院長インタビュー

地域住民に信頼され、必要とされる病院になるために-新小山市民病院がめざす医療

地域住民に信頼され、必要とされる病院になるために-新小山市民病院がめざす医療
島田 和幸 先生

地方独立行政法人 新小山市民病院 理事長/病院長、自治医科大学 名誉教授

島田 和幸 先生

この記事の最終更新は2017年10月04日です。

 

地方独立行政法人 新小山市民病院の始まりは、1946年に栃木県小山市に開設された公立病院です。開設当時は小山市民病院という名称でしたが、2013年に独立行政法人化した際に改称されました。

2016年には、新病院へ移転しました。地域包括ケア病棟を含む300床の病床数を構え、地域住民の健康を支えています。患者さんに選ばれる病院になるために同院ではどのような取り組みを行っているのか、理事長・院長である島田 和幸先生にお話を伺いました。 

当院は、2013年に地方独立行政法人化した公立病院です。救急告示指定病院として二次救急を主に担っているほか、栃木県がん治療中核病院や地域医療支援病院などの指定を受け、地域住民のみなさまに高度な専門医療を提供しています。

高齢化が進みつつある小山市では、急性期のほかに回復期の対応も課題とされています。そういったニーズに対応するため、24の診療科と地域包括ケア病棟、患者支援センターなどを備えて地域に密着した医療の充実を図っています。

当院は地方独立行政法人化した以降に、医師の数を法人化以前の2倍ほどである62名まで増員しました。これにより、診療の幅が広がり、深みが増したのは間違いないところです。病棟も新しくなり、より充実した医療が提供できるようになりました。

どの診療科も高水準な診療内容を提供しながら、365日24時間救急疾患に対応できる体制が整っています。なかでも心筋梗塞などの循環器疾患と脳卒中の治療は当院の強みといえます。

脳卒中に関しては、脳卒中センター内に県内唯一の脳卒中集中治療室(SCU)での治療が可能です。脳卒中ホットラインを引いて、小山市内外から幅広く患者を受け入れています。血栓を溶かすTPA治療や、全国でもまだ治療例が少ない血管内カテーテル治療も行っています。

新築移転以前は建物の老朽化と財政面が課題となっており、それが地方独立行政法人化するに至った理由です。建物は新築し、財政面は対策を練る必要がありました。そこでも財政面の立て直しだけを考えるのではなく、財政難の原因である受診患者数の減少は何を理由にしているのか、どうしたら当院で受診してもらえるのかを考えなければならないと思いました。

患者さんに選んでもらうためには、安心感と質の高い医療を提供することが重要です。その点で考えると、公立病院である当院は、住民のみなさまに安心感や身近さはもっていただいていると思えます。そうすると、改善すべきは医療の質だと考えました。

また、機能分化の面でいうと、大学病院や大規模病院などは、より高度な三次救急を受けもつ医療機関です。そうあるためには、当院のような二次救急を担う病院がしっかり機能する必要があります。この医療の棲み分けをしっかり行うためにも、患者さんが当院で安心して受診できるようにならなければなりません。

新病院への移転に際して、私は患者さんを第一に考えようという方針を打ち出しました。

そのうえで、何のために当院が存在しているのか、公立病院とは何なのかを考え、「チーム医療を推進し、地域のみなさまから信頼され、必要とされる病院をめざす」という理念を掲げました。

当院は総合病院です。複数の診療科で多くのスタッフが患者さんと接している状況で、スタッフ間の連携がとれていないと、患者さんは安心して受診できません。医療が高度化した現代では、チーム医療は必須とされます。

患者さんにとって1番よい医療とは何か、医師や看護師を含めスタッフ全員で考えるように促しました。

スタッフの意識はもちろんのこと、医療の質も当然よくなければなりません。患者さん第一を推し進めるのと同時に医療機器や診療科を増やし、提供できる医療のレベルを上げていきました。

そしてもうひとつ、病床の稼働率及び回転率を上げることにも取り組みました。

これは当院の医療の質が上がり、多くの患者さんにお越しいただけるようになったためです。救急患者さんを多く受け入れ、地域との連携強化に取り組み、開業医の先生方からも協力を得られるようになり、病床の回転と稼働率を上げてきました。

当院では、2014年に地域包括ケア病棟を開設しました。これは栃木県内でも、早い段階での開設となりました。

患者さんはご高齢の方が多く、すぐに退院することは困難です。そこで、地域包括ケア病棟に移っていただき、リハビリテーションスタッフや栄養士、薬剤師などの多職種が連携し、生活機能を回復させる訓練を行っています。

これからは、リハビリや在宅復帰など回復期の治療を担うことも、地域の公立病院の役割だと考えています。

当院の隣には、小山市が運営する健康医療介護総合支援センターがあります。この施設は、当院が新築移転を行う際、同時に設立しました。

同センター内には夜間休日診療所があり、市の福祉系施設が隣にあります。夜間休日急患診療所では、地域の開業医の先生が全員参加で、交代で診療を行っています。

こういった開業医の先生方との連携が緊密なのは、院内の改革を行うと同時に、開業医の方々とも少しずつ関係を深めてきた結果です。

地域で中核を担う急性期病院として必要なのは、患者さんのためにという全体の意識、そして本当の意味でのチーム医療だと考えています。

現在、若手の医師における教育的な視点からみると、医師のキャリアを伸ばしていくうえで足りていないと感じるものがあります。それが、「患者さん第一」という視点です。

これは、医学部でも学んでいると思います。しかし、たとえば看護師が受けている教育と比べると、決して十分ではないというのが私の考えです。

チーム医療を進めていくためには、患者さん第一の視点がとても大切です。医師や看護師など、すべての職種がそれぞれの視点を擦り合わせて物事をみていく必要があります。お互いの職種を理解し、協働できるようになってほしいと思っています。

だんだんと当院で受診いただける患者さんが増え、当院に信頼を置いていただけるようになってきたのではないかと感じています。患者さんにとっては受診先の選択肢が増え、地域での暮らしがより安心できるものになったのではないかと考えています。
ご高齢になればなるほど、医療は生活の一部になります。当院は急性期医療が必要な際に頼れる存在として、地域に根づいた病院でありたいと考えています。

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