院長インタビュー

9つのセンター機能で奈良県南部の医療を守る南奈良総合医療センター

9つのセンター機能で奈良県南部の医療を守る南奈良総合医療センター
松本 昌美 先生

南和広域医療企業団 副企業長、南奈良総合医療センター 院長

松本 昌美 先生

この記事の最終更新は2018年06月25日です。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センター(以下、南奈良総合医療センター)は、「南和の医療は南和で守る」を基本理念に掲げ、奈良県南部における医療の最後の砦として活躍しています。

センターの概要、専門分野に特化した診療を実践するセンターの特長、研修教育体制、今後の展望などについて、院長の松本昌美先生にお話を伺いました。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

超高齢社会の到来が叫ばれて久しいですが当院のある南和地域も例外ではなく、2015年は高齢化率36.6%と全国平均値26.6%を上回る結果となりました。高齢化率上昇のみでなく、地域の人口減少、マンパワー枯渇、患者さんの他地域流出など複数の問題を抱えていた当地域では、県立五條病院と国保吉野病院と町立大淀病院の病院機能統合・再編を実施しました。

南奈良総合医療センターは、南和医療圏における医療体制再生の中核的存在として2016年4月に誕生しました。比較的高度な診療は当院、療養や退院に向けたリハビリや日常的な診療は一体的に運営する企業団の2病院(吉野病院、五條病院)と役割分担をしています。

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2018年4月現在では25診療科を有しています。これらとは別に、診療科横断的なチーム医療としてより専門的で高度な診療を実践する9つのセンターもあります。

南和地域は県面積の64%を占め1市3町8村で構成されています。今回の医療体制整備によって地域の医療が再構築され、患者さんの他地域流出を解消することができました。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

当院では、緊急度の高い救命救急医療から、病態が急変しやすい時期を脱して在宅復帰を目指す方のためのリハビリテーションまでを提供しています。地域にお住まいのみなさんが健康や医療に対して不安を感じることのないよう、常にまごころと感謝の気持ちを込めた笑顔で、患者さんやご家族と向き合い続けています。

企業団の他の2病院や近隣の医療機関、公立へき地診療所、開業医の先生とも緊密な連携を取り合うことで、名実ともに南和地域における医療の最後の砦として活躍しています。

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南和の医療は南和で守るため、救急搬送されてきた患者さんに対し総合診療科と救急科の医師を中心に各診療科、若手医師、研修医がチームとして可能な限り診療します。救急センターでは「断らない救急」実現のため、救急搬送の24時間365日受け入れ体制を整備、また急病のウォークイン患者さんにも救急センターでよりスムーズに対応できるようにしました。

2017年3月には奈良県立医科大学が主体となって奈良県ドクターヘリ運航が開始しました。当院の屋上ヘリポートを発進基地としたことで県内どの地域でも約15分で急行できるようになり、患者さんのより迅速な診療と搬送が可能となりました。

こうした努力が実を結び2017年度では救急車搬送3,677件、ドクターヘリ搬送147件を受け入れることができました。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

消化器とは、食道から肛門までの臓器と、肝臓・胆のう・膵臓といった臓器とこれらに付属する血管の総称です。消化器に生じる病気には、胃がん大腸がんや肝臓がんに代表される消化器がん、慢性的な下痢や腹痛の原因として注目されている潰瘍性大腸炎などがあります。高齢化進行や生活習慣の変化などの影響を考えると、消化器に対する高度かつ専門的な治療への需要は今後ますます増加するでしょう。

消化器病センターでは、消化管出血や膵炎胆のう炎などの消化器系緊急疾患に対して24時間対応しています。消化器内科、消化器外科、放射線科を中心に複数の診療科が力を合わせることで、薬物治療、内視鏡治療、外科手術、IVRなど、より高度で専門的な治療方法のなかから、患者さんや病態に適した体の負担が少ない治療方法をご提案しています。

関節の痛みやこわばりなどの原因には、関節リウマチに代表される膠原病系疾患以外に、変形性関節症腱鞘炎などによる関節の変形や軟骨・筋肉の炎症なども考えられます。

リウマチ・運動器疾患センターでは、筋骨格を専門とする整形外科と膠原病系疾患に精通している膠原病内科、合併症などが疑われれば皮膚科や内科とも緊密な連携を取り合ってきめ細かな診療をして、患者さんの生活の質向上を目指しています。

