院長インタビュー

福島の未来に安心と希望を-日本赤十字社 福島赤十字病院

福島の未来に安心と希望を-日本赤十字社 福島赤十字病院
渡部 洋一 先生

福島赤十字病院 病院長

渡部 洋一 先生

この記事の最終更新は2018年03月02日です。

1943年に開設された日本赤十字社 福島赤十字病院は、赤十字病院グループの一員として、災害医療・救急医療・地域医療の面から地域に貢献し、赤十字精神を実践してきました。2011年3月に発生した東日本大震災・福島第一原発事故後においても、非常に多くの救護班を出動させ、福島県民の健康を守り続けてきました。

2019年1月に開院予定の新病院の建設が順調に進んでおり、新病院では「福島の未来に安心と希望を」をキャッチフレーズに掲げています。同院が力を注いでいる医療やこれからの取り組みについて、日本赤十字社 福島赤十字病院 渡部 洋一先生にお話を伺いました。

画像提供:福島赤十字病院

福島赤十字病院は、いまから74年前の1943年に、福島県福島市舟場町に日本赤十字社福島療院として開設されました。当時は、従軍看護婦の養成を目的とした病床数32床の小規模な病院でした。翌年の1944年に福島赤十字病院と改称しました。

1962年に現在地の福島市入江町に移転し、その後、2号館、3号館、本館屋上のヘリポートなどの建物を増築して病院を拡大し、現在では348床の病床と24の診療科を有する急性期病院となっています。建物が老朽化したことと、病院の機能が4つの建物に分散していることなどから、現在新病院を建設しており、2019年1月の開院予定です。

画像提供:福島赤十字病院

当院は福島県北部の地域を診療圏としており、患者さんの多くは福島市や伊達市、伊達郡にお住いの方々です。県北地域における2次救急医療の基幹施設として救急医療に力を入れており、「救急患者さんは決して断らない!」ことを基本方針としています。

2016年は年間3,253件、2017年は年間3,556件の救急車を受け入れました。救急車搬入件数は、過去10年間連続して、県北医療圏でもっとも多い数字を誇っています。また、自力でいらっしゃる救急患者さんも年間7,000名を超えています。

当院は脳卒中患者さんの救急医療に特に力を入れており、脳神経外科の担当医師4名と神経内科の担当医師2名で脳卒中センターを運営しています。

急性期脳卒中の診療は時間との戦いです。治療の開始は早ければ早いほどよいことが示されています。当院は、救急隊と脳卒中診療専門医師をつなぐ専用電話(ホットライン)を設けており、救急隊が「この患者さんは脳卒中の疑いが強い」と判断したら、当院の医師に直接連絡を取り、スピーディに当院に搬送される仕組みを構築しています。

2017年1年間に、376名の脳卒中患者さんが当院に入院されました。緊急搬送された超急性期脳梗塞患者さんの治療としてt-PA静注療法や機械的血栓回収術を数多く行っています。

画像提供:福島赤十字病院

また、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤に対するコイル塞栓術をはじめとする脳血管内手術や血管内治療(血栓溶解・粉砕術・機械的血栓除去術)においても実績があります。

さらに開頭手術の際、手術を安全に行うためのモニタリング手法として術中運動誘発電位モニタリングや術中蛍光脳血管撮影を実践しています。手術中に脳の運動機能と血管内の血流の流れを評価し、術後合併症が出現しないよう細心の注意を払って手術を行っております。

突然の激しい頭痛、手足のまひ、顔のまひ、言語障害などは脳卒中を疑わせる症状ですので、すぐに救急車を要請してください。

当院には、心臓外科・血管外科・循環器内科の3科が合同で運営する「循環器センター」および「末梢血管病センター」があります。

24時間365日体制で、狭心症心筋梗塞心不全不整脈高血圧などの循環器疾患、大動脈瘤・解離性大動脈瘤などの動脈性疾患・静脈瘤・静脈血栓症などの静脈性疾患の血管病疾患などに対応しています。また、常に横の連携を重視し、ハートチームカンファランスを毎週行い、患者さんに望ましいと考える治療方法を選択します。

また、日本心血管インターベンション学会の指導医をはじめとして、緊急カテーテル検査や冠動脈インターベンション(PCI)などのカテーテル治療を適確に実施する常勤医師は4名(2017年時点) 在籍しております。

当院の産婦人科は、福島県内に3カ所しかない日本産科婦人科内視鏡学会認定の研修施設です。産婦人科部長の矢澤 浩之医師は産婦人科領域における腹腔鏡下手術を黎明期から始めた草分け的な存在です。

当院では2001年から内視鏡下手術を積極的に取り入れ、2016年は221件 、2017年11月までに2,500件以上の手術実績があります。内視鏡下手術は、従来の開腹手術に比べて体への負担が少なく、手術後の痛みの軽減、早期離床、早期退院が期待できます。当科では子宮全摘、子宮筋腫、良性卵巣腫瘍などの疾患に対して、腹腔鏡手術を実施しております。

