院長インタビュー

専門病院から地域に開かれた病院へ-大阪はびきの医療センターの取り組み

専門病院から地域に開かれた病院へ-大阪はびきの医療センターの取り組み
太田 三徳 先生

大阪はびきの医療センター 院長

太田 三徳 先生

この記事の最終更新は2018年03月06日です。

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センターは、1952年に大阪府羽曳野市に結核療養所として設立され、現在まで難治性呼吸器疾患およびアレルギー疾患を専門とした診療を行ってきました。近年、それに加えて地域住民への幅広い診療を提供する医療機関へと変化を遂げています。同院の取り組みや今後の展望について院長である太田 三徳先生にお話を伺いました。

当院は、2017年4月に「大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター」から、「大阪はびきの医療センター」へ改称しました。その理由は、2006年頃までは呼吸器、感染症およびアレルギー疾患を中心に診療していましたが、その頃から消化器や循環器、産婦人科の患者さんが増えてきたためです。更に2010年に大阪府のがん拠点病院(肺がん)に指定されると、消化器、乳腺、婦人科など各種がん治療を受ける患者さんも増加してきました。2016年からは救急医療の提供を開始し、2017年からは耳鼻咽喉科も開設となりました。

この様に、専門領域だけでなく幅広い疾患に対応する、地域に開かれた医療機関へと変化して、今後もさらに進化していくことを地域のみなさまに知っていただくために、名称変更を行いました。

当院が設置している呼吸ケア、腫瘍、感染症、アトピー・アレルギーの4つの院内センターでは、診療科間の垣根を超えた連携体制を構築して多様な疾患に対応しています。

呼吸ケアセンターでは、慢性閉塞性肺疾患COPD)や間質性肺炎・肺線維症などの慢性呼吸器不全の患者さんを中心に診療を行っています。一般の重症市中肺炎などの急性期治療も感染症センターと共に担っています。

進行した慢性呼吸不全に対する在宅酸素療法は、保険適応が認められた1985年以後、毎月250名以上の方をケアしています。在宅酸素療法を開始する患者さんには呼吸器認定看護師が退院時に自宅へ伺い、機器の設置場所や住居設備の確認、入浴法の説明などを行っています。在宅人工呼吸の患者さんでは、医師や専門看護師が定期的に訪問し呼吸器の調整と診察を行っています。

腫瘍センターでは大阪府のがん診療連携拠点病院(肺がん)として、肺がんだけでなく内科、外科、産婦人科、放射線科の各診療科が連携し、各種のがんの診断・治療・緩和ケアを提供しています。手術例を含む肺がん患者数は年間800件以上、消化器がん乳がんはそれぞれ70件以上、子宮がん卵巣がんは約200件です。肺がんの診断では蛍光気管支内視鏡や凍結生検法などの最新の機器を導入しています。また、がんの内科治療では、外来での抗がん剤治療が増える傾向にあり、外来化学療法室では、がん看護とがん化学療法の専門看護師が医師と共に治療にあたっています。

がんにともなう身体的・精神的な苦痛を和らげる緩和ケアの実施のために、専門知識を有する医師のほか、薬剤師、看護師、臨床心理士からなるチームが編成され、定期的な病棟回診を行っています。

↑最新型放射線治療装置『True Beam®』

ここでは、アトピー性皮膚炎食物アレルギー難治性喘息花粉症などのさまざまなアレルギー疾患に対応しています。

アトピー性皮膚炎は治療とともに、患者教室に力を入れています。乳幼児アトピー教室はアトピー性皮膚炎のお子さんをもつ保護者の方を対象としています。アトピーサマースクールは夏休み中の小・中学生を対象に、アトピーカレッジは高校生以上を対象としています。いずれも2週間の教育と治療入院です。

食物アレルギーに対しては、小児科を中心に原因食物の同定と食べられる量を決める食物チャレンジテストと治療のための経口免疫療法を行っています。また、保護者の方のためには管理栄養士がアレルギー除去食の調理実習と試食会を開催しています。

難治性喘息に対しては、2016年からサーモプラスティ治療を年間数名の患者さんに施行しています。これは高度な気管支鏡の技術を用いて、狭くなった気管支を熱処理して喘息発作を抑える方法です。

感染症センターは、結核や結核に併発した病気、肺真菌症のほか、新型インフルエンザエイズなどの新興感染症の診療をしています。

大阪府の結核罹患率は全国1位であるため、対面して服薬を確認する指導法や行政と協力して保健所や医療施設での教育と相談に取り組んでいます。

また、大阪府南部の30の医療機関と感染症連携体制を築いて、相互に感染症体制を改善する取り組みを行っています。

産婦人科は5名の常勤医と非常勤の応援医師、および27名の助産師で年間約1,000件の分娩を受けています。3床のNICU(新生児集中治療室)を併設し、小児科を中心に質の高い周産期医療を提供しています。また、子宮筋腫子宮がんなどの婦人科疾患の手術も、年間約400名に実施しています。

乳腺センターは、2011年から羽曳野市の乳がんの検診を中心に、診断と手術、抗がん剤治療を行っています。甲状腺の手術例も増加していますが、特に乳がんの手術は毎年10名以上増加し、2017年には70名以上に実施しました。現在増加傾向にある乳がん、子宮がんなどの婦人科疾患を婦人科と共に総合的に担当しています。

小児科は以前の小児喘息や小児結核から、食物アレルギーへと診療の領域を広げています。食物アレルギーの治療についてはアトピー・アレルギーセンターの項で説明しましたが、それ以外に、長期の入院児や食物アレルギー児などと1年に3回「自然とふれあう野外活動」を海浜学校や林間学校の形で実施しています。

耳鼻咽喉科の開設は、この南河内医療圏で入院と手術治療のできる施設が少ないために長らく期待されていました。2017年4月に開設したところ近隣の医院・病院から多数の紹介があり、8ヶ月間で100名以上の手術を行いました。多数のアレルギー性の鼻腔疾患の方も受診されており、今後も人材、設備とも拡充して地域の要望に応えていきます。

2016年10月に地域包括ケア病棟を開設しました。この病棟では、一般急性期病棟での入院治療後に自宅に復帰する方や、自宅または介護施設から急激に病状が悪化して入院治療した後に復帰する方に対して、リハビリテーションを行い身体機能の回復を図り、自宅あるいは施設への復帰を支援しています。

退院される患者さんへの手厚い支援が特徴の病棟です。

今日まで当センターは、呼吸器疾患とアレルギー疾患の専門医療を中心として、時代の移り変わりとともに地域から求められる一般医療を提供してまいりました。今後、人口減少と少子化、高齢化という社会情勢のなかで私達はこれまでよりも積極的に地域医療を充実させ、包括ケアを提供していこうとしています。新病院建設の計画もそのような体制へと変わっていく大きなチャンスとなるでしょう。

当センターはこれからも呼吸器とアレルギー疾患診療とともに一般医療を充実させて、なお一層府民と地域住民に開かれた病院として、丁寧な医療の提供を目指してまいります。

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