院長インタビュー

地域の皆さんに寄り添った存在でありたい——公立相馬総合病院

地域の皆さんに寄り添った存在でありたい——公立相馬総合病院
佐藤 雅彦 先生

公立相馬総合病院 院長

佐藤 雅彦 先生

目次
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福島県相馬市にある公立相馬総合病院は1970年に開業し、現在は主に福島県相双地域・宮城県南部地方の皆さんを対象に診療に従事しています(2020年3月時点)。地域密着の医療機関として医療サービスを提供することを重視している同院は、地域の開業医や三次救急病院との連携にも力を入れています。

同院の診療体制の特徴や今後の展望などについて、公立相馬総合病院の院長である佐藤(さとう) 雅彦(まさひこ)先生にお話を伺いました。

当院は、主に福島県相馬市・南相馬市、宮城県丸森町・亘理町・角田市などの住民の皆さんを対象として、当該地域の小児医療の中心的存在として診療しております。なかでもアレルギー・感染症の治療に力を入れ、小児救急にも積極的に取り組んでいます。

公立相馬総合病院 外観
公立相馬総合病院 外観

鼻水や発熱など一見すると軽い症状であっても親御さんは心配されると思います。そのような親御さんの不安を解消できるよう、小児の患者さんを可能な限り受け入れ、お子さんの病状・症状に応じた治療を行っています。

また、昨今問題となっている小児のアレルギーに関して、“アレルギーの克服”を合言葉にアレルギー医療の普及にも努めています。たとえば、食物アレルギーについては、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医が中心となって“経口免疫療法”を行っています。経口免疫療法とは、医師の監視下でアレルギー症状が出ない範囲内で、少しずつアレルギーの原因となる食品を食べさせながら、食物アレルギーへの耐性を獲得することを目指す治療法です。“子どもたちが安全に何でも食べられるように”ということを目標に、このような治療法に関する指導や啓発活動にも取り組んでいます。

小児科の診療の様子
小児科の診療の様子

循環器科では、急性心筋梗塞や心不全心房細動などの循環器急性疾患の患者さんを24時間体制で受け入れています。循環器疾患の治療は一刻も早い対応が救命の第一条件のため、急性冠症候群(不安定狭心症や急性心筋梗塞)に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)などは24時間、来院後90分以内にできるように院内システムを整えております。また冠動脈バイパス手術など、より専門的な治療が必要であれば仙台厚生病院・東北大学病院・福島県立医科大学附属病院といった医療機関へ迅速な紹介も行っています。また、当院では、生活の質の向上を目指して慢性心不全などの患者さんを対象とした心臓リハビリテーションにも対応しています。

心臓カテーテル室
心臓カテーテル室

消化器科では、内科・外科を問わず、胃・大腸・肝臓・胆嚢・膵臓といった消化器領域に関する病気に幅広く対応しています。たとえば、胃・大腸のポリープや早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に積極的に取り組んでいるほか、ESDで対応が難しい病気に対しては外科手術を行うことも可能です。外科手術も非開腹の手術も積極的に行っております。

泌尿器科では、検尿異常や尿路異常など泌尿器の病気の診療を行っています。当院が入院治療に対応できる環境が整っていることから、他院からの紹介で泌尿器科を受診される患者さんも多く、当地域での泌尿器科の中心的存在として診療にあたっています。また、院内に透析設備を備え、腎不全などでお困りの患者さんを対象とした透析療法にも対応しております。

透析設備
透析設備

当院では、地域の開業医の先生方に診療を協力していただき“平日夜間救急支援プラン(夜間支援体制)”を取り入れています。当院の場合19時~21時は、患者さんへの説明、診療の総括、カルテの作成などで常勤医は忙しい時間帯になります。そこで平日の19時~22時の時間帯に、地域の先生方(開業医)に診療をサポートしていただき、常勤医が忙しい時間帯でもスムーズに一次救急診療を行えるように体制を築いています。

また、当院では地域の開業医だけでなく、南相馬市立総合病院など近隣の二次医療機関や仙台厚生病院・福島県立医科大学附属病院・東北大学病院といった医療機関とも密に連携を取っており、当院に診療科がなく対応できない病気が発生したときや、重篤な病気が見つかった場合は、対応可能な医療機関へ迅速に紹介させていただいております。

総合受付
総合受付

当院は、日頃から積極的に地域の皆さんとコミュニケーションを取っています。地域の皆さんのご意見を参考にしながら、院内に小学生の絵を飾ったり、待合室の椅子をきれいに配置し直したりしております。こうした取り組みによって、病院という場所ではありますが、患者さん同士がお話ししたりお茶を飲んだりするなど、当院が地域のコミュニケーションの場所にもなっていると思います。また、月に1回、約15分間の医学講座を開催しており、ご好評いただいています。

医学講座の様子
医学講座の様子

当院では、次世代を担う総合診療医(ジェネラリスト)を育てるために、臨床研修医の受け入れを積極的に行っています。

医学講座の様子
研修会の様子

当院のように地域医療を担う病床数200床ほどの病院の場合、研修医の皆さんはさまざまな病気、重症度状態を診ることになります。かかりつけ医の視点そして二次救急病院の視点までを持たなければならず、介護から先進医療まで日本の医療の現状、問題点を知ることができると思います。また、内科・外科を問わず、さまざまな領域の病気を診なければならず、実践力も身につくでしょう。

臨床医が少ない分だけ指導医との距離も近く、相談しやすい環境が整っているため、医師として経験を積むにはよい場所だと思います。

佐藤雅彦先生

医療に関して何かお困りごとがあったときには当院でしっかりと対応する体制を築いておりますので、地域の皆さんには、この地で安心して生活していただきたいと思っています。お話ししたように、当院は、地域の開業医から大学病院までさまざまな医師・医療機関と連携を図っていますので、必要があれば専門の医師や医療機関へ紹介することも可能で、地方にいても必要な医療を受ける機会を逃すことはありません。

田舎といえども、医療に関しては都会に住んでいるのと同じくらいのレベルを保つように努力する所存ですので、安心してこの地域にお暮らしいただき、何か困ったことがあれば当院を頼っていただければと思っております。地域の皆さんに寄り添った病院として、職員一同“患者さんのお役に立ちたい”という気持ちで、精一杯診療に尽力させていただきます。

若手医師の皆さんには、“介護から先進医療まで、日本の医療の現在”を知ってほしいと思っています。当院は、地域に根ざした200床程度の病院として、さまざまな状態の患者さんに対応しています。当院で経験を積むということは、日本の医療の全体像を見るよい機会になるのではないでしょうか。

当院で学ぶことで“今後の日本の医療をどのようにすべきか”という、自分なりの考えが見えてくるのではないかと思います。さまざまな経験を積み、総合診療医になるのか、各診療科の専門医になるのか、ご自身の道を決めていただければ幸いです。

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