院長インタビュー

「全人医療で、人々のからだ・こころ・たましいを支える」淀川キリスト教病院

「全人医療で、人々のからだ・こころ・たましいを支える」淀川キリスト教病院
渡辺 直也 先生

淀川キリスト教病院 院長

渡辺 直也 先生

この記事の最終更新は2017年05月18日です。

大阪府大阪市東淀川区にある淀川キリスト教病院は、1955年に米国長老教会の医療宣教師フランク・A・ブラウン初代院長によって創立され、これまで多くの患者さんとその家族をサポートしてきました。キリスト教を柱とする病院ではありますが、それに偏らず地域の方々に高度であたたかな医療を提供しています。そんな同院が大切にしている理念や独自の取り組みについて、院長の渡辺直也先生にお話を伺いました。

当院は581床、35の幅広い診療科を備え、様々な疾患についてサポートできる体制を整えています。患者さんはおもに東淀川区・淀川区から、他にも吹田・摂津・豊中などの近隣エリアから来院されます。交通アクセスも良好のため、神戸や京都からお越しになる患者さんもいます。

淀川キリスト病院の外観

淀川キリスト教病院の内観 写真提供:淀川キリスト教病院

当院の救急科は、集中治療室と一体運営し、24時間365日体制で高度な医療サービスを提供しています。月におよそ600台の救急車を受け入れており、今後さらに救急医療のニーズが高まると想定されるなかで、地域において最も信頼される医療機関であり続けたいと考えています。

当院は、キリスト教の精神に基づき運営を行っています。もちろん、患者さんにキリスト教の信仰者であることを要求はしません。患者さんの中には仏教やイスラム教を信仰する方々もおり、他の宗教にも寛容です。当院の職員においては、クリスチャンの比率は10%弱です。地域の方々には、信仰する宗教に関わらず安心して当院を受診していただけたらと思います。

当院は「チャペルを中心とした癒しの病院」をコンセプトに2012年7月に柴島のちに新築移転し、4〜9階まで吹き抜けの大きなチャペルを備えています。毎朝、職員が「全人医療」の理念を再確認する場所であるとともに、24時間一般の方々に解放された空間でもあります。また病院専属の牧師であるチャプレンが常駐しており、患者さんのこころとたましいのケアをサポートする役割を担っています。

淀川キリスト教病院内のチャペル

淀川キリスト教病院内のチャペル 写真提供:淀川キリスト教病院

当院は1955年の創立当初から、キリスト教の精神に基づき人間をからだ・こころ・たましいをもった全人(人間)と考え、キリストの愛をもって仕える「全人医療」を行ってきました。つまり患者さんの病気だけを診るのではなく、その方の心理状況や社会的側面などにも配慮し、それぞれに適切なケアを行うのです。現在は日本各地に全人医療という言葉は広まり、その価値が新たに重要視されていることを感じます。

当院の掲げる「全人医療」には、人のからだ・こころ・たましいに寄り添う側面と、もう1つ、人の人生におけるあらゆる時期をサポートする側面があります。つまり、人が産まれるとき(周産期)、成長するとき(小児)、健康なとき(予防医学・健診)、病気になったとき(手術などの治療・救急)、死を迎えるとき(緩和ケア)、これら全てに関してサポートすることを理想とし、あらゆる取り組みを行っています。

当院は、3M(mission/ money/ management)のバランスを良好に保つことを大切にしています。病院の運営において、ミッション(使命)を持ち、それを叶えるためのマネー(資金)を保持し、円滑にマネージメント(管理運営)することは、良質な医療を提供していくために大切な条件だと考えます。この3Mのバランスが良好に保たれることで、適切な医療提供が可能になります。その結果として当院では、早くからホスピスやこどもホスピスの取り組みを行いました。

当院では、内視鏡や腹腔鏡を用いた低侵襲手術(体の負担が少なく、退院まで短期間の手術)を積極的に行っています。患者さんの心身の負担を減らし、退院までの時間が短くなることで、より多くの患者さんを治療できる体制を整えています。2017年春には子宮がん子宮筋腫など婦人科疾患についても、内視鏡手術が始まる予定です。

