輸入感染症として本疾患を発症するリスクは拭いきれません。このような事態に備えて、対応策を事前に講じることはとても重要です。

原因

MERSコロナウイルスに感染することで発症します。このウイルスは、ヒトコブラクダが自然宿主(病原体を無症状で体内に保有している生物)であるといわれています。コロナウイルスは、一般的な風邪の原因ウイルスとして非常にありふれたものではありますが、ときに重症な呼吸器症状を引き起こす病原性の高いものも存在することが知られています。MERSコロナウイルスによるMERSはひとつの例で、そのほかに、2003年に流行したSARSコロナウイルスによるSARS(Severe Acute respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)があります。

中東地域のヒトコブラクダからMERSコロナウイルスが分離されており、ラクダがMERSコロナウイルスの保有動物であると考えられています。感染したらくだと接触することをきっかけとして人間にも感染すると推定されています。しかしその一方で、人と人の間の感染例もありえると考えられています。特に病院内や患者さんを看病する家族の間など、濃厚接触者間での感染も報告されています。感染経路としては、咳やくしゃみなどによる飛沫感染や、患者の排泄物、ドアノブや箸などによる接触感染が推定されています。

症状

感染後、4日〜14日くらいの潜伏期間を経て発症すると考えられています。主な症状は発熱や、せきなどの呼吸器症状であり、インフルエンザの初期症状に似ています。しかしインフルエンザと異なり、MERSでは下痢をはじめとした消化器症状をともなうことが多いです。そのため、糞便中にはウイルスが多く含まれており、周囲へ感染を拡大させないためにも患者さんの糞便の取り扱いには注意が必要です。

一部の患者さんでは呼吸器症状が重症化することもあり、急性呼吸窮迫症候群(きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん:重症の呼吸不全をきたす疾患)を発症することがあります。そのほか、腎不全を含む多臓器不全敗血症ショックをともなう場合もあります。

特に重症化のリスクが高いのは、糖尿病COPD、免疫不全などの疾患を持つ方と高齢者です。また、尿中にもウイルスが現れる可能性があり、慢性腎臓病を持つ方に関しても注意が必要であると考えられます。

検査・診断

鼻水やたん等を用いて病原体ウイルスを特定する分離同定検査、もしくはPCR法と呼ばれる方法を用いてウイルスに特徴的な遺伝子を確認することからなされます。MERSでは経過中に呼吸器症状の増悪(急性呼吸窮迫症候群)や腎不全の発症、敗血症の併発などを認めることがあります。そのため、各種臓器に対する検査として、胸部レントゲン写真やCT検査、尿検査、血液培養などが行われることもあります。

2017年現在MERSは感染症法において2類感染症に分類されています。そのため、MERSの患者さんが確認された場合には直ちに都道府県知事(実際には保健所)に届け出る必要があります。
感染拡大を予防するためにも、渡航歴や症状からMERSが疑われる場合には、検疫所で申告したり地域の保健所に電話をすることが大切です。

治療

MERSに対しての根本的な治療法やワクチンは、現在(2017年)のところ存在していません。症状に応じた対症療法や基本的な感染予防策が中心となります。

呼吸器症状が増悪することがあるため、酸素投与や場合により人工呼吸器管理が必要になることもあります。日本呼吸器学会のガイドラインには、肺炎を契機に全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害を発症する患者さんに好中球エラスターゼ選択的阻害薬が使用可能であることが記載されています。また、腎不全に対しては透析敗血症に対しては抗生物質などの投与が行われます。

予防

MERSの原因ウイルスは、せきやくしゃみなどによる飛沫感染や、接触感染で感染が拡大します。このため、飛沫を吸い込まないよう、マスクを装着することが有効です。また、感染力が強い方(発熱、肺炎などの症状がはっきりしている患者さん)には近づかないことも感染予防の観点からは重要です。接触感染に対しては、徹底した手洗いも有効な予防法です。大量のウイルスが含まれると考えられる糞便や尿にも気をつけるべきです。SARSの検査では、電話機・ドアノブ・エレベータのボタンなどから遺伝子が検出されており、これらに対しても注意が必要であると考えられます。

特に患者さんの家族や医療従事者は念入りに手を洗わねばなりません。排泄物やウイルスを消毒するためには、市販のアルコールや中性洗剤でも十分に効果があるため、うまく活用することが推奨されています。さらに、流行地域では自然宿主であるとされるヒトコブラクダへの接触も避けるべきです。

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