院長インタビュー

時代とともに発展を続ける札幌禎心会病院 

時代とともに発展を続ける札幌禎心会病院 
徳田 禎久 先生

社会医療法人禎心会  理事長、社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院  院長

徳田 禎久 先生

この記事の最終更新は2017年06月26日です。

社会医療法人禎心会札幌禎心会病院は札幌市東区に位置し、東区及び隣接する北区から多くの患者さんが来院しています。当院の脳神経外科には日本を代表する名医が在籍し、道内外から来院する患者さんもいます。開院当初より患者さんのニーズに合わせて変革を遂げて来た札幌禎心会病院は2015年に病院を新築移転し、新たな取り組みをはじめています。今回は札幌禎心会病院の取り組みと今後の展望について、札幌禎心会病院の院長であり、社会医療法人禎心会の理事長もお務めの徳田禎久先生にお話を伺いました。

札幌禎心会病院の外観

札幌禎心会病院は1984年に脳神経外科専門病院として「禎心会病院」の名称で開設し、3年後の1987年に医療法人禎心会(2010年に社会医療法人化)が発足、2015年11月には病院の新築移転に伴い「社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院」と改称しました。

社会医療法人禎心会は、医療から介護まで垂直連携で事業を展開する「医療・介護複合体」として、札幌、宗谷圏を中心に病院、クリニック、老人保健施設、訪問看護、訪問診療など全25事業(2017年4月現在)を運営しています。

当院は禎心会グループの中心的な存在として、他事業所と連携を図りながら診療を行っております。

当院は開院当初から地域の患者さん、住民のニーズに合わせて変化を遂げてきましたが、2012年以降最も大きな方向転換を果たしました。

まず、開院当初からの柱である脳卒中診療を強化するために脳卒中センターを開設し、24時間365日患者さんを受け入れる体制を整え、さらにセンター内に脳神経外科医養成のための「脳神経外科塾」を設立しました。 2015年からは、脳卒中に加え「がん虚血性心疾患」を含めた三大疾病をカバーできる新病院開設を実現させました。

次項からこれらの取り組みについて具体的にご紹介いたします。

2012年の脳卒中センター設置以来、徐々に救急患者さんが増加しており、搬送されてくる救急車の台数は年間約2800台で、ウォークイン(救急車ではなく車やタクシーなどで来院すること)の患者さんを含めると、年間約5500人以上の救急患者さんを診療しています。

また、当センターには全国的によく知られた、上山博康医師、谷川緑野医師をはじめとした優秀な医師が多数在籍しており、彼らの技術を求めて全国、また海外から来院する患者さんもいらっしゃいます。上山医師率いる「上山脳神経外科塾」にも、脳外科医としての高い専門スキルを身につけるため、多くの医師が当院に学びに来ています。

当院は開院当初より脳神経外科を中心に診療を行なっていましたが、三大疾病である「がん脳卒中虚血性心疾患」を総合的に診療する施設として2015年11月に新病院をオープンしました。

新病院の大きな特長は、同じ血管病変である脳卒中と循環器疾患において各診療科の医師が協働し、24時間365日体制で救急診療から一般診療までを行なっていることです。この診療体制は私が病院を開設した頃からの念願がかなった形であり、このような病院は札幌市内では当院しかありません。

当院では新病院の開設を契機に、がんの集学的診療を目指して体制も整えております。

新病院構想が始まった頃、放射線治療センター長が「放射線治療は患者さんの負担も少なく、治療効果が高いにもかかわらず、放射線治療を受けるがん患者さんの割合は欧米の60〜70%に対し、日本では30%程度という現状が大変悔しい」という話をしていました。センター長の言葉を受けて、新病院では、世界トップレベルの医療機関で使用されているリニアック治療機器の導入や、次に述べる陽子線治療を開始するなどして、最高レベルのがん放射線治療体制を整えました。化学療法・免疫療法は各診療科の垣根を越えて連携するために腫瘍内科で行う仕組みとし、患者さん毎に関連診療科が一堂に会して治療方針を検討する、集学的診療体制も構築しております。

陽子線治療

当院では患者さんに、より負担の少ない放射線治療を提供するために、2017年2月に陽子線治療センターを開設いたしました。

陽子線治療とは放射線治療の一種です。一般的に行われている放射線治療にはX線やガンマ線が使用されていますが、陽子線治療では陽子という水素の原子核を用いて治療を行います。特殊な装置で陽子を生成し、加速器で陽子線のエネルギーを高めることでがん細胞を破壊する仕組みです。

陽子線治療の最も大きな特徴は、陽子線が体内のがん細胞に到達した際にエネルギー量が最大となることです。通常の放射線治療では照射した体表面でエネルギー量が最大で、病巣ではエネルギー量が減少することと、周囲にも透過して正常組織に多少の影響が出るというデメリットがあります。しかし、陽子線治療はがん細胞をピンポイントで照射でき病巣から周囲への透過がないため、がん細胞以外の正常細胞を傷つけることなくがん細胞を最大のエネルギー量で破壊できるのです。

そのため陽子線治療は細胞が脆弱(ぜいじゃく)な小児に発生するがんには最適で、小児がんに対する陽子線治療は、保険診療として認められています。

現在、陽子線治療は保険収載されている疾患が少なく、先進医療となるため治療費も高額です。しかし、陽子線治療は副作用の出現率が大変低いうえに効果も実証されている治療法です。民間保険では先進医療特約(先進医療の費用が保障されるもの)も普及していますし当院では分割支払いも可能ですので、がん治療に悩まれている方にはぜひ受けていただきたい治療と考えます。

徳田禎久先生

当院は現在も発展途上の施設です。今後は診療科数や稼働病床数を増やす予定で、現在その準備を進めています。そのための人材確保に力を入れており、医師数は現在の46名から、将来は倍の人数に増員したいと考えています。看護師は着実に増員されており、新人の退職者数が非常に少ないことから、しっかりとした看護教育ができている証ではないかと自負しております。

高齢化に伴う要介護者増加の問題を受けて、予防事業の拡大も行なっていきます。これまで検診には重点を置いてきませんでしたが、2017年4月からは検診センターを開設し、一般の健康診断から人間ドッグや脳/膵臓癌/乳癌/子宮癌ドックなどの臓器別対応も含め幅広い検診を実施しています。

また、がん治療においては免疫治療も開始されましたが、血液がんを除く各臓器のがんに対して、最高レベルの治療が提供できる体制を整える必要があると考えています。

このように、これからも札幌禎心会病院はさらなる発展を目指しますが、最も大切にしていきたいことは、より一層の診療科の枠を超えた横断的な診療です。

診療の中心が複合病変を持つ高齢者となっている以上、急性発症した臓器だけを診るのではなく、すべての臓器の残存機能に目配りした診療が求められます。そのため、ひとつの診療科が専門的に診療を行うのではなく、これまで以上に各診療科の医師が協働して診療に当たるべきだと考えます。私は常に「院内連携を図り一人の患者さんをみんなで診療するように」と職員に伝えています。

札幌禎心会病院は、医療・介護複合体である禎心会グループの基幹病院として、地域の医療機関との今以上の水平連携も構築し、さらに良質な総合的診療ができる病院を目指し、努力してまいります。

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  • 社会医療法人禎心会  理事長、社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院  院長

    徳田 禎久 先生

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