高度先進医療による治療を積極的に導入し、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ®」を用いた高度な内視鏡手術や、再生医療などを行っています。再生医療では、小児科において新生児脳症に対する「自己臍帯血幹細胞治療」の臨床研究を行っています。

ダヴィンチを用いた手術の様子

ダ・ヴィンチを用いた手術の様子 写真提供:淀川キリスト教病院

1973年、現理事長の柏木哲夫医師がアメリカで学んだOCDP(Organized Care of Dying Patient:死を迎える患者さんへの組織的ケア)の活動を開始し、1984年に日本で2番目となるホスピス病棟を開設しました。

ホスピス病棟デイコーナー

ホスピス病棟デイコーナー 写真提供:淀川キリスト教病院

ホスピスとは、がんなどで終末期を迎えた患者さんを対象に、安らぎと尊厳を持って過ごせる環境を整えるケア病棟です。具体的にはからだのケア(肉体的な痛み・息苦しさの緩和)、こころのケア(精神的な不安)、たましいのケア(尊厳ある生活へのサポート)、ご家族への援助などを行います。

2012年に、アジア初となる「こどもホスピス」を設立しました。

(1) 子どもの苦しさを和らげる

病気や障害を持つ子どもは、体の痛みの他に、本来過ごせるはずの時間を制限されるつらさを感じます。学校に通えない・友人に会えない・外で遊べないといった状況は、子どもにとって精神的なストレスになり得ます。こどもホスピスは、子どもが教育や遊び、芸術などの経験を通し、のびのびと成長できるようサポートします。

(2)家族が休息できる時間を提供する

病気や障害を持つ子どもを支える家族は、日々の不安や緊張で、心身ともに疲弊していることがあります。そのような家族が休息する時間を得られるよう、子どもの短期入院(レスパイト)を受け入れる病床を備えています。その用途は家族の休息の他に、冠婚葬祭、家族の病気・治療、出産、きょうだい支援などさまざまです。

こどもホスピス病棟

こどもホスピス病棟 写真提供:淀川キリスト教病院

地域の中心にいるのは、住民の方々であり、患者さんです。当院は、その一人ひとりを様々な面からサポートできる存在でありたいと考えます。

少し前まで地域内の病院は競い合っていました。しかし現在では「地域包括ケア」の考え方が全国的に浸透し、地域内の連携力を高め、機能分化した上で支え合う動きが高まっています。例えば当院は、近隣の医療機関と協力し、地域の救急医療体制を整えています。広範囲でつながり、救急の患者さんの受け入れを分担することで、ベッドの満床による受け入れ不可を解消し、お互いの強みとする専門分野を活かして治療にあたることが可能になりました。

当院は、地域の在宅医療連携、東淀川区の特性を活かした地域包括ケアの推進を目的とした「こぶしネット」の活動をサポートしています。高齢者の方々が住みやすい街をつくるために、さまざまな職種から関係者が集い、医療・介護・行政の視点で在宅医療の将来を議論し、協力して実行しています。

全国的な医療の傾向として、地域内で病院ごとの特色を活かす機能分化の動きが進んでいます。1つの病院でできることには限りがありますから、地域内で良い医療を提供するためにはネットワークを構築し協力体制を維持することが大切です。その中で当院は、地域内の救急を担う医療機関でありたいと考えます。がんなど大きな病気や急病など、いざというときに迅速かつ適切な治療を提供できる病院として、今後も地域の方々を守ります。

地域の方々には、是非かかりつけ医(身近にいる主治医)を持っていただきたいと考えています。なぜなら、かかりつけ医は患者さんそれぞれの健康状態を把握する存在になり、緊急事態が発生したとき・重大な疾患になったときに迅速かつ適切な診断を下すことができるからです。当院を初診する際にも、かかりつけ医からの紹介状があれば、その後の治療のために理想的だと考えています。

当院は長い歴史の中で、キリスト教の精神を礎に地域の方々をサポートしてきました。良い医療を、本当に必要な方々に提供するために、当院の機能を充実させ地域内の連携力を高めていきたいと考えます。そして今後も、患者さんとその家族を支える全人医療を徹底していきたいと考えます。

渡辺直也先生

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