院長インタビュー

伝統的な整形外科とリハビリテーションに加え、高齢疾患にも対応し「八代最後のとりで」を目指す熊本労災病院

伝統的な整形外科とリハビリテーションに加え、高齢疾患にも対応し「八代最後のとりで」を目指す熊本労災病院
猪股 裕紀洋 先生

熊本労災病院 院長

猪股 裕紀洋 先生

この記事の最終更新は2017年10月31日です。

独立行政法人 労働者健康安全機構 熊本労災病院は、JR新八代駅からバスで5分ほどの場所に位置します。1954年に開設され、現在は410床、24診療科という規模で運営されています。病院の特徴について、院長の猪股裕紀洋先生にお話を伺いました。

当院はその名の通り、工業都市である八代における「労働災害」への対応をメインに、医療を提供する施設でした。しかし現在は、治療・就労の両立支援などの政策医療のほかは、全世代の幅広い疾病に対応する地域の急性期病院という位置づけになっています。小児から高齢者まで救急患者に対応し、1日平均10台ほどの救急車と、約30名の救急患者さんを受け入れています。

ヘリポートがあるため、ドクターヘリや防災ヘリの受け入れも可能です。

労働災害の患者さんを多く診察していたという背景があるため、現在でも、整形外科やリハビリテーションは強みです。

整形外科では,8名のスタッフが年間1,300~1,400例の手術をこなしています。特に多いのは、脊椎外科、関節外科、手の外科、外傷骨折脱臼)に対する手術です。

関節手術では、切開を行わず、内視鏡と手術器具を使った手術(鏡視下手術)が多くなっています。また人工関節手術も、年間50名以上の患者さんに対し行っています。

血管や神経の損傷をともなう外傷の場合、「マイクロサージャリー」と呼ばれる、双眼鏡のような顕微鏡を使った手術も可能です。10~30倍に視野が拡大されるため、微小な血管や神経を縫合し、切断された指などの再接着手術もできます。手術に使う器具や縫合の材料は、マイクロサージャリー専用の微細なものを用います。

当院は、リハビリテーション総合承認施設です。これは施設の規模やスタッフの力量などが、厚生労働省の定める基準を満たしていることを意味します。

12名の理学療法士のほか、7名の作業療法士、3名の言語聴覚士から成る「中央リハビリテーション部」が、患者さんをサポートします。脳卒中後のリハビリテーションまで含めると、年間およそ2,000名の患者さんのリハビリテーションをサポートしています。お勤めの患者さんには、職場復帰を目指した指導も可能です。

産婦人科と小児科は、地域の急性期病院のうち、当院だけが持っている診療科です。そういった意味では、当院の、地域医療における最大の特色といえるかもしれません。

当院は、県内で8施設しかない地域産科中核病院に指定されています。分娩数は、年間約150件で推移しています。2015年からは、リスクの高い出産にも対応できる体制を整えました。安全な無痛分娩にも取り組んでいます。

婦人科は、不妊・生殖・内分泌、腫瘍(良性、悪性)などを中心に診療を行っております。

熊本県南地域で、入院できる小児科を持っているのは当院だけです。16床の一般病棟と4台の保育器(新生児室)があります。新生児室は、八代市および近辺の産婦人科医院から依頼された新生児も引き受けています。なお、厳重な呼吸管理などが必要な場合は、専用の救急車やヘリなどで熊本市内の、大学病院など周産期母子医療センター施設の新生児集中治療室(NICU)へ搬送する体制が確立しています。

この地域は、高齢者比率が非常に高く、5、60歳代は「若者」扱いです。そのような高齢化社会を反映して、糖尿病などの生活習慣病はもとより、心臓や呼吸器の病気、あるいはがんを患う方が、たくさん来院されます。

心臓の病気を診る循環器内科は現在、6人が在籍しています。月曜日から金曜日まで外来で診療にあたるだけでなく、心筋梗塞などの急を要する病気に対応できるよう、2台の血管造影機器を含めて24時間体制を取っています。

呼吸器科では6名の常勤医が、診療にあたっています。近年、入院する患者さんの数が急激に増え、年間1,000名を超えました。

ご高齢の患者さんでは、誤嚥(ごえん)性肺炎による緊急入院が目立ちます。当院では救急対応だけでなく、必要に応じて、耳鼻咽喉科で嚥下(えんげ)能力を評価、あるいはリハビリテーション科と相談のうえ、摂食嚥下リハビリテーションを提供する場合もあります。

現在、がんに対する基本的な治療は、手術、放射線治療と抗がん剤治療(化学療法)です。消化器内科、外科、泌尿器科なども含め多くの診療科が先進的ながん診療を行っています。当院では2016年に「化学療法センター」を開設しました。がん治療認定医、薬剤師、看護師が配置され、快適な環境で安全に、外来でも抗がん剤治療を受けられるよう、心がけています。

臨床研修にも積極的に取り組んでいます。毎年7名ずつ初期研修医を採用してフルマッチに近く、「研修を受ける上で雰囲気の良い病院」と人気が高いです。

まず、週に2回、早朝講義を行っています。また研修医は、各診療科のカンファレンスにも自由に出席できます。内科の研修が「総合内科」となっているのも、特徴だといえるでしょう。

さらに今年から「チューター制」を取り入れました。チューター役の先生は月に1回、研修医たちを集め、医学を含むさまざまな相談に応じます。

地域医療支援病院として、住民のみなさま向けの講習会だけでなく、地域の医療関係者を対象とした勉強会も積極的に行なっています。年間開催回数は約50回にのぼり、今後もさらに拡充予定です。CT、MRIもそれぞれ複数装備し、地域の先生がたにも迅速に利用いただける環境が整えられています。

また、かかりつけの先生方に当院を知っていただくために作製している広報誌「ROSAI病院通信」も、リニューアルしました。

当院は八代地域における災害拠点病院であり、DMAT(ディーマット)指定医療機関でもあります。医師2名、看護師2名、業務調整員1名から成るDMATを編成しています。大規模災害や多傷病者をだす事故の発生時には、48時間以内に現地に赴き、救護活動を開始します。

地域災害における安全な拠り所として、熊本地震の際にはロビーを開放し、何百人にも及ぶ地域の方に、避難所としてお使いいただきました。

この地域の方には、当院を「八代で困ったときの最後のとりで」と呼んでくださる方が少なくありません。今後も、その信頼にさらに応えたいと思っています。

地域で医療が完結できるよう、急性期を担う病院として、さらに高度な医療の提供を目指してまいります。

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