院長インタビュー

元気会横浜病院—横浜市緑区で高齢者を支える慢性期医療のトップランナー

元気会横浜病院—横浜市緑区で高齢者を支える慢性期医療のトップランナー
北島 明佳 先生

横浜病院 理事長

北島 明佳 先生

この記事の最終更新は2018年01月18日です。

医療法人社団 元気会が運営する横浜病院は、横浜市に所在する指定療養型医療施設で、同院は1981年に急性期病院として開院しました。1990年に特別許可老人病院の指定を横浜市で最初に取得。その後1991年には医療法人元気会が発足し、「医療法人社団 元気会 横浜病院」と名称を改めました。

高齢化率10%の時代から高齢者医療・介護に取り組んできた同院では、横浜市緑区の高齢者を支えるため、さらには慢性期医療のトップランナーを目指すべく地域の施設や在宅医療機関、ケースワーカーなどと連携し、精力的に活動しています。その活動内容や現状について、元気会の理事長である北島明佳先生にお話を伺いました。

当院は、認知症や身体疾患をかかえたご高齢の患者さんを受け入れる、主として慢性期医療を担う病院です。病床数326床のうち、医療保険適用が164床、介護保険適用が112床、精神療養病棟が50床を有しています。診療科は2科あり、内科をメインとしながら精神科と密な連携を取って総合的医療・介護を提供しています。

当院をはじめとする指定療養型医療施設では、いわゆる慢性期医療に分類されるさまざまな治療を行っています。具体的には、肺炎や感染症、褥瘡や食事が難しいときのケア、認知症の不穏状態やせん妄などさまざまな病態や症状に対応しています。このように様々な状態の患者さんに対して、よりよいケアをするために院内の職員が常に勉強に励んでいます。また、入院・外来にかかわらず長期的なリハビリテーションも行っています。さらには在宅復帰支援やお看取り、がんの緩和ケア、高齢者特有の疾患に対しても多方面からアプローチしています。

慢性期の医療は疾患ひとつとっても複合的であり、教科書通りの正解というものがありません。よく院長と話しているのは、慢性期医療は医療の原点なのかもしれないと。患者さんの背景や家族の意向も大きいのが特徴ですから、この先の人生を一緒に考える必要もあります。

当院は、医療療養病床・介護療養病床・精神療養病床があります。入院対象としているのは主に、認知症症状がみられる方、喀痰吸引(たんの吸引)や褥瘡などの身体的ケアの必要な患者さんなどです。他病院、施設では受け入れ困難とされる徘徊・暴力・暴言などのいわゆる周辺症状がある方でも受け入れています。なお、下記は医療療養病床で診療報酬体系である医療区分です。3つの区分で患者さんの状態を評価します。

【対象疾患・状態】

  • スモン(亜急性視神経脊髄抹消神経炎)
  • 医師および看護師の常時監視が必要な状態

【医療処置】

  • 中心静脈栄養
  • 24時間持続点滴
  • 発熱をともなう場合の気管切開
  • 気管内挿管
  • 感染隔離室における管理
  • 酸素療法(酸素を必要とする状態かを毎月確認)

【対象疾患・状態】

【医療処置】

  • 発熱又は嘔吐をともなう場合の経腸栄養  
  • 喀痰吸引  
  • 気管切開
  • 気管内挿管のケア  
  • 血糖チェック  
  • 創傷(皮膚潰瘍・手術創・創傷処置)

医療区分3・2以外の疾患

  • 介護保険証のない方、新規申請中の方も医療保険での入院相談が可能
  • 中心静脈栄養(IVH)をされている方も対応可能

など

当院は、もの忘れ外来を設けており、認知症専門医が2名が常勤として在籍し、診療しています。また、認知症への対応にさまざまな工夫をしています。寝たきりにさせないことはもちろんのこと、音楽療法やユマニチュードを導入し、インストラクターも2名在籍しています。職員は常日頃から、さまざまな点を精力的かつ自発的に改善点を考えています。「患者さんの人生が少しでもよくなるように、当たり前のことだけではなく、少しでもよいケアを実践してください」と声をかけています。自発的な行動を後押しするようにしており、職員のアイデアは積極的に採用しています。

