院長インタビュー

住民の目線に立った医療を提供したい―都内でも率先した地域連携を目指す慈恵第三病院

住民の目線に立った医療を提供したい―都内でも率先した地域連携を目指す慈恵第三病院
中村 敬 先生

東京慈恵会医科大学附属第三病院 院長

中村 敬 先生

この記事の最終更新は2017年09月15日です。

東京慈恵会医科大学附属 第三病院は1950年(昭和25年)に東京都狛江市に開院し、地域の医療を支えてきました。581の病床と23の診療科を構え、高度専門医療と救急医療を提供する一方、森田療法センターやリハビリテーション施設などの特徴的な診療も行っています。同院で、現在行っている取り組みや、今後の展望などについて、院長である中村 敬先生にお話を伺いました。

 

当院は、東京慈恵医科大学の4つの附属病院のうちのひとつです。

当院が位置しているのは、東京都狛江市であり、周辺の地域住民のみなさまへ急性期医療と総合医療を提供しています。スタッフ一同が心がけているのは、「共感と思いやりに基づく医療」です。

また、狛江市は高齢化が進んでおり、同大学附属の4病院のなかでも、ご高齢の患者さんの数がもっとも多いです。そのような地域特性も考慮しながら、地域連携を進めています。

 

森田療法とは、神経症やうつ病の患者さんなどに行われる治療です。東京慈恵会医科大学附属病院は、森田療法の創始者である森田 正馬先生が初代精神科教授を務めていた病院です。そのことから、当院は森田療法の入院施設を有していましたが,2007年には「森田療法センター」としてリニューアルされました。

ここでは患者さんの治療を行うだけでなく、森田療法に関する情報を世界に向けて発信しています。国外の専門家からも注目していただいており、医師や臨床心理士がプログラムを体験しにいらっしゃることもあります。

当院で治療を行った患者さんは、延べ2,000名以上です。改善率は、各疾患60〜70%を超え、医師や看護師、臨床心理士が協力して診療にあたっています。

 

当院の整形外科は、股関節疾患の治療を得意としています。ほかの同大学附属病院からも患者さんが紹介されてくるほか、海外の医師が手術の見学にいらっしゃるほどです。股関節外科を専門とする医師がいることが理由として挙げられますが、地域住民にご高齢の患者さんが多いということも関連しているでしょう。
行っている術式は、人工股関節置換術や再置換術、人工股関節に関わる合併症の治療などです。それらの手術以外にも、人工股関節を使わない関節温存手術も積極的に行っています。
また、股関節疾患の治療だけでなく、脊椎疾患の治療も多く行っています。脊椎が原因で起こるしびれや痛みに対しては、内服治療やブロック治療といった保存療法を行いますが、改善しなければ手術療法も行います。外来では、側湾症の専門外来を設けて、患者さんの診療にあたっています。

 

当院は、北多摩南部保健医療圏で高次脳機能障害支援拠点病院に指定されています。リハビリテーション科では、一般外来のほかに高次脳機能障害外来と装具外来も設けています。入院病床も27床を確保して診療を行っています。

高次脳機能障害のほか、廃用症候群に対するリハビリも全国に先駆けて積極的に行っています。どのくらいの介助が必要なのか、原因となる疾患があるのかどうかを見極め、生化学データも活用しながら、早期にリハビリを進めていく体制を整えています。

 

当院の手術室には、ハイテクナビゲーション手術に対応した部屋を1室設けています。これは、敷地内にある高次元医用画像工学研究所が持つ、世界でも有数の医用コンピューター画像技術を応用したものです。バーチャルリアリティ技術を手術に利用するという、世界でも初めての手術室になっています。

高次元医用画像研究所で処理した画像を、直接術野に映し出すことで、安全で効率的な手術を可能にしています。主に外科や耳鼻咽喉科、形成外科でこの技術を活用しています。

 

当院では、2000年(平成12年)4月から総合診療部という診療科を設けています。ここでは、臓器別に疾患をみるのではなく、すべての臓器や患者さんの背景も含めて、統合的に診断・治療を行っています。

初診外来では、どこの臓器に原因疾患があるのかわからない患者さんや、原因のわからない発熱などの症状が続いている患者さんを主に診察します。必要があれば、臓器別の専門診療科で治療を行います。

入院診療では、他の診療科と協力しながら診療にあたります。緩和医療チームや感染管理チーム、栄養サポートチームも参加しながら、患者さん中心の診療を心がけています。

 

総合診療部では、総合内科医という専門性を持った医師を育成していきたいと考えています。総合診療研修センターという研修施設を設け、患者さんの全身を統合的に診療できる力を身につけられるよう、研修を行っています。今後、専門医制度のプログラムもスタートさせる予定です。

総合診療に関心のある方、Common Disease(一般的な疾患)の診療を行いたいという方は、ぜひお越しいただければと思います。

 

当院は、2015年(平成27年)9月に東京都地域連携型認知症疾患医療センターとしての指定を受けました。このセンターで対応にあたっているのは、各診療科の医師をはじめ、認知症専門看護師、精神保健福祉士などです。診断・治療を行うだけでなく、専門知識を持った相談員が相談に応じたり、地域の医療機関や介護施設などと連携して対応したりしています。

外来の診療は、神経内科や精神科、脳神経外科の医師の連携した体制です。患者さんの状態によっては、互いの診療科に紹介をして、適切な診療に結び付けています。

また、2016年(平成28年)には、入院患者さんを対象とした認知症ケアチームを発足しました。院内の見回りを行い、認知症の疑いのある患者さんには早期に対応するようにしています。

 

中村 敬先生

当院は二次救急医療機関として指定されており、年間3,000件を超える救急搬送を受け入れています。現在、この救急体制の強化を行っているところです。常勤の医師が増え、受け入れ数も徐々に増加してきています。これからさらに充実するよう、取り組んでまいります。

 

当院は地域の中核を担う病院として、より地域に密着した医療を行いたいと考えています。「もっと地域へ」を合言葉に、地域で生活している方々に目を向け、その方たちの目線に立った医療を提供したいと思っています。都内では地域連携が未だ十分ではありません。当院が先駆けとなり、地域連携を行っていきたいと考えています。

2020年ごろには、新病棟の着工も予定しています。当院の位置する狛江市や、隣の調布市・世田谷区からも関心を集めているため、行政と協力しながらまちづくりに参画してまいります。

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  • 東京慈恵会医科大学附属第三病院 院長

    中村 敬 先生

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