院長インタビュー

最後の砦として県民の医療を守るために-香川県立中央病院の取り組み

最後の砦として県民の医療を守るために-香川県立中央病院の取り組み
太田 吉夫 先生

香川県病院事業管理者 、香川県立中央病院 前院長

太田 吉夫 先生

この記事の最終更新は2018年02月08日です。

香川県立中央病院は、1945年に「日本医療団高松病院」として開設されました。1948年には香川県に移管され現在の名称に変更、2014年に香川県高松市朝日町に新築移転しました。

現在は、病床数533床と充実した医療設備を備えています。

同院の取り組みや、今後の展望について院長である太田 吉夫先生にお話を伺いました。

当院は、高松市を中心に香川県東部の医療を支えている基幹病院です。がん診療や循環器医療といった専門性の高い医療や、地域を支える救急医療・災害医療の提供など、多くの役割を担っています。

また、僻地医療支援病院にも認定されているため、当院の医師が交代で医師のいない離島での診療を行っています。

高齢化が進むこの地域において、29の診療科と脳卒中医療センターやがん医療センターといった専門センターのほか、予防のための検診センターも備え、幅広いニーズに対応しています。

当院は県立病院として、県民の医療の最後の砦となる役割を担っています。

幅広い分野の疾患をカバーするために多数の診療科をそろえ、みなさまの健康のサポートに努めています。

神経内科は脳梗塞パーキンソン病ギラン・バレー症候群など幅広い疾患に対応しているほか、認知症診療のための「ものわすれ外来」を設けています。各種検査を実施し、早期診断を目指しています。

循環器内科は県内でも症例数が多く、特に不整脈治療などに有効とされるカテーテルアブレーションに力を入れています。2016年には、治療実績が300件を超えました。

カテーテルアブレーションの治療は術後、抗凝固薬の内服を中止・減量できる可能性が高く、出血などの副作用のリスクが低くなり、患者さんのQOL(生活の質)の向上にもつながります。

血液内科では、白血病悪性リンパ腫などの造血器腫瘍の治療を主に行っていす。当院には、それらの疾患とその治療の際に使用する薬剤を専門とする医師が在籍しています。

薬剤は年々種類が増え、使い分けなどが難しくなってきております。専門知識のある医師がいることで、より安心して治療を受けていただけるかと思います。

消化器内科では内視鏡による診断と治療を積極的に行っています。カプセル内視鏡検査や小腸の内視鏡検査にも対応しており、2016年の実施総数は年間1万6,000件を超えます。

精度の高い機器を使用することで、特にがんの早期発見・治療を実現しています。

当院には常勤の放射線治療担当医が在籍しており、がんに対する放射線治療を行っています。医療機器に関しては病巣にピンポイント照射ができる高精度放射線治療装置を導入しているほか、放射線を出すカプセル状の線源を体内へ挿入し、照射させる小線源治療(RALS)の機器も備えています。

高精度放射線治療装置 ノバリス

当院は、災害拠点病院に指定されており、災害時にも医療を提供できる設備を整えています。また、海の近くに立地しているため、津波対策として病院を新築する際に、3メートルほど地上げしました。

建物は免震構造になっており、病院の敷地内と道路は液状化対策も行っています。

屋上にはヘリポートを備え、通常は、遠隔地や離島など患者搬送に使用されており、災害発生時には被災地から搬送された患者さんを収容することが可能です。1階のエントランスでは、トリアージを行ったりできるスペースも確保しています。

 
災害時に出動する「DMAT」の訓練風景

新築移転の際に、医療機器を一新しました。その新しい設備のひとつが、ハイブリッド手術室です。

ここで行われている手術のひとつとして大動脈弁狭窄症に対するTAVI(経カテーテル的大動脈弁治療)があります。TAVIが可能になったことで、年齢や合併症などのリスクで手術が難しかった患者さんにも、対応が可能になりました。そのほか、脳卒中に対する血管内手術や整形外科の脊髄の手術などでも、このハイブリッド手術室を活用しています。

また、手術支援ロボット「ダヴィンチ」も導入しました。これにより、より高度で低侵襲な手術ができるようになりました。

ハイブリット手術室

当院は急性期病院であり、普段は地域の医療機関から患者さんの紹介を受けています。

現在、紹介率・逆紹介率ともに70〜80%ほどです。地域との連携を深め、どちらもより向上させていきたいと考えているところです。

そのために、年に1〜3回ほど私と地域連携室の担当者とで地域の医療機関へ伺い、当院の医療機能を知ってもらうようにしています。また連携病院証というものを発行し、地域の医療機関にお渡ししています。

当院の初期臨床研修では、屋根瓦方式を採用しています。つまり、1年目の医師を2年目の医師が、2年目の医師を3年目の医師が指導する形です。教える医師の立場が近いことで、具体的な目標にできるのがメリットです。

どの診療科でも、若い医師にはできるだけ多くのことを経験してもらっています。

 

地域のみなさまに知っていただきたいことは、医師だけが患者さんの病気を治療するわけではないということです。ご自身の病気と向き合い、患者さんにも積極的に治療に参加していただきたいと思っています。

当院は今後も、みなさまと地域の医療機関の方々に信頼してもらえる病院であれるよう、職員一同努力してまいります。

  • 香川県病院事業管理者 、香川県立中央病院 前院長

    日本医師会 認定産業医

    太田 吉夫 先生

    岡山大学医学部を卒業後、麻酔科に入局。麻酔科医として22年間過ごした後、岡山大学病院の初代医療情報部教授に就任し、15年間勤務。その後、現在の香川県立中央病院で勤務。