院長インタビュー

芳珠記念病院

芳珠記念病院
仲井 培雄 先生

医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院 理事長、地域包括ケア病棟協会 会長

仲井 培雄 先生

この記事の最終更新は2017年06月05日です。

石川県能美市の人口は少しずつ増加し、人口5万人を越えました。住みよさランキングや介護高齢化対応調査度ランキングなど、各種調査で常に上位にランクインしていることは、このまちの住みやすさを裏付けているといえるでしょう。

また2030年以降の人口減少率が低いことも強みのひとつです。

仲井培雄先生は芳珠記念病院理事長の立場から、この石川県能美市の地域医療の充実に参画しています。本記事では芳珠記念病院の特徴や役割について教えていただきました。

石川県能美郡辰口町(開設当時)に総合病院を作りたいというニーズと、先代である父が考えていた全人的な医療を提供するホテルのような居心地の病院で地域に貢献したいという夢が一致し、芳珠記念病院は1983年に公益的病院として誕生しました。

能美市の医療資源を全国平均と比較してみると、診療所数は平均値よりやや少ないものの、病院数は平均なみにあります。そして介護資源は全国平均よりも充実しています。2040年以降も医療・介護に対するニーズは伸びると考えられていますが、能美市では地域の需要に対応可能であると考えています。

芳珠記念病院では、地域医療の充実のため周辺医療機関との連携を大切にしつつ、地域に急性期医療を提供しています。また患者さんにとって身近な、地域に密着した病院としての役割も果たしています。

能美市内には当院以外にも市立病院や民間病院があり、各機関との関係は良好です。

能美市の人口が増加していることは、能美市と共に歩んで来た医師会が、住民の皆さんの抱える健康に対する不安を安心に変えるように作用しているからかもしれません。

リハビリをしている高齢者

芳珠記念病院では2014年9月に地域包括ケア病棟の届け出をしたことをきっかけに、地域包括ケア病棟を持ち、地域包括ケアシステムの構築に参画する、医療法上の一般病床と療養病床のケアミックス病院として、自称「地域包括ケアミックス病院」に生まれ変わりました。以来、“おうちで暮らそう“を合言葉にさまざまな改革を行ってきました。

訪問介護・看護・リハの事業所の開設や介護老人保健施設を在宅強化型施設にしてグループ施設を運営しています。地域包括ケア病棟を開設した当院と、併設施設が連動し始めた結果、以前よりも早く、そしてより多くの患者さんがご自宅で暮らせるようになったのです。

また当院では、在宅や施設からの救急搬送のサブアキュートや院外からのポストアキュートにも注力しています。院外からのポストアキュートの割合は2014年の段階で3%だったのが、2016年末には14%に上昇しました。これは近隣の高度急性期病院で、高度急性期医療を受けた能美市にお住まいの患者さんの受け入れ先として、当院が認識されつつあるからだと思っています。

※ポストアキュートやサブアキュートについて、詳しくはこちらから

『地域包括ケア病棟が担う役割とは-目指すは「ときどき入院、ほぼ在宅」』

緊急もしくは重要な課題に対し、理事長が達成目標を示し、リーダーを複数指名します。リーダーは医師や看護師など多職種からメンバーを選定するほか、1年間の活動期間中の具体的方針や戦略を決定し、成果について会議に報告します。

この取り組みを2006年に開始以来、さまざまなプロジェクトを実施してきました。たとえば多職種協働組織創造プロジェクトでは、多職種間の情報や場の共有、早期介入システム構築を行いました。病院で働く方たちに、ベッドサイドでのチーム医療の必要性と予防・医療・介護といった各分野の横の連携の重要性について理解していただけたことは、非常に大きな成果といえるでしょう。

大腸がんにつながる芽を摘み取り地域に安心を提供しようと考え、リーダーに大腸肛門病専門医を据えて開始した大腸肛門病プロジェクトも実施しました。便秘・肛門外来の開設や大腸内視鏡検査の充実、大腸肛門病に対する啓発や広報活動、他医療機関との連携を実施したところ、それまで年に700件程度だった全大腸内視鏡の実施件数が1,200~1,300件に増加するなど、非常に大きな成果を挙げました。

