院長インタビュー

岡山県倉敷市・倉敷中央病院の取り組み-志の高いスタッフと安心・安全の医療サービスを提供する

岡山県倉敷市・倉敷中央病院の取り組み-志の高いスタッフと安心・安全の医療サービスを提供する
山形 専 先生

倉敷中央病院 院長

山形 専 先生

この記事の最終更新は2017年05月24日です。

岡山県倉敷市に位置する倉敷中央病院は、地域密着の総合病院として、地域住民の方へ医療サービスを提供しています。患者本位の医療、全人医療、高度先進医療を基本理念としている倉敷中央病院。その実現には、充実した医療設備とともに、志の高いスタッフによるチーム医療が欠かせないそうです。「いかに安心・安全の医療サービスを提供していくかが最も大切である」と語る院長の山形 専先生に、同病院の取り組みや地域住民の方への思いをお話しいただきました。

倉敷中央病院は、1923年(大正12年)、倉敷紡績株式会社の社長である大原 孫三郎氏により創設された、長い歴史を持つ病院です。社会から得た富を社会に還元するという人道主義の考えのもと誕生し、当社は倉敷紡績株式会社の従業員のために創設されました。しかし、間もなく地域住民の方にも開放され、以降、地域の病院として広く住民の皆さんへ医療サービスを提供し今日にいたっています。

当院は、患者本位の医療、全人医療(知識・技術・人間愛を結集して総合的な医療をおこなうこと)、高度先進医療を基本理念としており、その実現に向けスタッフ一丸となり取り組んでいます。

写真提供:倉敷中央病院

私たちの病院の患者さんの8〜9割は、病院周辺の岡山県南西地区の方たちであり、地域密着型の病院といえるでしょう。私たちが位置する地域の二次医療圏(入院を含む医療の提供が求められる地域)には2017年現在、77万人ほどの住民がいますが、大規模な公立病院はありません。急性期の大型病院は当院と川崎医科大学附属病院の2つで、私立の倉敷成人病センターを加えた3つの病院が、この医療圏の約7割の患者さんを受け入れています。

私たちは総合病院として、以下の37の診療科を有しています。当院にない診療科を見つけることが困難なほど、あらゆる診療科を揃えており、すべての診療科において質の高い医療サービスを提供しています。

倉敷中央病院の診療科目

総合内科、消化器内科、循環器内科、神経内科、呼吸器内科、糖尿病内科、腎臓内科、血液内科、内分泌代謝・リウマチ内科、総合診療科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、脳卒中科、心臓血管外科、呼吸器外科、産婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、形成外科、美容外科、皮膚科、放射線診断科、放射線治療科、麻酔科、救急科、集中治療科、リハビリテーション科、緩和ケア科、臨床検査・感染症科、病理診断科、遺伝診療部、歯科(矯正歯科、小児歯科、歯科口腔科)

全29室の大規模な手術センター(写真提供:倉敷中央病院)

私たちは安心・安全の医療を患者さんに提供するために、必要な設備を整備することにも力を入れています。たとえば、当院では手術を年間約13,000件実施(2016年実績)しており、急性期病院として、あらゆる種類の手術に対応できるよう大規模な手術センターを設けています。この手術センターには全29室の手術室があり、難易度が高いといわれる手術にも対応できる環境を整えています。

手術センターには最新の設備が揃う(写真提供:倉敷中央病院)

また、病棟の地下には中央材料室という大規模な滅菌室を完備しており、感染を防止する体制を築いていますが、こういった患者さんから見えない場所にも大きく積極的な投資を行なっているのが当院の一つの特徴です。「いかに安心・安全な医療を患者さんに提供できるか」を常に模索し、実現してきた歴史は誇れるものと考えています。

私たちの病院には、医師や看護師を含め約3,000名のスタッフがいます。医師を含むスタッフの採用の際には、技術や能力はもちろんですが、当院が大切にしている価値観を共有できるかどうかを重視しています。それは、チームとして共に医療に取り組んでいきたいからです。特に、当院の基本理念である患者本位の医療や全人医療(知識・技術・人間愛を集結し総合的な医療を行うこと)に共感できるようなスタッフを採用するようにしています。

職員専用の交流エリア(写真提供:倉敷中央病院)

私は、当院で働くスタッフの成長を何よりも願っています。それは、スタッフの成長が、そのまま患者さんに提供する医療サービスの質につながるからです。そのため、私はスタッフ皆が「成長している」と感じることができる病院を目指しています。

