院長インタビュー

社会のニーズに対応した、質の高い医療の提供をめざして-町田市民病院の取り組み

社会のニーズに対応した、質の高い医療の提供をめざして-町田市民病院の取り組み
金崎 章 先生

町田市病院事業管理者 、町田市民病院 院長、東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 客員教授

金崎 章 先生

目次
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町田市民病院は、1943年に旧町田町、南村、鶴川村、忠生村の4町村が共同で設立した病院です。当時は南部共立病院という名称であり、病床数52床の小規模な病院でした。1958年に町田市が誕生したのと同時に市へ移管され、1975年に現在の町田市民病院へ改称されました。現在は病床数440床を有する中核病院として、地域に求められる医療を提供しています(2023年11月時点)。

同院の取り組みや今後めざす病院像について、院長である金崎(かねざき) (あきら)先生にお話を伺いました。

町田市民病院 外観
町田市民病院 外観

当院は、町田市を含む南多摩保健医療圏における急性期病院であり、町田市の公的病院です。また、町田市が東京都と神奈川県との県境に位置していることから、神奈川県相模原市や川崎市などとも関わりを持っています。

町田市は首都圏のベッドタウンであり、人口約43万人をかかえています(2023年11月時点)。そのなかで、さまざまな年代の方々のニーズに応えるため、33の診療科を備え、日々医療の質の向上に努めています。

当院は地域において急性期医療を担い、公立病院として地域に求められる医療の提供に尽力しています。診療の面では、がん、脳血管疾患、循環器疾患などに対する急性期医療を担っています。また、救急医療の面では、二次救急医療機関に指定されており、24時間体制で診療を行っています。
2023年には一般病棟とICU(集中治療室)の中間的な機能を持つHCU(高度治療室)12床を新たに開設し、救急医療の質の向上を図っています。

二次救急医療機関として救急診療に注力
二次救急医療機関として救急診療に注力

消化器疾患の治療では、できるだけ患者さんの負担が少ない内視鏡手術を行っています。食道がんは2022年に実施した5件の手術を内視鏡手術で行いました。また、胃がんでは2022年は31件の手術を実施して19件を内視鏡手術で行い、大腸がんでは122件の手術のうち84件を内視鏡手術で行いました。
消化管出血などに対する救急患者さんも受け入れており、緊急内視鏡検査を夜間、休日でも行えるように体制を整えています。

当院は、急性心筋梗塞をはじめとした急性の心血管疾患患者さんの迅速な救急搬送を目的とする“東京都CCUネットワーク”に加わっており、要請があった際は積極的に搬送を受け入れています。虚血性心疾患の症例では、心臓カテーテル検査だけでも2018年度から2022年度までの実績で、約200~300件を実施しています。

当院は、地域周産期母子医療センターの認定を受けています。2022年度の分娩件数は465件あり、ハイリスク妊娠とされる妊婦さんも受け入れています。NICUを6床、後方病床を12床備えており、妊娠中から出産後まで一貫したケアが可能です。また、東京都の指定二次救急医療機関(小児科)として、可能な限り夜間や休日の小児救急搬送も受け入れ、入院治療を必要とするお子さんに対応しています。
救急対応だけではありません。地域の患者さんのさまざまなニーズに対応し、現在は無痛分娩*への対応や出生前診断**も行っています。

* 無痛分娩の費用は約62万円〜。入院期間は約7~8日間。
** 出生前診断(NIPT検査)の費用は151,800円。採血後約10日で結果が判明し、陽性の場合は診断確定の為に羊水検査が必要になります。

町田市民病院 内観
町田市民病院 内観

当院では2022年に内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入し、前立腺がん直腸がんのロボット支援手術を開始しました。ロボット支援手術は手の震えがないため精緻な手術を行うことが可能な上、手術時の切開部も小さいため患者さんの負担が少ないといったメリットがあります。今後は肺がんの手術にもロボットを導入し、より負担の少ない治療を推進していく予定です。

当院には、がん患者さんの痛みや苦痛を取り除く“緩和ケア”を行うための病棟があります。病室は広々としていて、庭園やキッチンなどもある充実した施設です。

スタッフは医師をはじめ、日本看護協会認定の緩和ケア認定看護師、栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど多職種が連携し、日々のケアに当たっています。また、近隣の医療機関から緩和ケア病棟への転院をご紹介いただくこともあります。

2022年から緩和ケアチームを立ち上げ、一般病棟へご入院中のがん患者さんを対象に、痛みを中心とした症状コントロールを行っています。

2018年に入退院支援センターを設置し、入院が決まった時点から時間をかけて退院後について話し合いを行っています。患者さんと事前にさまざまな情報を共有することで、お互いに余裕を持って入院予定日を迎えることができるようになりました。退院後は自宅に帰れるのか、帰っても在宅医療が必要になるのか、施設への入所をご希望なのかなど、患者さんによって異なります。入院前からサポートすることで、介護施設や訪問看護ステーションとも早い段階から連携を取ることができます。

当院は地域の災害拠点病院に指定されており、日本DMAT指定医療機関のひとつでもあります。災害時にも診療を継続できるよう免震構造になっているほか、非常用発電設備も備えています。

