院長インタビュー

地域の高度急性期医療を担い、広島県最多の手術数を誇る広島市立広島市民病院

地域の高度急性期医療を担い、広島県最多の手術数を誇る広島市立広島市民病院
荒木 康之 先生

広島市立広島市民病院  院長

荒木 康之 先生

この記事の最終更新は2018年01月10日です。

地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院は、最新医療機器と高い手技を持つ医師がそろう総合病院です。広島県広島市中区に位置する同院は、広島駅から徒歩7分と交通アクセスもよく、多くの患者さんがいらっしゃいます。1952年に診療科4科、病床数89床を構える病院として診療を始めました。2006年から2008年のあいだには大幅な施設増築や設備拡充を行い、救急医療体制の充実を図りました。広島市から地方独立行政法人広島市立病院機構に運営移行した2014年に現在の体制が整いました。

循環器分野を中心として広島市の高度医療を支えてきた同院の院長である荒木 康之先生に、病院の特徴などについてお話を伺いました。

広島市の中核病院である当院は、高度急性期医療に特化した病院です。病床数は743床(一般病床715床・精神病床28床)、診療科を35科有しているほか、ダヴィンチやハイブリッド手術室など、最先端の設備を整えています。

当院では手術室を16室確保しており、2016年の手術件数は約9,300件でした。また、カテーテル治療も多数実施しました。この手術件数、カテーテル治療件数は、ともに広島県内において最多であり、カテーテル検査、がん治療、小児の循環器疾患治療なども全国トップクラスの症例数を誇ります。2017年度は手術数9,800件を目標に掲げています。

当院の最大の強みは、循環器分野(循環器内科・心臓血管外科・循環器小児科)です。この循環器グループが提供している高度先進医療は、国内でも名高い存在であり、県外からも数多くの患者さんがいらっしゃいます。さらに、ハイブリッド手術室の導入やTAVI(経皮的大動脈弁移植術)の実施もいち早く行いました。くわえて、当院の総合周産期母子医療センター、がん治療、ER型救急も特色豊かな分野です。

当院の循環器内科では年間3,000名以上の患者さんに対して個々の病態に合わせたオーダーメイド医療を提供しています。

虚血性心疾患や末梢血管疾患など動脈硬化性疾患に対して

冠動脈カテーテル治療、末梢血管カテーテル治療を数多く実施しています。心臓カテーテル検査数は約3,000例、カテーテルによる血管内治療数は約1,000例の実績があり、国内屈指の症例数があるほか、急性冠症候群に対する救急医療にも注力しています。虚血性心疾患の治療では、冠動脈レーザー治療を導入したことで複雑な病変にも対応可能となりました。閉塞性動脈硬化症などの末梢血管疾患に対しては、心臓血管外科と連携して、低侵襲かつ最新のカテーテル治療やハイブリッド治療を行っています。また、先駆的な取り組みとして薬物溶出性バルーンを使用開始したため、ステント内再狭窄、複雑病変の治療成績が向上すると見込んでいます。そのほか、血管内超音波、血管内視鏡、OCT(近赤外線干渉波)、FFR(冠血流予備能)など最先端の検査を行っています。

不整脈疾患に対して

不整脈疾患などに対して行うカテーテルアブレーションの治療総数は、年間250例を超えます。さらに、心房細動に対するカテーテルアブレーションと心不全に対するペースメーカーを用いた心室再同期療法も導入しています。ペースメーカー植え込み術においては、植え込み型除細動器(ICD)、心室再同期療法(CRT)を行っています。また、この10年間特に力を入れているのは心房細動に対するアブレーションであり、難治性疾患であった慢性心房細動の治療実績が向上しています。

心不全や弁膜症に対して

心不全に対しては、重症度に応じて、薬物治療から心室再同期療法まで幅広い治療を提供しており、人工心臓を導入した症例もあります。弁膜症に対しては、TAVI(経皮的大動脈弁移植術)を前提とした、経皮的大動脈弁拡張術も実施しています。TAVIについては、大動脈弁膜症にくわえて、僧帽弁膜症にも応用していく予定です。

救急医療に対して

当院の救命救急センターは、伝統的に循環器疾患の救急医療に取り組んできました。現在も心筋梗塞脳卒中をはじめとした救急患者さんの救命に尽力しています。また、CPA(心肺停止)に対しては低体温療法やPCPS(経皮的人工心肺)などを用いた治療を行い、社会復帰した患者さんも少なくありません。

1959年(昭和34年)より心臓手術を開始した同科は、全国的にも歴史ある診療科です。心臓・胸部大動脈手術症例数は累計10,100例を超えています。また、循環器小児科や麻酔科とも連携しており、新生児から90歳以上の高齢者まで年齢を問わずに外科的治療を行っています。手術の対象は、先天性心疾患、虚血性心疾患、弁膜症、大動脈瘤、末梢血管疾患などあらゆる循環器疾患に対応しています。くわえて、ハイブリッド手術室を設けていることや、TAVI(経皮的大動脈弁移植術)を実施していることは同科の特色でもあります。