糖尿病脂質異常症など、いわゆる生活習慣病の早期診断や治療の中核的存在です。

特に生活習慣病の代表格ともいえる糖尿病に対しては、病気を理解していただくための教育のほか、運動療法や食事療法、内服薬やインスリン注射などによる薬物治療を実施しています。糖尿病は各種合併症を起こしやすいことから、眼科などの各診療科や糖尿病療養指導士などのコメディカルとの連携体制を整備、患者さんに合わせたテーラーメイド診療を提供しています。

必要に応じて糖尿病血糖コントロール入院、糖尿病教育入院、糖尿病腎症に対する慢性腎臓病CKD)教育入院など各種教育入院も随時受け付けています。

腎不全に対する人工透析を含めた各種診療や、尿路、膀胱などに生じた泌尿器系がん、排尿障害尿路結石などの診療を担います。

腎不全などの腎障害には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や膠原病が関係していることも多いため、必要に応じて専門の診療科と連携して診療します。当センターでは血液透析のみでなく、腎機能とお腹の中にある腹膜を利用する腹膜透析も実施しています。

子宮や膀胱の臓器が体外へ出てしまう子宮脱骨盤臓器脱)など女性特有の病気も、婦人科と連携して診療します。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

在宅医療を選択された患者さんが住み慣れたご自宅で自分らしく過ごしていただけるよう、訪問診療や訪問看護、薬剤処方、医療的処置などを医療的な面から支援しています。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

奈良県におけるへき地医療拠点病院として、医師や看護師に対する教育や現地派遣を行っています。

奈良県のすみずみまで医療が行き渡るよう「ふるさとネットやまと」の運用を開始、南和広域医療企業団と各公立へき地診療所での電子カルテ共有や、テレビ会議による情報交換の場を設けたことで患者さんの状態を複数の病院全体で把握可能となりました。また災害時のドクターヘリやDMAT運用に関する取り決めなど災害医療対策を強化したことで、地域全体で患者さんを支える体制も充実しました。

各種健康診断人間ドックを実施、生活習慣病からがんまで、さまざまな病気の早期発見を目指します。異常がみつかったりするなど診療が必要な場合には、各診療科の医師や専門のスタッフによるシームレスな対応が可能です。

主にがんと診断された患者さんやご家族の方を対象に、診療やご自宅での療養方法、医療費や社会保障制度、在宅サービスなどのご案内をするほか各種相談をお受けしています。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

今後も地域のみなさんを医療面から支え続けるためには、専門性にとらわれない全人的診療のできる医師と、看護師の存在が欠かせません。南奈良総合医療センターでは2018年度から基幹型臨床研修病院として「南和まるごと研修」を開始、南和地域全体で医師を育成するコンセプトにもとづき、特性をいかした密度の高い研修を提供していく予定です。

また協力型臨床研修病院でもあるため奈良県立医科大学附属病院からの研修医を受け入れる以外にも、後期研修、専門医研修、医学生研修にも積極的に協力しています。

併設する南奈良看護専門学校では、看護学生の育成と教育を行っています。

当院内にある教育研修センターでは全職員を対象に、医療の質と安全性の向上を目的として、院内BLS講習会やICLS(二次救命処置)講習会など各種研修を実施しています。

当院では各診療科の垣根が低く、総合内科の医師や各診療科の専門医が在籍しているため、患者さんを多角的な視点から診る総合診療に必要なスキルを一貫して実践的に身につけることができます。何事も「おもしろい!」と興味をもって取り組んで、地域医療のおもしろさと奥深さを実感していただきたいです。

一方で医師は科学者でもあります。アカデミックな部分を忘れず、常に心の中にサイエンスも持ち続けてください。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センターよりご提供

病院を、病気になったら行く場所だけでなく、病気や健康に関する知識を発信する場所としても活用してもらえればと考え、病院での健康フェスティバルや市民公開講座で、がん脳卒中などをテーマに講演を行っています。また医師や看護師などが出向いての講演や腰痛・肩こり解消体操のレクチャーなどの出前講座もしています。

地域医療では、患者さんに対してただ単に医療を提供するのではなく、標準的な医療を含め複数の選択肢のなかから患者さんの状態と希望に適した内容を選択・実現できるかが、より重要になります。

私たち南奈良総合医療センターでは、医療をつうじて地域の患者さんとご家族に安心感と温かみを届けられる存在であり続けたい。こうした願いを込めて、私はよく『「この病院は日本一!」と言ってもらえることが目標』と、お伝えしています。

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  • 南和広域医療企業団 副企業長、南奈良総合医療センター 院長

    松本 昌美 先生

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