院長インタビュー

急性期医療や認知症など、幅広い分野に対応する芳賀赤十字病院の目指す地域医療

急性期医療や認知症など、幅広い分野に対応する芳賀赤十字病院の目指す地域医療
安田 是和 先生

芳賀赤十字病院 病院長

安田 是和 先生

この記事の最終更新は2017年11月07日です。

栃木県東部に位置する、真岡市に建つ芳賀赤十字病院は、県東保健医療圏の中核病院として地域とともに歩んできました。現在は、芳賀地区のさらなる医療連携の強化を図るため、2019年の移転に向けて新病棟の建築を進めています。

外観

「“カメレオン”のように地域のニーズに応えながら、医療をさまざまに変化させて拡大させてきた」と同院の院長である安田是和先生は語ります。その診療内容は、急性期医療に留まることなく、赤十字病院として災害時における救護班の派遣や、へき地への医師派遣まで多岐に渡ります。

施設の強みやこれから目指す地域連携の形、そして若手医師を育てる研修体制など、同院の「これまで」と「これから」の取り組みについて、安田是和院長にお話を伺いました。

当院は、1922年(大正11年)に設立された芳賀病院にはじまり、1949年(昭和24年)に現在の日本赤十字社 芳賀赤十字病院となりました。真岡市に所在し、近隣の益子町、茂木町、芳賀町、市貝町を含めた「県東保健医療圏」において唯一、二次医療を提供する中核的な役割を担っています。

現在、県東保健医療圏は医師不足が問題となっています。そのため、同医療圏以外で診療を受ける患者さんも増えており、「地域完結型」の医療に向けて整備が急がれます。

そのような背景や地域のニーズに対して当院も応えていく必要があると考えています。また、建物の老朽化や、災害時に備えた耐震性強化が急務であることから、新しい病院の移転建築に向け準備を進めています。

診察

当院の特徴としては、まず救急の患者さんが多いことが挙げられます。栃木県内でも有数の受け入れ数となる、年間約4,200台の救急車に対応しています。なお、来院される患者さんのほとんどは芳賀地区の方々です。

地域医療の支援に尽力しつつ、地域医療に支援される病院としても、かかりつけ医の先生方に安心して患者さんをご紹介いただける施設を目指し、取り組んでいます。

救急の患者さんの受け入れ体制としては、芳賀地区救急医療センターと連携して診療にあたっています。軽症の患者さんに対する一次救急(初期)医療は、同救急医療センターで対応いただいています。一方当院では、入院や手術が必要と判断された二次救急医療を要する患者さんを受け入れています。

24時間365日体制で、内科医師、外科医師、産婦人科医師、小児科医師が救急外来診察を行っています。

当院では、心臓血管外科以外のあらゆる疾患に対応します。

治療が困難だと判断した場合には、すみやかに患者さんを、大学病院をはじめとする高度医療機関にご紹介し、ある程度症状の改善がみられたら、また当院で診察を続けていただく体制をとっています。

診療体制としては患者さんを中心とした、チーム診療を提供しています。医師と対等な立場で関わる看護師や、放射線部門、検査部門、薬剤部門、リハビリ部門などの専門分野のスタッフがそれぞれの専門性を発揮して治療にあたります。

現在当院で稼働しているベッド数は360床であり、新しい病院では感染症病床を4床加えて364床の稼働を予定しています。

新病棟はこれまでの経験を踏まえ、効率よく診療できる施設になる予定です。

現在、日本では「かかりつけ医」を地域における第一線の医療機関として位置づけています。そのうえで、入院・手術などの設備を持つ医療機関との役割分担を図っています。

当院は2012年(平成24年)に「地域医療支援病院」に承認されています。一人ひとりの患者さんが「かかりつけ医」を持つことを推進し、各医療機関と役割分担をしながら相互に協力しています。紹介率は、67.2%、逆紹介率は78.2%であり、どちらも積極的に行っています。