先天性心疾患に対して

複雑心奇形(ファロー四徴症、房室中隔欠損症、大血管転位症など)に対する手術成績が良好なほか、左心低形成症候群に対するノルウッド手術などの成功例も増加しています。心房中隔欠損症に対する右開胸手術も積極的に行っています。

後天性心疾患に対して

重症疾患の患者さんは年々増加していますが、安定した手術成績を残しています。心拍動下手術、弁膜症手術、高齢化にともなう大動脈弁置換術そのほか、単独冠動脈バイパス術、心房細動に対しては僧帽弁形成術やメイズ手術にくわえて右開胸による僧帽弁形成術も開始しました。

血管疾患に対して

末梢動脈疾患に対しての血管内治療は主に循環器内科が治療をしています。しかし、外科的血行再建術が必要な場合は、心臓血管外科が対応しています。

大動脈疾患に対して

大動脈疾患に対する手術数も近年著しく増加しています。特に胸部大動脈手術が多く、手術成績も国内有数です。また、胸部広範囲脈瘤に対する手術方法(ALPS法)を考案しました。そのほか、低侵襲である、腹部大動脈瘤および胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿手術も順調に増えていることにくわえて、ハイブリッド手術室の導入によって、より高度で安全な手術が可能になり、合併症症例やご高齢の患者さんの手術にも効果を示しています。

循環器小児科では心奇形を中心として、先天性心疾患、不整脈、川崎病心筋症などを診療対象としています。心臓カテーテル検査・治療件数は全国トップレベルであり、広島県のみならず、他県からも患者さんがいらっしゃいます。また、小児循環器領域では専門医制度が導入され、修練施設としても認定されており、教育にも力を入れています。

高度ながん治療を行っている当院で、特に多いのは乳がん胃がん大腸がんです。そのほか、肺がんや肝臓がん、消化器などのがんをはじめとした、あらゆるがんに対応しています。ダヴィンチを保有していることもあり、前立腺がん治療の実績も豊富で、見学施設としての指定を受けています。外来化学療法は年間約8,000例、放射線療法は年間約700例実施しています。

当院では周産期医療にも力を入れています。異常分娩を積極的に診ていることにくわえ、正常分娩の数も数多くあります。産まれた新生児へのケアも怠りません。未熟児に対しても、高度で適切な処置をしています。

ER型の救急医療で、一次救急から三次救急まで幅広い疾患の治療にあたっています。当院の柱である、循環器分野の緊急手術はもちろんのこと、多岐にわたる分野の手術を迅速に行っています。

初期・後期研修医、どちらにもいえることですが、当院の研修環境は非常に魅力的です。各分野で国内屈指の症例数を誇る診療科が数多くあり、幅広い症例を経験できます。ER型救急もあるため、コモンディディーズ(一般的な疾患)から、高度で専門的な治療もできます。また、特にERの場合は若い先生のエネルギーを必要としています。さまざまな疾患や一次救急から三次救急に対して迅速な判断が求められるため、簡単な仕事ではありませんが、必ずよい経験ができるでしょう。もちろん現場に立つ若手の医師の側には、上級医や専門医が常にサポートしています。くわえて、何か困ったことや悩みがあればすぐに相談できる雰囲気があります。安心して研修に参加してください。豊富な経験によって、医師としてのスキルは格段に向上するでしょう。当院のエネルギーになってくれる人材を、いつでもお待ちしています。

当院にいらっしゃる際には、ぜひかかりつけ医からの紹介状を持参していただきたいと思っています。高度急性期病院としての病院機能を変わらず維持していくためにも、ご理解とご協力をお願いいたします。もちろん、当院にお越しいただければ、みなさまの期待に応えられる医療を提供できるように万全の体制を整えています。国の方針としても、地域のかかりつけ医院と大規模病院との役割分担が求められています。患者さんには、地域の病院を必要に応じた形で有効活用していただければ幸いです。

荒木 康之先生

これからは、垂直連携を推進していきます。高度急性期医療を提供するのが当院の使命です。そのため、高度急性期医療を求める方々によりよい治療を実践するためには、入院されている患者さんを長期にわたって、当院のみで支え続けることはなかなか難しいことです。しかしながら、自宅に戻ることが困難な患者さんがいた場合には、次の行き先をしっかり探して紹介しています。どのような疾患においても、急性期治療終了後には、中規模病院などに診てもらうシステムの構築が今後ますます重要になってきます。このようなことを含めて、地域の医療機関との垂直連携を確実なものにし、病院ごとの役割分担をきっちりと行い、患者さんにも医療従事者にも幸せになってもらえる医療システムの構築をめざします。

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