院長インタビュー

この地域を守るために必要な医療を提供したい―苫小牧市立病院の取り組み

この地域を守るために必要な医療を提供したい―苫小牧市立病院の取り組み
松岡 伸一 先生

苫小牧市立病院 院長

松岡 伸一 先生

この記事の最終更新は2017年11月15日です。

苫小牧市立病院は、1946年に誕生しました。その歴史はもっと古く、明治時代に苫小牧がまだ村だったころの村立病院にまでさかのぼります。民間病院の進出によって一度、廃院となりましたが、戦後に新たに町立病院として開設され、現在に至ります。

現在では382床の規模となり、中核病院として地域医療を担っています。そんな同院ではどのような取り組みを行っているのか、院長である松岡 伸一先生にお話を伺いました。

外観

公立病院として開設された当院は、苫小牧市だけでなく、周辺の日高医療圏などの中核となる病院として、地域住民に医療を提供しています。

苫小牧市は高齢化が進みつつあるものの、北海道の自治体のなかでは比較的若い世代が多い地域です。そのため、幅広いニーズに対応する必要があります。

「市民の健康は私たちの願い」という理念のもと、23の診療科を備えて、地域住民に必要な医療を提供しています。

当院最大の強みは周産期医療です。現在、小児科には常勤医が11名在籍しており、それに合わせる形で産婦人科の常勤医も増えてきました。当院の地域周産期センターは、長くいる先生方の努力によってできたものです。

この地域は工場などが多く、比較的若い方々の流入が多い場所です。そのため、ほかの地域よりは周産期医療のニーズは高くなっています。小児科に関しても当院が常時当直体制を整えています。

産婦人科は、一時期、医師の数が減ってしまい、半年ほど母体搬送が受けられない時期がありました。それは、患者さんが札幌市内まで行くことになり、この地域にとっては非常に大変なことです。

その後は大学病院にお願いをして医師を確保し、2016年の4月から母体搬送の受け入れも再開しています。

当院が位置しているのは東胆振を中心とした医療圏ですが、近隣の日高医療圏内で対応が難しい患者さんは王子総合病院か当院に搬送されてきます。周産期に関しては浦河町には浦河赤十字病院がありますが、そこで対応が難しい患者さんも当院にいらっしゃるケースもあります。

浦河赤十字病院のある医療圏でも分娩に対応できるように、当院や北海道大学などの産婦人科の医師が出張して、軽い症例に関しては地元で取り上げられるようにしています。

地域全体として、たしかに高齢化は進みつつあります。だからといって子どものための医療がいらないわけではありません。今後も近隣の医療機関と協力し、地域のみなさまのための周産期医療を提供し続けていきたいと考えています。

病室

当院では、2014年5月に入院支援センターを開設しました。患者さんが入院するとき、入院センターであらかじめ説明や相談などを行い、スムーズに入院できるようサポートしています。この取り組みを始めたのは、北海道内の自治体でも早いほうです。参考にしたいと他院から見学に来ていただくこともあり、ほかの自治体でも同様の仕組みがつくられるようになりました。ただ、問題は専用の場所がないことです。10年前に新病院をつくった段階ではそういった取り組みは想定していなかったため、スペースが足りていません。

今後は、もう少しゆとりを持って業務ができるように、場所づくりについて検討していきたいと思っています。

看護部ではキャリアアップの一環として、積極的に認定看護師の資格取得ができるよう、バックアップ体制を整えています。具体的には、養成学校の学費負担や、通学中の給与を保証するなど、経済面での支援がメインです。

当院にいる認定看護師は、現在7名です。感染管理や皮膚・排泄ケア、認知症などの資格取得者がいます。近年では急性期でも認知症を患う方が多く、環境の変化で混乱してしまうことも多々あります。

そういった状況を把握し、当院の看護部では早い段階で認知症看護認定看護師の資格取得を促しました。看護のスペシャリストを多く育成することで、より質の高い医療の提供につなげていきたいと考えています。

この地域には、当院ともうひとつ、王子総合病院という病院があります。この王子総合病院と当院で、互いに協力して地域医療を支えるという体制が構築され、現在まで30〜40年ほどそれを維持してきました。

救急医療はこの2つの病院で輪番体制を取っており、偶数日は王子総合病院、奇数日は当院という形です。これがしっかりと確立されているため、救急車の受け入れ先がなくて困るということもほとんどありません。この診療体制は、これからも維持していかなければと考えています。

当院の課題はやはり医師をはじめとする人手不足です。もっとも深刻なのは呼吸器内科ですが、これは当院だけでなく北海道全体の課題となっています。当院も王子総合病院も北海道大学から医師の派遣を受けていますが、医局の入局者自体も減っています。

現在は、常勤医1名で入院患者さん15名ほどをみながら、頑張っている状況です。

院長

若手の方々には、自由に自分の能力を発揮してほしいと思っています。のびのびと実力を発揮できる場であることをめざしたいと思っていますし、そうしてもらえることが理想です。

当院は各診療科の医師が懸命に指導してくれているおかげで、研修医には高い人気があります。先輩の感想などを参考に見学に来てくれたり、勤務を希望してくれたりする方が毎年、数多くいます。

2年間の研修中にしっかりとした指導を受け、レベルの高い医療を身につけていただきたいと思っています。

当院は地域の救急医療を担っていますが、以前は地域の方々にその役割を理解していただけていない部分がありました。ちょっとした風邪などでも救急外来を受診する方がとても多く、救急患者数は年間2万名といった状況で、医師が本来の役割を果たせないという事態に陥っていたのです。

そのため、急病センターをつくり、軽症の患者さんにはそちらを受診していただくようにしました。徐々にそういった体制への理解もいただくようになり、現在の救急患者数は年間8,000名ほどに落ち着きました。

今後も、支え合っている王子総合病院とともに、地域の医療を大切に守ってまいります。
 

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