また、がん医療、周産期医療、認知症医療における地域医療の拠点としても活動しています。

当院は、地域がん診療病院および栃木県がん治療中核病院に指定されています。

がん診療病院や、地域の医療機関などと連携して、がんの患者さんの状態に応じた適切な治療を提供しています。手術をはじめ化学療法から緩和ケアまで対応します。

また、院内の「がん相談支援センター」では、患者さんやご家族、地域の方々のがんの悩みや不安、がんにともなう症状などに対して看護師や社会福祉士がサポートしています。

当院は、栃木県の周産期母子医療センターに指定されています。ハイリスク妊産婦の診療病院として、県内のほかの医療圏からも母体搬送を受け入れています。

こちらは24時間365日体制であり、産婦人科医と小児科医が連携し、周産期医療と小児科医療に対応します。

2016年には、認知症疾患医療センターとして認定されました。ここでは、認知症の鑑別診断や、身体合併症、そのほかの周辺症状に対する急性期医療、専門医相談などを実施する役割を担います。

地域の医療機関や、行政・福祉などの関係機関と連携を図り、患者さんやご家族が安心して生活できるように支援します。

地域のニーズの高い分野である、脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などの患者さんに対し、寝たきりの防止や在宅復帰をするリハビリテーションを行っています。日常生活の自立を図り、障害をできる限り改善するリハビリテーションを集中的に行う施設です。

医師、看護師、リハビリスタッフなど各専門職のスタッフがチームを組んで在宅復帰に向けて支援します。

赤十字病院の社会的役割として、「災害救護」があります。

自然災害や人的災害の大規模災害時に、医療救護班を現地に派遣できるよう救護班を3班編成しています。

近年の災害活動実績としては、2011年の東日本大震災や、2015年の関東・東北豪雨災害、2016年に起こった熊本地震災害において当院の救護班や看護師・薬剤師を派遣しました。

当院のもうひとつの特徴は、若い医師の「教育」に力を注いでいることです。当院に来られる研修医の数は、毎年1名ほどです。少数精鋭の研修ではありますが、今後はもう少し人数を増やしていけたらと考えています。

少人数の研修のメリットは一人の医師に費やす時間が増える分、その一人を磨きあげることができる点にあります。

医師の少ない地方で、かつ救急から回復期の病症まで対応する当院で研修を受ける方は非常に高い意識をお持ちです。初期医療研修の2年間においては、ほかの施設の3倍ほど多様な経験を積むことができるかと思います。

実際に、当院で研修を受けた医師が、後期研修でほかの大学病院に進んだ際の評判を聞くと、非常に優秀といわれます。

当院の医師は全員が教育熱心で、また大学病院での指導経験豊富な医師が教育を担当し、若い医師の育成に非常に力を入れています。

また、医師だけでなく、すべての若い医療スタッフを大切に育てていくことは、これからの病院の財産になると考えています。

当院の課題は、医師不足などのため、スタッフが非常に多忙であることが挙げられます。働き方が見直されるべき現代で、まだそこに着手できていない現状です。

不足している医師は、自治医科大学附属病院から来ていただいています。

当院に来ていただいたからにはしっかりと成長した実感を持って各施設に戻っていただけるように努力したいと思っています。

安田是和院長

当院には、さまざまな大学で学んでこられたスタッフが集まっています。そのため、年齢や経歴などは関係なく、その方の当院での活動を評価しています。

当院の理念にもありますが、患者さん中心の医療を提供することを常に念頭において運営に務めています。また、これからも当院のスタッフには、患者さんのために日々勉強をすることを大切にして欲しいと思っています。

今後の日本の社会は高齢化にともない、これまでにない変化が訪れます。当院はその変化に対応しうる病院でありたいと考えています。

地域医療では、ひとつの病院の努力だけでは解決できない課題もあります。そのため、各医療機関と協力し、支え合っていくことを目指します。今後も、地域のみなさんが当院に求めているものを明確に把握し、地域に貢献することで、信頼される病院を目指してまいります。

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