インタビュー

心房細動の症状

心房細動の症状
池田 隆徳 先生

東邦大学 医学部内科学講座循環器内科学分野 教授

池田 隆徳 先生

この記事の最終更新は2015年10月29日です。

心房細動の症状と聞いて、動悸を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。確かに心房細動の症状として最も頻度が高いのは動悸です。しかし、症状がほとんどあらわれないこともあるといいます。心房細動の具体的な症状と無症状の際の注意点について、東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野の池田隆徳先生にお話をお聞きしました。

心房細動は初期のほうが症状が重篤な傾向があります。具体的には動悸・胸部不快感・胸痛・立ちくらみ(めまい)・全身倦怠感などが主症状です。また、脈を計ると脈が速い・遅い・不規則になっている、ということが分かります。このなかでも最も自覚症状として多く挙げられるのは不規則な動悸です。

※なお、一般の患者さんは、動悸を「胸を強くドクッと打たれること」と思われる方が多いのですが、医学的な動機の定義とは、脈が速くなること、胸の鼓動が亢進することを指します。その動悸も、非常に不規則に動くことが特徴です。

これらの症状が強い場合は、QOLが低下するほど仕事に集中できなかったりします。ただし、心房細動の自覚症状は非常に個人差が大きく、無症状の方もなかにはいます。特に高齢者の場合、心房細動を起こしていても3人に1人は無症状か、症状がほとんどないという方が多く、慢性心房細動(詳細は『心房細動とはどのような病気?』)に近づくほど無症状となる傾向があります。そのため、慢性心房細動の患者さんの場合、たまたま何らかの機会があって心電図を撮ったら見つかった、という方も少なくありません。

このように、心房細動が慢性化すると自覚症状も軽減しがちですが、これは心房細動自体が治っているわけではありません。心房細動によって血栓が生じ、脳塞栓症へと進行してしまう危険性もあります。当然ながら、無症状の方ほど気づくのが遅れてしまいがちですから、手足が動かなくなったり、しゃべりづらくなったりした場合には脳塞栓症に対する注意が必要です。最悪の場合、直前まで元気だったのに突然苦しくなり、命の危機がおよぶ可能性もあります。

心房細動自体が命の危機を及ぼすことはほぼないといっていいでしょう。しかし心房細動の状態が長期化することで心臓の機能が低下し、心不全へ進行する可能性はあります。

また、心房細動は血栓を作りやすい状態です。この血栓が血流に乗って脳に到達し、脳内の血管に詰まると脳梗塞を引き起こします。脳梗塞を起こした患者さんのうち、15%は心房細動による血栓が原因ともいわれています。

そのため、心房細動を治療するにあたり、医師は動悸などの症状を和らげることよりも、脳卒中をどれだけ起こしやすい状態にあるかを最優先に診ます。目の前の患者さんが脳卒中を引き起こす可能性がどれほど高いかを診なければ、心房細動の状態をすぐに止めることはできません。

なぜなら、不整脈をむやみに止めてしまうと一時的に心房筋(心房の筋肉)が動かなくなってしまい、左右の心耳(心房についている三角状の突起で、袋状の形をしている)も停止して、そこで血液が徐々に固まってきてしまうからです。そしてまた心臓が動き出せば、心耳でできた血液の塊・血栓がはがれ、血流に乗って流れていってしまいます。これが万が一脳に詰まってしまえば、脳梗塞へとつながります(心原性脳梗塞といいます:詳細は『心房細動と脳梗塞の関係。心房細動は脳梗塞を引き起こす可能性がある』)。

前述のように、初期の心房細動は症状が持続せず、無症状であることも多いといわれています。しかし、「たかが不整脈」と期外収縮とおなじようにとらえ、放置してしまうことは非常に危険なことです。心房細動が慢性化することで、脳梗塞心不全を起こす可能性は十分にあり得ます。定期的な健診で心電図に異常があったり、上記に当てはまる症状が自覚できる場合は、専門医を早い段階で受診したほうがよいでしょう。

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