2011年の東日本大震災の影響で計画停電が行われた際には、通常の診療が困難になりました。当時も非常用発電機は備えていましたが、検査に使う機器などが一部、稼動できなかったのです。その経験を教訓に、非常用発電設備を増強して更新するなど、災害拠点病院としての機能を保つべく、設備を整えています。

私たちは2018年8月に東京都から地域医療支援病院の承認を受けました。地域医療支援病院は、地域の開業医の先生方と連携して紹介いただいた患者さんの治療を行い、治療後は紹介元の先生に逆紹介を行うという、地域医療で中核を担う病院です。さらに当院は上記の連携や役割分担がより明確化された、開業医の先生より重症化したり専門医療が必要となったりした患者さんの紹介を重点的に受けることができる医療機関である“紹介受診重点医療機関”の認定を2023年8月に受け、これまで以上にこの地域で専門的な医療を提供する立場となりました。

当院では2017年11月から町田市民病院地域連携交流会という医師会、歯科医師会の先生と交流する場を設けています。以後毎年開催しています。この交流会の目的は、当院の診療科の特徴などを各医療機関の先生方へ知ってもらい、お互いに顔の見える関係をつくるというものです。また、町田市は神奈川県相模原市や川崎市と隣接しており、市内の医療機関だけでなく近隣する市との医療機関とも連携を深めています。コロナ禍で2020年からは実施できていませんでしたが、2023年度からは再開する予定です。

ほかにも、地域の介護施設や在宅医療を行う開業医の先生たちを招いて緩和ケア交流会を行ったり、地域の医療関係者向けにさまざまなテーマで研修会を開催したりと、地域全体でレベルアップしていくための取り組みを実施しています。

医療機関との緊密な連携だけでなく、地域の介護施設や訪問看護ステーションとも連携を取っています。訪問看護ステーションとは直接やり取りをしたり、当院の看護師を派遣して訪問に同行したりしています。たとえば、日本看護協会認定の皮膚・排泄ケア認定看護師が同行し、褥瘡(じょくそう)床ずれ)に対するアドバイスを行ったりしています。
地域の訪問看護ステーションと連携を強めることで、退院後の患者さんの状態を確認できるため、退院後のサポートもしていけるようになりました。

地域の皆さんに向けて、病院や診療科の取り組みなどを知ってもらうため、年に4回広報紙『町田市民病院 クォータリー』を発行しています。市内の公共施設や学校に置いてもらっているほか、地域の医療機関にもお送りしています。

また、市民公開講座も定期的に開催しています。毎回異なるテーマを設けて、医師をはじめ認定看護師や栄養士、薬剤師や理学療法士など、さまざまな職種の医療従事者が講演を行っています。

そのほか、小学校4〜6年生を対象とし、夏休みに“子ども病院見学会”を行っています。この取り組みは、病院をより身近に感じてもらいたいという思いではじめました。2023年現在、市民公開講座についてはWeb形式(動画配信)、夏休み子ども見学会についてはオンライン形式で実施しています。

当院では小児救急も受け入れています。お子さんは自分の症状をうまく伝えることができず、救急受診の目安が判断しにくいと思います。当院の救急外来のホームページでは、それぞれの症状に対するホームケアのポイントを掲載しています。また、救急受診の目安も掲載していますので、お子さんの受診のポイントとして活用してください。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

2023年には、公益財団法人日本医療機能評価機構の病院機能評価の4回目の認定を受けました。2008年に初めて認定を受けて以来、5年ごとに認定を更新し、病院全体で医療の質向上に努めています。病院機能評価の受審を通じて、客観的な評価で現状の課題を認識することができ、次回の受審に向けて取り組みを進める良い機会になっています。

第4次中期経営計画では「社会のニーズに対応した、質の高い医療の提供」をスローガンに掲げており、今後も医療の質向上を目指し、尽力していきます。

当院では、職員の教育やキャリアアップサポートにも積極的に取り組んでいます。2023年11月現在、認定看護管理者1名、認定看護師16名が在籍しており、自ら認定資格を取りに行きたいと手をあげる意欲のある看護師も多いです。また当院は特定行為研修の指定研修施設になっており、院内のみならず院外からの研修生を受け入れています。

そういった資格取得の補助だけでなく、医師の学会参加費用に関しても一部、当院が負担しています。リハビリテーションスタッフなどの他職種も、学会発表を行ったり、地域の職種ごとの集まりに出席したりと、積極的に活動しています。

2024年度から始まる医師の時間外労働規制に向け、当院では働き方の見直しを進めています。具体的には、地域の医療機関との連携をより強めて当院での治療が終わった患者さんをお戻しする逆紹介を推進するとともに、多職種間の連携やICT技術の導入によって医師を含む全職種の業務効率改善を行っています。
当院のスタッフが余裕を持って働ける環境を作ることは医療の質の向上につながり、患者さんやご家族にとっても大きなメリットがあると考えており、今後も当院は働き方改革を進めていきます。

金崎先生から地域の皆さんへのメッセージ

当院の理念である“地域から必要とされ、信頼、満足される病院”を目指して、スタッフ一同が日々の業務に努めています。患者さんに安心して受診していただけるような病院を目指し、職員もスピード感を持って対応しています。今後とも町田市民病院をどうぞよろしくお願いします。