院長インタビュー

地域住民が誇りに思える病院を目指して―宇陀市立病院の取り組み

地域住民が誇りに思える病院を目指して―宇陀市立病院の取り組み
仲川 喜之 先生

宇陀市立病院 院長

仲川 喜之 先生

この記事の最終更新は2018年07月02日です。

宇陀市立病院は、1954年に開設された公立病院です。2006年に市町村合併が行われ、それに合わせて現在の名称に変更されました。

宇陀市は奈良県の中山間地域に位置しており、この地域は医療資源も限られた場所です。周囲に大きな病院もないため、宇陀市立病院は地域住民を支える重要な役割を担っています。

そんな宇陀市立病院では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。院長である仲川 喜之先生にお話を伺いました。

宇陀市立病院ご提供

宇陀市の公立病院である宇陀市立病院は、16の診療科と病床数176床を有する病院です。医療機器は新しいものを取りそろえ、急性期から回復期まで幅広く診療できる体制を整えています。

宇陀市は大阪市とほぼ同じ面積を持っていますが、人口は約3万人であり、人口密度は大阪市の100分の1です。高齢化や人口減少が比較的進んでいるため、そうしたニーズにも対応した診療を行っています。

当院では、2014年に「奈良肩・肘センター」を開設しました。地域の整形外科のなかでも肩や肘を専門とした医師は少なく、宇陀市外や三重県などの隣接する他県からも、患者さんが多く紹介されてきます。

特に症例数が多いのは、肩の腱板断裂や反復性の肩関節脱臼、肩の周囲の外傷などです。2017年度は、肩関節の手術は年間約160件、肘関節の手術は年間約30件行っています。

高齢化が進んで注目されるようになった疾患として、骨粗鬆症があります。当院では、「骨粗鬆症診療支援サービス」をスタートしました。医師が診療を行うほか、日本骨粗鬆学会が認定する骨粗鬆症マネージャーの資格を持った職員が4名おり、食事や生活習慣などの指導を行っています。

外来では全体で約1,200名の患者さんをフォローしており、この数は宇陀市の65歳以上の10人に1人という割合です。半年に1回、検査で来院していただき、普段は開業医の先生に処方などをお願いしています。

患者さん向けの「骨粗鬆症教室」も週に1回開催しています。ここでは、病気の話や薬、食事、日常生活の注意点など、医師をはじめとした多職種で患者さんへ情報の提供を行っています。近年は骨粗鬆症のことを知っている方も増えて、予防などへの関心も高まっています。

当院では、2014年に地域包括ケア病棟を開設し、4病棟あるうちの2病棟(87床)を地域包括ケア病棟として運用しています。当院の周囲にはほかに病院がなく、地域で医療を完結するためには、ここで急性期から回復期までの患者さんを診る必要があります。

これまでは急性期病棟のみで診療を行っていたため、患者さんがもう少しリハビリテーションを受けたい場合などでも、入院治療を続けることができませんでした。しかし、地域包括ケア病棟を開設してからは、ゆっくりと回復期医療を受けてから退院いただけます。

また、急性期病棟と地域包括ケア病棟の機能をはっきりと分けたことで、看護師によるケアもしやすくなったというメリットがあります。

地域包括ケア病棟のスタッフのみなさん 宇陀市立病院ご提供

当院の位置する宇陀市は、奈良県から地域包括ケアシステムのモデル地区に指定されています。宇陀市はモデル地区となっている4か所の地域のなかで、唯一の中山間地域です。比較的人口が少なく、医療機関も少ないため、地域包括ケアシステムをつくるには適した地域とされています。

現在は、医療機関と介護施設で患者さんの情報を共有できる、「医療介護連携ネットワーク」の準備を進めています。2018年10月から本格的に稼働する予定であり、ゆくゆくは奈良県全体に広めていきたいと思っています。

当院では、院内外を問わずさまざまな取り組みを行っています。たとえば、当院の内科では禁煙外来や睡眠時無呼吸症候群の診療、神経内科では認知症サポート医が物忘れ外来を実施しています。また、小児科では発達相談外来なども行っています。この発達相談外来は行政と共に取り組んでいるため、保健師が相談を受けることもあります。

在宅医療に関しては、患者さんのレスパイト入院も受け入れています。2018年4月からは、訪問診療や訪問リハビリテーション事業も始めました。

院外への支援としては、へき地医療への支援を行っているほか、大規模な事故や災害に備えて、災害急性期医療に対応するための訓練を受けたDMATを2隊編成しています。

当院で学ぶメリットは、急性期から慢性期まで幅広く患者さんを診ることができるという点です。急性期から慢性期まで患者さんを診れば、どのように病態が変化していくのか、自宅に戻ってどのような生活をされるのか、また、必要であればいつ頃再入院することになるのかなど、患者さんのサイクルが見えてきます。さらに、どのような治療を行うと、どのような経過になるのか、病気の全体像が見えるようになるでしょう。若い方には、ぜひ全人的に患者さんを診る力をつけてほしいと思います。

若手職員のみなさん 宇陀市立病院ご提供

地域の方々に信頼され、誇りにされるような病院づくりをしていきたいと思っています。働いている職員も、地域に住む患者さんにも、「ここで働いてよかった」「この病院があってよかった」と思ってもらえるような病院にすること、それが私のミッションです。

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