リハビリテーションはご家族の多くが希望されます。その中でも特に嚥下機能回復のためのリハビリテーションを希望される方が多いです。当院では約3割の患者さんに嚥下機能の向上があります。多職種が嚥下機能回復に積極的にチャレンジしています。規定である3か月のリハビリテーション終了後も継続して嚥下機能回復の支援を行っています。

患者さんによっては、身体拘束をせざるをえない場合があります。しかし、当院では5年間かけて、身体拘束ゼロを実現させました。現在、入院時に何らかの拘束器具を使用している方も基本的には1ヶ月以内には拘束を解除しています。身体拘束ゼロが実現のためには拘束しないことで危惧されるベッドからの転落による怪我を防ぐために、例えば病棟のベッドを低くするといったハード面だけでなく、職員の意識改革までさまざまな改善を行いました。身体拘束ゼロを実現したことで、ケアの質や不穏状態の頻度がめざましく改善しました。患者さんご自身は表情が明るく元気になり、さらには行動に落ち着きが見られるようになりました。

当院では人材育成にも精力的に取り組んでいます。職員が成長を求め、医療だけではなく多分野にわたりさまざまなことを吸収できる環境を整えています。

独自の取り組みとして、職種に限らず希望した職員に対して院内MBAを開講し、経営やマネジメントについて学んでもらっています。特に、多職種チームを牽引できるようなマネジメント能力のある人材の育成は大切です。また、慢性期の総合診療ができる人材という意味でも社会課題改善のために成長し、活躍できる職員を輩出できる環境作りをしています。また、このように慢性期医療全般とマネジメントを学べることは最終的には開業を目標としている職員にも好評です。

一時期は介護分野の人材不足に陥りそうになったこともあります。しかし、現在では努力の甲斐があり、優秀なスタッフが数多く所属しています。当院では新卒採用を開始する際に、職員が少しでも長く働きたいと思えるように、と教育システムを確立させました。介護職員が入職してからの最初の3か月間は特に丁寧な教育システムが整っています。また、介護職は腰痛などを患う場合も多くあり、「怪我をしないための根拠に基づいた介護技術」を身指導しています。

私が病院運営をする立場になった当初は、職種間に大きな壁がありました。互いの業務が異なるために、相手の大変さなどを理解しにくい面もあったのでしょう。その壁を取り払うために、2008年から環境整備といって職種に関係なく、職員全員で毎日20分間、整理清掃整頓をする時間をつくりました。

この環境整備を定着させるために、掃除時間は有線放送で音楽を鳴らし、私自身で頻繁に病棟に足を運び、一緒に掃除をしました。根気よく続けているうちに、病棟はどんどん綺麗になり、見事にそれがルーチンになりました。職員には、自分自身のデスクなどはもちろん、患者さんが利用する車椅子やベッドサイドも掃除してもらっています。そうすることで、職員は病棟内の細かな部分への気付きが増え、結果としてケアの改善にもつながりました。今後も一層努力し、職員のやりがいを意識した職場環境を整えていければと考えています。

国の制度は目まぐるしく変わり、ときに運営面で窮地に立たされるようなこともありました。困難を乗り越えながら私たちが心がけてきたことは、時代や制度がどのように変化したとしても、柔軟に対応できる組織づくりです。そして、患者さんが気軽に相談できる窓口的な存在、さらには患者さんに選ばれる病院づくりをめざしてきました。患者さんに選ばれる病院であれば、たとえ困難があっても生き残れると信じています。また近隣の病院やケアマネージャーなどとの交流を重視してきました。今後は在宅療養の患者さんも増えると予想されますので、患者さんが安心してご自宅に戻れるよう、急性期病院や診療所との連携をさらに強化していきます。

私が理想とする姿は、患者さんに「最後の砦」だと思ってもらえる病院です。慢性期の医療においては患者さんとの信頼関係が大切です。患者さんが「この先生にかかって、この病院に来てよかった」そう心から思える病院をめざしてまいります。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。