また、2014年11月より3D内視鏡も導入しています。3D内視鏡システムの立体視効果により、細かい手術操作がより正確で確実に行えるようになり、手術の精度と安全性の向上、手術時間の短縮が期待できます。

画像提供:福島赤十字病院

「声が出しにくい・声がかすれる」という音声障害と、「食事が飲み込めない・むせやすくなる」という嚥下障害は表裏一体の病気ですが、当院では双方の診断と治療を一貫して行っています。

音声障害の原因には、咽頭(声帯)に病変があるもの、一見して病変がないもの、心因的なものなど多種多様です。また、保育士さんや学校の先生など日頃から声を酷使する職業の方には声帯結節やポリープがよくみられるなど、音声障害の背景に患者さんの生活環境が深く関わっていることがあります。

嚥下障害の原因には、脳梗塞などの神経疾患や、食道がん甲状腺がんなどの腫瘍性病変などさまざまです。加齢による変化としても生じることがあります。当院では、咽頭内視鏡検査やCT・超音波検査などの画像検査を組み合わせて初期診断を行い、耳鼻咽喉科専門医、摂食・嚥下障害看護認定看護師および言語聴覚士がチームで治療にあたります。

口腔ケアやリハビリテーションで改善する場合もありますが、嚥下を改善する手術や誤嚥を防止する手術を行うこともあります。食事を口から摂取することは生きていくうえでとても重要なことです。

鼻・副鼻腔疾患は現代社会において増加傾向にある疾患であり、アレルギー性鼻炎は現代病ともいわれています。当センターでは、鼻腔内所見と画像検査や血液検査の結果、病理組織所見などを総合的に評価するようにしています。

副鼻腔の手術は9割以上が内視鏡下鼻内手術となっています。また、アレルギー性鼻炎の患者さんに対しては、初めは抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻薬が中心となります。内服薬でなかなか症状が抑えられない場合には、手術によって症状が劇的に軽くなる場合もあります。

完全治癒が期待できる体質改善を目的とした減感作療法の一つとして舌下免疫療法が開発されており、当センターでも対応を開始します。

より快適な日常生活を送っていただくために適した治療方法を、患者さん一人ひとりに対してオーダーメイドな治療を提供していきたいと考えています。

現在、当院に入院される80歳代の患者さんの約4人に1人は、認知症を患っています。人口の高齢化に伴い、認知症患者さんのさらなる増加が予想されます。認知症の多くは、残念ながら進行を止めることはできませんが、早めに気付いて対応すれば、患者さんにもご家族にとっても多くの恩恵があります。もの忘れを年のせいだからとして済ますのではなく、検査を受けてみることが大切です。

当院は、2014年10月より福島県から認知症疾患医療センターの指定を受け、地域型認知症疾患医療センターを開設しました。認知症疾患医療センターでは、認知症の早期診断、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)への対応、認知症を合併した身体の治療などを行っています。

身体合併症をお持ちの認知症や精神疾患患者さんに対する医療は当院の使命と考え、これからも積極的に行っていくつもりです。

画像提供:福島赤十字病院

当院は、2019年1月開院を目標に、病院の移転新築プロジェクトを進めております。新病院の敷地面積は17,740㎡、延床面積は24,802㎡です。病院棟は地上7階建ての鉄骨造りであり、免震構造です。

病床数は現在の348床から50床削減し298床になります。救急センターや循環器センター、脳卒中センターを構え、HCU 12床、救急病床12床、感染病床6床を設けます。ハイスペックな放射線機器として、CT(1台)、MRI(2台)、血管撮影装置 (2台)を整備し、これまで以上に救急医療、高度医療に力を注ぎます。

新病院のコンセプトとして、「わたしたちは、いのちと健康、尊厳を守るため、より良い医療を目指します。」という理念と、「福島の未来に安心と希望を」というキャッチフレーズを掲げています。職員一人ひとりが高いモチベーションをもって生き生きと働ける病院、ここで働きたいと思う人が集まるような良好な人間関係が築かれた病院、患者さんが信頼して集まる病院を目指し、良質な医療を提供してまいります。

画像提供:福島赤十字病院

みなさんは、たくさん勉強して、厳しい研修を経て、医師という誇りをもって、たくさんの患者さんに接することと思います。みなさんには、医師という社会性の高い職業に就いていることを自覚し、常に誠意をもって診療にあたっていただきたいと思います。医師は、病める人のために仕事をし、社会のために仕事をしています。これまでに学んだことを積極的に社会に還元してください。

ドイツのフーフェランドが書き、緒方洪庵が訳した「扶氏医戒之略」の次の言葉を、これから医師となるみなさんへ送ります。

 

一、医の世に生活するは人の為のみ、おのれがためにあらずということを其業の本旨とす。

安逸を思はず、名利を顧みず、唯おのれをすてて人を救はんとこを希ふべし

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