当院が30年ほど前から取り組んできた改善活動もスタッフの成長を支援する一環です。改善活動とは、スタッフ自らが職場の課題を発見し、チームで改善に向け取り組む活動です。病院が抱える課題を解決することも大切ですが、スタッフが病院の改善に取り組むなかで、ともに成長していってほしいのです。そのように成長が感じられる病院であれば、切磋琢磨しながらよりよい医療の提供を目指すことができます。ほかにも、学会への参加費や必要となる図書費を病院で負担するなど、スタッフの成長のために積極的に支援をしています。

職員専用図書室(写真提供:倉敷中央病院)

職員専用図書室(写真提供:倉敷中央病院)

私たちは、お話ししてきたように規模の大きな総合病院です。このように大きな病院では一般的に横の連携が難しく、縦割りのシステムになってしまいかねません。しかし、患者さんは必ずしもひとつの診療科を受診すれば診療や治療が完了するわけではありません。複数の診療科を受診する必要がある方もいらっしゃるでしょう。

私は、たとえば複数の診療科の受診が必要であれば、それを調整し、スムーズに診療・治療を受けることができるシステムを提供したいと考えています。倉敷中央病院に来院していただければ、必要な診療や治療をすべて受けることができ、安心して帰ることができる体制を築きたいのです。病院が患者さんの診療や治療をトータルでコーディネートし、必要な医療を提供できるような体制を今後はさらに築いていきたいというのが、私の思いです。

現状では、病院内の横の連携を強化する取り組みとして、病院横断的にいくつかの組織をつくっています。たとえば、RRS(Rapid Response System)というチームでは、患者さんの急変を未然に防ぐため、麻酔科や循環器内科の医師などが活動しています。RRSとは、主に看護師が患者さんに対してなんらかの異変を感じた際に、対応を求めることができるチームのことです。患者さんの容体に少し違和感を感じるようなときに呼ぶことができ、急変による重篤な状態を未然に防ぐことにつながっています。ほかにも、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師などの多職種から構成され栄養状態改善のために取り組むNST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)や、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師から構成され感染制御に取り組むICT(Infection Control Team:感染対策チーム)などはどこの病院もありますが、この他にDIST(糖尿病サポートチーム)、PMT(周術期管理チーム)、DST(認知症ケアサポートチーム)など病院横断的にさまざまなチーム医療を実現しています。

当院は治療に緊急を要する患者さんを対象とした急性期病院であるため、地域の医療機関との連携は欠かせません。地域医療連携パスとは、当院と地域の医療機関で共有する治療計画書のことです。当院には退院支援の看護師やソーシャルワーカーが揃う入退院支援センターがあり、地域医療連携パスをもとに地域の医療機関と連携を実現しています。私たちは20年ほど前から連携を実施しており、顔の見える関係を築いている点がスムーズな連携につながっているのでしょう。さらに、この地域医療連携パスがあることで退院後の生活の見通しもつきますし、治療の必要がある場合は当院に戻ってくることもでき、患者さんにとっても安心につながっているのではないでしょうか。それぞれの得意分野を生かし、地域の医療機関と協力しながら今後もよりよい医療サービスを提供すべく取り組んでいきます。

倉敷中央病院のシンボルにもなっている、開放感のある温室(写真提供:倉敷中央病院)

倉敷中央病院のシンボルにもなっている、開放感のある温室(写真提供:倉敷中央病院)

医療の制度は、患者さんにとって複雑であると感じることがあるかもしれません。たとえば、我々のような急性期病院であれば、患者さんが予想していたよりも早めに退院していただくこともあります。もちろん最初にきちんと説明しますが、患者さんはそのような医療体制に疑問を持つこともあるかもしれません。しかし、現状の医療制度の中で、それはやむを得ないことであり、患者さんにとっても適切な医療機関に移動することは決して悪いことではないと考えています。

私は、なるべく制度を理解しながら上手に医療を受けることが、患者さん自身を救うと考えています。当院でも、患者さんと医療従事者の対話型講演会「わが街健康プロジェクト。」(市内を中心とした22医療機関の共催)の開催や、地域完結型医療について分かりやすくまとめた冊子「みんなのくらちゅう」を発刊して啓発活動にも取り組んでいます。

私たちは今後も志の高いスタッフとともに、安心・安全に医療サービスを提供するため地道に取り組んでいきます。医療体制を理解しながら、上手に我々を利用していただきたいと思っています。

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  • 倉敷中央病院 院長

    山形 専 先生

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