院長インタビュー

岡山県北部の救急医療を守り、地域活性の中核を担う津山中央病院

岡山県北部の救急医療を守り、地域活性の中核を担う津山中央病院
藤木 茂篤 先生

一般財団法人津山慈風会津山中央病院グループ 前総院長、岡山大学内科学 臨床教授、医学博士 取得...

藤木 茂篤 先生

この記事の最終更新は2018年02月20日です。

一般財団法人 津山慈風会 津山中央病院は、岡山県北部の総合病院として、また地域の基幹病院として多くの住民の健康を守っています。2016年には年間5,000台を超える救急車を受け入れ、現在もさまざまな症状の救急患者さんの救命にあたっています。また、悪性腫瘍に対する陽子線治療や、消化器・呼吸器疾患に対する内視鏡治療、NICU機能を有する新生児治療など、専門性の高い医療を提供しています。

地域から信頼される病院をめざす同院では、現在どのような取り組みを行っているのでしょうか。津山慈風会の総院長である藤木 茂篤先生にお話を伺いました。

病院全景(2020年夏完成予定CG) 画像提供:津山中央病院

当院は、1954年岡山県津山市二階町に開設しました。1999年には、国立療養所津山病院の経営移譲を受け、全国ではじめて国立病院と民間病院とが合併し、現在の津山市川崎に移転しました。2018年現在は、一般病棟467床、救命救急センター30床、結核病床30床、感染病床8床の合計535床の病床を有し、高度急性期医療の提供に努めています。

移転当時、医師は56名でしたが2018年1月現在には約120名にまで増えました。約28万人の人口をかかえる県北地域には、病床数200床を超える総合病院は当院しかありません。そのため、救急患者さんをお断りすることなく、地域医療支援病院として地域の医療機関との連携を強化しています。

当院は、常に新しい医療の提供をめざして病院機能を拡大し続けています。MRIやCTなどの高精度な検査機器をはじめ、陽子線を含む放射線治療装置や心臓疾患治療のためのアブレーションシステムなどを導入しています。さらに、2018年内の完成をめざし、手術用ロボット・ダヴィンチを備えた手術室やハイブリッド手術室、無菌手術室など、新たな手術室の増室・強化を図っています。

当院の救命救急センターが年間に受け入れている救急車の台数は、毎年増加傾向にあります。2016年は5,236台であり、救急患者数は24,000名を超えています。

当院の救命救急センターは、2001年2月に認可されました。津山市を含め、真庭郡、英田郡、兵庫県の佐用町などの周辺地域を含めた、人口約28万人に対する地域の救命救急センターとして機能しています。救急担当医師を常時9名以上配置しており、「お断りしない救急診療」をモットーとしています。ドクターヘリやドクターカーも活用し、迅速かつ広範囲をカバーした救急医療に努めています。

2016年3月に岡山大学と当院とが共同で運用する「がん陽子線治療センター」を開設しました。同センターは、中国・四国地方ではじめての陽子線治療施設です。患者さんは周辺地方からだけではなく、九州地方や近畿地方、さらには海外からもいらっしゃいます。

陽子線治療の最大の特徴は、がん病巣の大きさや深さに合わせて放射線の調節ができるため、正常な組織への照射を避けて、ピンポイントにがん病巣へダメージを与えられることです。そのため、放射線治療の影響を受けやすい臓器の近くに発生したがんにも照射できます。また、陽子線治療は1日1回・週3~5回、合計10~39回程度の治療回数で完了するため、日常生活を続けながら通院での治療が可能です。

岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター 画像提供:津山中央病院

2018年1月時点で、延べ183件の陽子線治療を実施しました。そのうち<13件は、小児がんの患者さんへ実施となっています。

2000年に「内視鏡センター」を開設して以来、数多くの患者さんに内視鏡検査および内視鏡治療を実施してきました。消化器内科・呼吸器内科の内視鏡担当医を中心に医師・看護師・医療クラークがチームとなって、日々の診療にあたっています。2017年に実施した内視鏡件数は年間13,000件を超えています。