日本の医療はこれまで以上に、医療を提供する側の病院がやりたい予防・医療と、利用者である住民のためやるべき医療・介護のベストミックスを追求することが求められます。そこで、芳珠記念病院では「地域包括ケアミックス病院強化プロジェクト」を2015年に立ち上げました。

手術を担当するオペチームと救急車を受け入れる救急チームに対し、一定の目標を設置しました。

オペチームには全身麻酔手術年間500件以上達成はじめ、手術時間の効率化や外来患者のがんスクリーニング、周術期のリハビリテーション(以降リハ)や栄養管理の徹底などを目標に設定しました。2014年度では471件だった手術件数は2015年度では498件と5%の成長をみせ、達成まであと一歩のところまで来ました。

救急チームには救急車受け入れ件数1,000件を目標に設定しました。救急車受け入れプロトコルを充実させることで専門外でも断らない救急医療の実践や、21時ごろまでに搬送されてくる軽・中等傷病者の受け入れを強化しました。2014年度は760件だった救急車受け入れ台数は2015年度には834件、9.7%と1000件には届きませんでしたが、大きく成長したのはこうした改善策が実を結んだためといえるでしょう。

脳卒中や大腿骨折により歩けなくなった方を再び歩けるようにするには、歩けなくなる前の段階における歩行状態や認知機能、栄養状態が大きく関係しています。なかでも認知症の方の入院数は年々増加傾向にあることから、認知症の方に対するリハなど指導方法の確立は重要な課題といえるでしょう。

しかし、認知機能そのものを向上させるためのリハは十分な効果を見込めないことから、ADL(日常生活動作)改善を目的としたリハが優先され、認知機能向上はその二次的な効果として期待されています。

特にアルツハイマー型認知症栄養不良を伴う方が、多剤投薬(不適切に多い薬剤の処方)を受けている場合、認知症が進行しているにも関わらず食欲低下の原因となる抗認知薬の服薬を続けているケースが散見されます。

認知症は、進行すればそれだけ治療やリハビリなどの医療行為の有用性が薄れ、その効果も非常に限定的なものになります。また、認知症の方に対するケアでは、認知症患者の尊厳を重視したうえで倫理的・社会的に難しい判断を求められることもあります。

高齢者や認知症の方に対し質の高いリハビリを効率よく提供するためには、栄養や薬剤管理に対する知識と認知症に対する対応力が不可欠ということです。患者さん本人や家族をチーム医療の一員に迎えて生活支援型医療を実践することが重要だと考えています。

POCリハ(Point Of Careリハビリテーション)とは、ADL、IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作能力)改善のため、作業療法士が患者に対してオンデマンドでリアルタイムに応える、地域包括ケア病棟で実施している個別のリハのことです。地域包括ケア病棟では、リハは診療報酬上包括算出のため、従来の疾患別リハではできなかったリハを提供しようと考え出されました。POCリハでは病棟に常駐している作業療法士が、ADL(日常生活動作)が自立してない方、つまり身の回りのことが自分だけでできない方が自宅に戻っても日常生活を送れるよう支援をするほか、病棟スタッフや患者家族に向けた介助方法の指導などを実施しています。

最近は、理学療法でも離床促進、廃用・じょく予防の目的でPOCリハを行っています。

POCリハが持つ可能性は認知症

POCリハの特徴は、リハの実績は分単位で記録されていることや、リハする時間を約束していないところにあります。こうした特徴は、特に認知症の方やサルコペニアがん悪液質の患者に対するリハで活きると考えています。これは、認知症の方はシミュレーションとスケジューリングがうまくいきにくいためです。

たとえば3時にトイレトレーニングをしましょうと約束しても、3時前にトイレを済ませてしまうと、患者さんは当初予定していたトレーニングを行えなくなることも多いのです。POCリハであれば、トイレを探している認知症の方に対してトイレの位置を教えたときに一緒にトレーニングをしましょうと呼びかけることが可能です。

PerFM(Person Flow Management)は、患者さんを生活者の視点でとらえると同時に、病院と地域を一体と考えることで、医療と介護をシームレスに提供するための仕組みです。

院内多職種協働に地域内多職種協働を掛け合わせることで、従来型医療では一方通行だった患者の流れを、本人や家族の安全・安心を軸にした巴型で循環させることを目的としています。

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