「尊厳死」と「安楽死」の違いとは?|ケアミー

    「尊厳死」と「安楽死」の違いとは?

    • 2015/06/08更新
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    「尊厳死」や「安楽死」ということばは、たびたびマスメディアでも取り上げられていますし、聞いたことがある方が大多数と思います。学校の授業で取り上げられることもあるようですし、お子さんでも聞いたことはあるかもしれません。
    しかし、改めて「これらの言葉の詳しい意味や違いは何か」と聞かれると、難しく感じるのではないでしょうか。今回はこれらのことばの意味や、日本における扱いについてご紹介したいと思います。

    尊厳死とは?

    尊厳死とは、「人間が人間の尊厳を保って死を迎える」ことをいいます。具体的には「回復の見込みがない病態」となった患者が「末期」の状態に至った際、患者自らの意思に基づいて、単なる死期を引き延ばすためだけの延命措置を行わずに自然な死を遂げることです。

    また前述した「患者自らの意思」は、「リビングウィル」と呼ばれます。リビングウィルは“生前の意思”と訳され、回復不能の病気にかかり、かつ末期状態の患者本人が遺すものです。具体的に説明すると、正常な意思・判断力を持つ健常時に、自らの考えで尊厳死を望むことを署名する文書のことをいいます。

    *参考記事 尊厳死とは?日本ではどう定義されている?

    安楽死とは?

    一方「安楽死」も、回復の見込みがない末期の患者が対象であることは同様です。しかし「身体的、精神的な苦痛から解放する」ことが目的とされ、その方法も「苦痛の少ない方法で死期を延ばすためだけの延命措置を中止したり、死に至らしめる処置を行う」と広く幅が持たされています。

    安楽死の種類

    安楽死は日本では、純粋安楽死・間接的安楽死・消極的安楽死・積極的安楽死の4つに分類されます。

    • 純粋安楽死

    不治で末期の患者に対して、肉体的苦痛を緩和する処置が生命を短縮させない場合をいいます。

    • 間接的安楽死

    患者に対して、身体的苦痛を緩和する処置を行うことにより、副作用などで生命を短縮させる場合をいいます。

    • 消極的安楽死

    患者に対して、苦痛から解放するために延命措置を中止して結果的に死に至らしめることをいいます。

    • 積極的安楽死

    患者に対して、苦痛から解放するために故意に死に至らしめる処置をとることをいいます。

    日本における尊厳死と安楽死

    日本において尊厳死・安楽死を認める法律は現在のところありません。しかし今日の医療現場では、回復の見込みのないがんの末期状態の患者さんなどに関し、あらかじめ本人の意思を確認しておき延命措置を行わない、ということは広く一般的におこなわれているといえます。
    つまり、日本において尊厳死や安楽死の法整備はなされていませんが、実際に尊厳死・純粋安楽死・間接的安楽死・消極的安楽死ととれるようなケースは、認められているといって良いでしょう。憲法(特に基本的人権のひとつ、幸福追求権)を根拠に尊厳死を認める判例も、いくつかでているようです。

    しかし、積極的安楽死に関しては、日本では法律的に認められていません。実際に名古屋安楽死事件・東海大学安楽死事件など、これまでに積極的安楽死の処置をとった事例は有罪と判決されています。

    *参考記事 日本における尊厳死の現状とは?過去に犯罪となった事例も!?

    1991年、東海大学安楽死事件において、横浜地方裁判所は積極的安楽死が許容されるための4要件として以下を挙げました。

    • 患者に耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
    • 患者は死が避けられず、その死期が迫っていること
    • 患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くしほかに代替手段がないこと
    • 生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること

    しかしこれには「緊急避難(自己の生命などに対する現在の危難を避けるため他に方法がない場合に同等の第三者の利益を侵害する行為で、なおかつ刑法上罪とならないこと)の法理」という前提があることなど、いくつか問題点が指摘されています。なお、これはあくまでも裁判所の判断であり、この要件を満たしていれば積極的安楽死が合法である、というわけでもありません。

     

    海外の尊厳死、安楽死

    多くの国は尊厳死や積極的安楽死以外の安楽死は認められていませんが、積極的安楽死や自殺幇助(自殺のための薬などを提供すること)を認める国もあります。

    具体的に事例を挙げてみましょう。スイスでは積極的安楽死は違法ですが、自殺幇助は規制されていません。患者自身の意志で服薬する場合は、医師が致死量の薬物を処方することは許されています。また、アメリカでは、積極的安楽死は国で禁止されています。しかしオレゴン州・ワシントン州・モンタナ州・バーモント州・ニューメキシコ州など一部の州域では、自殺幇助が合法化されています。

    オランダでは2002年に世界で初めて安楽死が合法化され、承認は厳しいものの12歳以上の患者に対して安楽死が認められました。そして、ベルギーではオランダに次いで安楽死が合法化され、現在では、安楽死を許可される年齢を定めていません。ルクセンブルクでも2009年に安楽死が合法化されました。このように、世界的に安楽死の理解は広まってきているといえるでしょう。

    *参考記事 尊厳死にまつわる法案や考え方。海外の事情はどうなっている?

    まとめ

    日本でも「尊厳死」の法制化を目指す動きがありますが、反対派の方々の意見もあり、ハードルは決して低くないようです。尊厳死は生命倫理に関する繊細な問題ですので、時間をかけた活発な議論が必要です。法制化される前に私たちもみな、一度はよく考えるべき問題といえるでしょう。

    ケアミーでは他にも尊厳死・安楽死にまつわる様々なことについて紹介しています。こちらの記事も参考にしてみてください。

    「尊厳死協会」とは何をする団体?提唱する「リビングウイル」とは!?

    監修

    メディカルノート編集部 (医師監修記事)

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