同センターでは、拡大観察や特殊な光(NBI)を用いた精度の高い診断や病変の早期発見、食道・胃・大腸の早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を積極的に行っています。さらに、肝臓・胆道系や、膵臓、小腸領域、気管支領域など、それぞれの専門分野別にその領域に詳しい医師が診療します。

内視鏡センターチーム 画像提供:津山中央病院

内視鏡治療は、患者さんの負担の少ない低侵襲な治療です。同センターは「安全かつ信頼のおける内視鏡検査および治療」をモットーに、これからも地域のみなさまに安心いただける医療を提供していきます。

当院の心臓血管センターは、2011年に心臓血管外科と循環器科を統合して開設しました。人工心肺などの生命維持装置を扱う、メディカルエンジニア(ME)室や心臓リハビリテーション科を内設し、効率的・包括的な治療を行うことを目的としています。

同センターでは、狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患をかかえる患者さんに、心臓カテーテル治療を実施しています。心臓カテーテル治療は、心臓に酸素を含んだ血液を供給する冠動脈の血流をよくする治療法です。経皮的冠動脈形成術(PCI)とも呼ばれています。PCIを含む心臓カテーテル検査および治療を、2016年には約1,000件実施しました。

血流を確保するため、ステントという金属でできた網目状の筒を血管内に留置する「ステントグラフト」も実施しています。また、足の付け根などの血管からカテーテルを挿入して不整脈の原因となっている部分を焼き切る「カテーテルアブレーション」は、2017年に153件実施し、その後も実施数は増えています。2017年10月からは新しい治療法である「クライオアブレーション」を開始し、心臓血管疾患や循環器疾患の治療に積極的に取り組んでいます。

県北地域の高齢化は進んでおり、今後ますます心臓疾患をかかえる患者さんの増加が予想されます。心臓疾患は手術後も心臓リハビリテーションなど長期間の治療が必要なことが多く、手術後から退院して自宅に戻られたあとも地域で診療が継続できることが大切です。当院では入院から外来までの継続的な心臓リハビリテーションを実施しています。地域の医療機関との連携もより深化し、地域全体で支えていきたいと思っています。

当院は2011年7月29日に岡山県より地域医療支援病院に認定されました。地域の医療機関との、患者さんの紹介や逆紹介などによる連携や、医療機器などの共同利用、地域の医療従事者へのセミナーなどを実施しています。

当院は、退院される患者さんに対し、当院医師とかかりつけ医との連携を示す「結(ゆい)カード」の運用を2017年4月から開始しました。急病でかかりつけ医と連絡が取れない場合などに、当院の医師が早急に対応できる仕組みです。

カードには、患者番号と氏名・診療科・担当医のほか、かかりつけの医療機関と医師名を明記します。2017年9月時点で、県北地域の129の医療機関と連携登録を結んでおり、かかりつけ医を持たない患者さんには当院からかかりつけ医をご紹介しています。

結(ゆい)カード 画像提供:津山中央病院
フィットネス&スパ 「カルヴァータ」(天然温泉) 画像提供:津山中央病院

津山市は昔から交通の要所として栄えてきました。自然環境に恵まれ、桜や温泉、懐かしい街並みなど、スローライフを楽しむことができます。私の趣味のひとつが、温泉めぐりです。その温泉好きが高じ、病院敷地内に温泉を掘りました。それを利用して、2014年5月にフィットネスや天然温泉のスパを備えた「フィットネス&スパ カルヴァータ」をオープンしました。地域の方々の健康増進に少しでも貢献できればと思っています。

当院では、地域のみなさまが長く健康でいられるよう、健康診断や疾病予防のための講演活動などを積極的に実施しています。治療が必要な患者さんには、当院と地域の医療機関とが連携し、地域で完結できる医療体制を提供します。そして、この地域の救急医療体制は、当院が最後の砦となり必ず守り抜きます。

当院の職員は「私たち津山慈風会は 地域の皆さんに やさしく寄り添います」という理念を胸に、これからも地域に貢献する活動を推進してまいります。

受診について相談する
  • 一般財団法人津山慈風会津山中央病院グループ 前総院長、岡山大学内科学 臨床教授、医学博士 取得(消化管免疫)

    藤木 茂篤 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。