院長インタビュー

命の灯をともして地域の方々を守り続ける高槻赤十字病院の取り組み

命の灯をともして地域の方々を守り続ける高槻赤十字病院の取り組み
古川 福実 先生

高槻赤十字病院 名誉院長、同顧問/皮膚・形成外科センター長

古川 福実 先生

この記事の最終更新は2017年08月09日です。

高槻赤十字病院(大阪府高槻市)は日本赤十字社の使命を背負う病院として、「あらゆる状況下において人間の苦痛を予防し軽減すること」を第一に考えた医療を理念に掲げる地域の中核病院です。高槻の地域の方々がいつでも頼ることのでき、24時間365日体制で高槻のまちを守り続ける病院を実現するために、治療=cure(キュア)と看護・介護=care(ケア)を両輪に据えた診療に取り組んでおり、十分な医師数を確保して一人一人の患者さんに向き合っています。2017年4月より病院長を務めておられる古川福実先生に、高槻赤十字病院の特色についてお話しいただきます。

高槻赤十字病院外観

高槻赤十字病院は、1941年(昭和16年)に日本赤十字社大阪支部病院分院の「阿武野勝景園」として設立されました。1942年には戦争に伴い大阪陸軍病院阿武野赤十字病院と改称され、主に戦傷した陸軍の治療をする役割を担いました。終戦後の1948年に外来診療棟が完成し、559もの結核病床を構える結核病院として、数多くの結核の患者さんの治療を行ってきたという歴史があります。

さらに緩和ケア病棟や訪問看護ステーションの開設など、高槻市に住む地域住民に寄り添った医療を提供するための施設や設備を徐々に導入し、2017年現在は446床を構える総合病院として高槻市阿武野地域の健康を支えています。

当院は、2011年(平成23年)11月25日に地域医療支援病院として大阪府に承認を受けました。

地域医療支援病院とは、かかりつけ医の支援や地域医療そのものの充実のために、救急や急性期医療、入院管理などの中核的な医療体制を整えている病院を指します。地域医療支援病院があることで、その地域に住む患者さんは大都市に出ることなく、地域内で完結した医療を受けることが可能になります。

一般的に地域医療支援病院には、救急医療の提供、かかりつけ医から紹介を受けた患者さんの受け入れおよびかかりつけ医への患者さんの逆紹介、施設の共同利用、地域の医療従事者に対する研修などの役割があります。

当院では、高槻市や茨木市と三島地域にお住まいの患者さんにとってより満足度の高い医療を提供するために、地域の開業病院や、かかりつけ医の先生方とともに質の高い地域医療を行っています。たとえば、定期的な外来通院や投薬管理、日常生活のサポートなど日々の患者さんの健康管理は地域の開業医の役割です。一方、より介入が必要な患者さんをかかりつけ医がみつけた場合は直ちに当院に紹介いただき、当院にて精密検査や入院治療、手術などを実施します。当院が地域医療支援病院として中核的存在になることで、地域医療機関と当院の機能・役割分担が実現し、地域完結型の医療を提供できるのです。

当院では、がん診療を単なる治療ととらえず、多くの専門スタッフや地域医療機関と相互に連携しながら総合的な医療を実施し、がん患者さんをサポートします。

当院におけるがん診療は、手術や放射線などの治療をはじめ、終末期医療を行う緩和ケア病棟及び緩和ケア診療科、がん相談支援センター、セカンドオピニオン(地域医療連携室)、認定看護師の設置など、非常に充実した体制でがん患者さんを受け入れています。

高槻赤十字病院 緩和ケア病棟

放射線治療は手術に比べて臓器の形態・機能温存が望める一方、手術ができない部位のがんにも治療を行える特徴があります。また、がんのタイプによっては外来通院での治療も可能です。当院は2010年より、この外部放射線治療装置を導入しました。

放射線治療にあたり、当院は京都大学医学部付属病院との連携体制を強化し、専門医による入念な診察・治療計画の構築と、複数名の放射線技師によるダブルチェックを徹底して行い、安全かつ確実な放射線治療ができる体制になっています。

