院長インタビュー

退院する患者さんが自宅へ安心して帰れる支援を―尾道市立市民病院の取り組み

退院する患者さんが自宅へ安心して帰れる支援を―尾道市立市民病院の取り組み
突沖 満則 先生

尾道市立市民病院  院長

突沖 満則 先生

この記事の最終更新は2017年09月15日です。

尾道市民総合医療センター 尾道市立市民病院は、1930年に広島県尾道市に開設された公立病院です。当時は尾道診療所という名称であり、1957年に現在の名称に変更されました。開院当時は、入院病床はありませんでしたが、徐々に規模を拡大し、現在は290の病床と24の診療科を持つ地域の中核病院として機能しています。

地域住民の方々へ高度医療や救急医療、がん医療などを中心とした医療を提供している一方で、患者さんが早期に在宅医療へ移れるような支援も積極的に行っています。

そんな同院での、取り組みや今後の課題などについて、院長である突沖 満則先生にお話を伺いました。

 

尾道市の公立病院である当院は、1983年に新病院に移転して以降、総合病院として地域を支えてきました。

当院を含め、尾道市の医療機関では医師の数が減少傾向にあります。また、市の人口は14万人ほどではありますが、全国よりも高齢化率が高く、独居の高齢者数も増えてきています。それにともない、従来から力を入れてきた救急医療やがん医療などに加え、在宅医療や地域連携の強化をするべく、さまざまな取り組みを行っています。

 

当院は、2010年にがん診療統括部を設置しました。また、翌年の2011年より広島県のがん診療拠点病院に指定されています。集学的がん治療センターでの患者さんの治療のほか、緩和ケアチームの運営、地域連携やがん患者相談支援センターの開設、研究・教育部門など、複数の部門が協力して成り立つシステムを整えています。

当院でもっとも患者数が多いのは肺がんであり、半数近くは早期のものです。これに関しては外科が内視鏡を使った手術を積極的に行っています。

どのような種類のがんでも、患者さんにとって可能な限り負担が少なく、最善の治療方法を行えるように日々努めています。

 

当院は、救急告示病院としての指定を受けている病院であり、二次救急に特化しています。

地域住民の方々が救急難民とならないよう、可能な限り救急搬送は受け入れる方針です。非常時に備えて、救急病棟のベッドは夜間には空けておくようにしていますが、それでも冬季など搬送数が増える時期には満床になります。

また、尾道地区は全国よりも高齢化が進んでいる地域です。そのような状況ですから、尾道市内のほかの医療機関と協力しながら、新たな救急体制を整えていかなければならないと考えています。

当院の整形外科は、中国・四国地区でもトップクラスの実力を持つ医師を含め、6名の医師が在籍しています。手術をしているあいだでも救急の患者さんを受け入れられるほどの、厚い診療体制を整えています。

なかでも数が多いのが、人工関節を使った治療です。一時は、人工関節の取り扱いが西日本でトップとなるほどでした。人工関節は、変形性肩関節症やリウマチ肩といった肩関節の疾患、変形性股関節症変形性膝関節症といった膝関節の疾患などに用いられています。

当院は反転型人工肩関節置換術の施設認定を受けているので、どのような難しい肩関節の疾患にも対応することが可能です。 

また、肩関節の治療数も多く、専門医師は年間300件近くの手術を行っています。特に、肩関節の腱板断裂を多く取り扱っており、関節鏡下での修復術は年間100件以上にのぼります。関節鏡を使った手術は患者さんの負担が少なく済みますので、早期に復帰していただくことが可能です。

教育面に関しても、当院は日本手外科学会の認定医研修施設に認定されている医療機関です。そのため、手指の疾患に関しても高度な医療が提供できるほか、高いスキルを持った医師の育成も可能です。

当院では、入院された患者さんが早い段階で自宅に戻り、安心して暮らせるための支援体制をしっかりと構築しています。

 

当院では、「尾道方式」といわれる退院時ケアカンファレンスを採用しています。当院が地域の医師などを交えて行うカンファレンスは、15分以内と定めています。カンファレンスを行う前にFAXやメールなどで、医師、看護師、ケアマネージャーなどの多職種で情報を共有しておき、可能な限り在宅医療を行っている医師の負担にならないように一度で終わるように配慮を行っています。

このカンファレンスには、医師や看護師のほか、リハビリ職種や薬局の薬剤師など、患者さんの状態に応じて多職種のメンバーが加わっています。病院で行っている治療が、在宅医療に戻っても同じように継続できるよう、地域との連携を強化しています。

 

尾道方式ケアカンファレンスの様子

当院の看護部では、2017年4月に在宅訪問部を開設し、退院前の自宅訪問を行なっています。病院での様子を観察するだけでは、退院後の状況を把握できません。退院後はどのような環境で生活をするのか、実際に訪問して把握したうえで、安心して自宅へ戻れるように環境を整えることを目指しています。

在宅訪問部のほか、地域医療連携室、入院後から患者さん・ご家族と関わっている在宅療養支援室、入院時のサポートを行う入院支援センターにもそれぞれ看護師を配置し、協力しながら患者さんのサポートを行っています。

当院では、再入院される患者さんが少なくありません。そういった患者さんがどのような環境で生活しているのか、どのような環境ならばQOL(生活の質)を保つことができるのか、入院中から考えることが必要だといえます。

 

突沖 満則先生

尾道市では、医師不足が大きな課題となっています。当院も例外ではなく、医師不足のため、さまざまな影響が出ています。

当院は、大きすぎない規模の病院だからこそ、顔の見える関係を構築することが可能で、指導医の目が行き届き、手厚い指導を受けることができます。また、実際の症例にも多く関わることができるので、医師として持っておくべき知識やスキルをしっかりと磨くことができます。

さらに当院は、スタッフのモチベーションがとても高い病院です。急性期医療と地域医療を同時に実現することに関心があるという方は、ぜひ来ていただければと思います。

 

公立病院である当院は、地域のみなさまに開かれた病院です。これから先も、どなたにでも受診しやすい病院でありたいと思っています。

尾道市は、全国より進んでいる高齢化と医師不足という課題を抱えています。そのような難しい状況ではありますが、ほかの医療機関とも連携をしながら、地域医療を守って行くために日々努力を重ねてまいります。

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