院長インタビュー

呼吸器疾患を始めとした様々な病気の全国的な治療・研究拠点、国立病院機構 東京病院

呼吸器疾患を始めとした様々な病気の全国的な治療・研究拠点、国立病院機構 東京病院
松井 弘稔 先生

国立病院機構 東京病院 院長

松井 弘稔 先生

目次
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国立病院機構 東京病院は、多くの病院や研究所が集まる西武池袋線清瀬駅の南側にあり、木々の緑に囲まれた穏やかな立地を誇ります。

戦前からこの地にあった国立療養所の歴史を引き継ぎ、現在は呼吸器疾患や結核の治療や研究で全国的に名を知られる同院について、院長の松井(まつい) 弘稔(ひろとし)先生にお話を伺いました。

当院は、この地に1931年に設立された東京府立清瀬病院が変わった国立療養所清瀬病院と、1939年に設立された傷痍軍人東京療養所が変わった国立東京療養所が1962年に統合されてできた国立療養所東京病院を前身としています。その後2004年には国立病院機構 東京病院と名称を変更し、今に至ります。

どちらの療養所も、当時は亡国病と恐れられた結核の患者さんの療養のための施設でした。国立療養所東京病院でも引き続き結核の治療、療養、研究を盛んに行っていましたが、結核の患者さんが大幅に減っていくに連れ、当院は呼吸器疾患や喀血の治療を中心に、東京都多摩地域北東部の中核的な病院として機能する病院となりました。当院へは清瀬市だけでなく、近隣の東久留米市や東村山市、小平市、西東京市、練馬区、埼玉県所沢市などからも患者さんがやってきます。

 

病院外観 東京病院ご提供

当院は呼吸器疾患の治療や研究の日本における拠点の1つであることから、呼吸器疾患のほぼすべてを診療できることが強みとなっています。

2010年に設置した呼吸器センターでは、結核に代表される肺感染症以外にも肺がんなどの腫瘍、間質性肺炎などのびまん性肺疾患、COPD、喀血、アレルギー性肺疾患など疾患別に5つの部門を設け、各部門に担当の医師を配置してどんな呼吸器疾患でも診ることのできる体制を整えています。

また当院は日本呼吸器学会認定の呼吸器専門医が常駐しており、過呼吸や気管支喘息、肺炎などで治療が必要な方に対して24時間365日の救急対応も行っています。人工呼吸器を付けている方の対応も可能であるうえ、消化器センターや循環器内科など多くの診療科があることから、合併症をお持ちの方でも安心して当院で治療を受けていただけると自負しています。

当院でとくに多くの患者さんを集めているのは喀血です。喀血に対するカテーテル治療が可能な病院は少ないため、当院には本州全土から患者さんがいらっしゃっています。

また、前身が結核の療養所だったこともあり、結核の病床数は100床と都内の結核病床の25%を持ち治療に当たっています。結核の患者さんは減ったとはいえ少なくない現状があり、今後もこれまでの歴史や経験を踏まえ結核医療を行っていきます。

さらには、近年中年女性を中心に患者さんが増えてきた非結核性抗酸菌症、肺MAC症の治療も実績を持っており、多くの患者さんが外来で当院へ通われています。

また、当院の脳神経内科はパーキンソン病筋萎縮性側索硬化症といった神経難病の診断や治療を行っています。40床の病床ではALSなどにより人工呼吸器を付けた方も入院が可能で、さらには神経難病のリハビリテーションにも力を入れています。

当院のリハビリテーションセンターでは、脳血管疾患、骨関節疾患の回復期やがん、呼吸器疾患の患者さんを対象にしたリハビリテーションを行っています。リハビリテーションは365日行っており、急に他の病気が発症しても対応できる総合病院であることもあり、東京や埼玉をはじめ広い地域から患者さんが集まっています。

また、当院には30床の緩和ケア病棟があります。2022年にリニューアルしたばかりの新しい部屋は緑に囲まれ、ベッドのままで眼の前の庭園を散歩することもできます。ご家族の方が休息するためのレスパイト入院も対応しており、ここにいらっしゃる全ての方が緑豊かな環境で穏やかに過ごしていただけたらと考えています。

自然豊かな院内 東京病院ご提供

当院には呼吸器の臨床や研究をしたい若手の医師に対して、先輩医師の指導で臨床での疑問を研究へとつなげたり、英語で論文を書くといった環境が充実しています。治験も喘息COPDを始めとした呼吸器関連が充実しており、呼吸器疾患を学びたい医師が全国から来ています。

今後は呼吸器疾患への専門性を磨きつつ、他の病気についても研究や治験に積極的に取り組んでいきます。

松井先生

90年以上の歴史を持つ東京病院は患者さんの立場で医療を提供することを理念としており、実際に緑の多い環境の中、医療の質は高いのに都心の病院のような混雑がない、ゆったりと治療を受けられる病院になっています。

地域の皆さんに温かい気持ちで育てていただいて、今の東京病院があります。これからも地域の方からの信頼に答えるべく、質の高い、患者さん目線の医療を続けていきたいと思います。