当院における放射線照射は、従来の方法であった皮膚ライン合わせのみならず、より高精度の画像照合装置を用いており、位置のずれが小さいことが特徴です。

がん患者さんとそのご家族の不安・悩みに関する相談を受けるよろず相談(個別)、患者さん同士が交流する場であるがん患者サロンを設置しています。よろず相談の相談内容は病気の治療から仕事、生活、漠然とした不安など、どのようなことでも構いません。がん看護専門看護師・緩和ケア認定看護師・医療ソーシャルワーカーといった専門スタッフが丁寧に対応します。

当院には、がん看護の専門知識・技術を持つがん専門看護師と、緩和ケアにおいて熟練の技術と知識を保有していることを国に認められている認定看護師の双方がいます。看護師は、患者さんが治療を受けるなかで最も身近な医療従事者であり、重要な存在です。当院はこうした看護師を積極的に採用し、充実した看護体制を整えています。

当院では、従来から糖尿病診療に強みがあり、さまざまな角度から糖尿病の治療・予防活動を行っています。

糖尿病の一般的な治療はもちろん、糖尿病の患者さんが治療に後ろ向きになったり、食べる楽しみを失ったりしないよう、さまざまな工夫を施しています。たとえば、毎月院内で開催される糖尿病教室で試食会をひらき、その糖尿病食のレシピを病院のHP上などで紹介したり、一人一人の患者さんの生活習慣に合わせた治療法を考案するための糖尿病教育入院(1週間)を行ったりと、患者さんのQOL(生活の質)を第一に考えた治療を実施していることが特徴です。

7月の糖尿病教室のメニューは“魚のトマトソースかけ”“洋風サラダ”“野菜スープ”“季節の果物(メロン)”でした。バランスの整った、塩分控えめで食物繊維豊富な献立になっています。

2014年より、地域の中高生を対象にした医療体験セミナーを開始しました。このセミナーは日本の未来の医療を支える子どもたちに、医師の仕事内容を体験してもらうことが目的です。参加者は私たちが実際に使用しているガウンに着替え、手術の縫合や内視鏡(胃・大腸カメラ)、最新医療機器を体験していただく予定です。

こうした取り組みをすることで、地域のみなさんに高槻赤十字病院を知っていただき、なおかついつでも当院を思い出していただけるような関係を築きたいと考えています。

2017年7月24日、高槻赤十字病院の赤十字マークが再び点灯し、まちはあたたかな赤色の光に照らされました。

町の夜空を照らす高槻赤十字病院の赤十字マーク

近場では、よりくっきりと赤十字マークが浮かび上がる

赤十字マークは国際的に定められている法律で “絶対に攻撃を加えてはならない”と定められており、その使用についても厳格な基準が設けられています。かつて、この赤十字マークの灯りを頼りにして、遠方から多くの患者さんが当院や近隣病院に運ばれてきたといいます。赤十字マークは、この地域の方々にとって命の灯なのです。しかし設備故障が原因で、この赤十字マークが長年点灯できずにいたのです。

この灯だけは消してはならないと考えた私は、院長に就任してからすぐさま修理を開始しました。そして先日、患者さんや職員、工事担当者の方々のご協力のおかげで、再び命の灯が復活したのです。

赤十字マークの点灯ボタンを押す古川福実先生

高槻赤十字病院はこのほか、解決すべき課題をいくつか抱えています。戦前からある施設ということもあり、医療機器などの設備が古いことが課題のひとつだと考えていますが、予算の関係上すぐに改善することは難しいでしょう。

私は2017年4月1日に院長に赴任して、病院の新築移転を公約に掲げました。数年後の新築移転を目標に設定することで、職員も希望を持って働くことができると考えたのです。当院の魅力や強みを残しつつ、新しく生まれ変わらせるために、全力で病院運営を行っていく覚悟でいます。

歴代の職員や多くの方々に見守られてきた赤十字マークを再点灯させたことで、高槻赤十字病院は新しいスタートを切りました。今後も高槻市を明るく照らす「命の灯」を輝かせて、患者さんが心から頼ることのできる病院をつくりたいと考えます。

 

※記事内の画像はすべて高槻赤十字病院ご提供のものです。

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  • 高槻赤十字病院 名誉院長、同顧問/皮膚・形成外科センター長

    古川 福実 先生

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