インタビュー

下肢静脈瘤日帰り手術の変遷と今後の展望

下肢静脈瘤日帰り手術の変遷と今後の展望
阿保 義久 先生

北青山Dクリニック 院長

阿保 義久 先生

この記事の最終更新は2015年11月05日です。

下肢静脈瘤の根治的な治療として長く行われてきたストリッピング手術は入院をともない患者さんにも相応のリスクがあるものでしたが、現在では高周波やレーザーを使用して患者さんの負担が少ない治療が可能になっています。日本で最初に下肢静脈瘤の日帰り手術を確立した北青山Dクリニック院長の阿保義久先生に、これまでの流れと今後の展望についてうかがいました。

下肢静脈瘤に対する根治手術として、ストリッピング手術と呼ばれる静脈を引き抜く手術は、100年以上も前から行われてきました。この治療法は皮膚に数カ所の切開が必要であり、術後の出血や痛み、神経障害のリスクが比較的大きいものでした。基本として入院加療となることもあり、病院側も患者さんも双方がなかなか治療に踏み込めない傾向がありました。弾性ストッキングによる圧迫治療で様子を見るか、治療をあきらめて放置する方が多く、その結果、重症化してからようやく手術に進むケースが目立ちました。重症化してからの治療は、治療後の回復に相当の時間を要する上に、完全に回復しないことがあります。早期に負担のかからない治療が長い間求められてきたのです。

私は自分自身のこれまでの外科医としての多様な手術経験と、麻酔医としての経験を活かして手術方法の改良に取り組み、血管抜去部位の範囲の縮小や、静脈麻酔・TLA麻酔の導入により、日帰り可能なストリッピング手術を考案しました。そして北青山Dクリニックではストリッピング手術を外来で実施する手法を2000年から積極的に提供してきました。以来、全国から多くの患者さんが治療を希望して来院されています。

しかし、実際に実施できる医療機関は限られていました。そしてストリッピング手術では切開が1〜2か所は必要で、血管を抜去することによる神経障害の発症のリスクもあるために、より患者さんの身体にやさしい治療が求められてきました。

2000年初頭から高周波やレーザーによる血管内治療が実施されるようになり、その後、機器の改良が重ねられ、身体への負担が軽減されながらも従来のストリッピング手術以上の治療効果が期待できるレーザーや高周波が登場しています。当初はレーザー機器によって照射後の出血や痛み、再発率などに差異があったようですが、最近のレーザー機器は、どれも組織吸収率が十分な波長が選択されるようになり、それぞれ遜色のない血管処理能力をもっています。

下肢静脈瘤は非常に個人差が大きい疾患ですが、治療の本質はシンプルです。すなわち、治療成績を決める要因はレーザーの性能(ハードウエア)ではなく、担当医の診断能力や治療技術、選択するレーザーの出力や照射速度・照射部位など、治療ソフトにあることを皆さんに理解していただきたいと思います。

北青山Dクリニックでは、下肢静脈瘤の種類・性状に応じて5台のレーザー機器、1台の高周波治療機器、そして1台の光治療機器を使い分けています。それぞれの機器の特性を理解した上で下肢静脈瘤の病態に応じて適切な選択をし、間違いのない治療手技で対応することが非常に大切であると考えています。

今や、下肢静脈瘤の治療は外来治療として通院治療で問題なく実施できるようになりました。そして、治療開始が早ければ早いほど、症状が回復する可能性が高くなります。治療にともなう時間的・身体的負担が少なくなった現在、進行性の疾患である下肢静脈瘤は早期の治療を目指すべきであると考えます。

北青山Dクリニック 下肢静脈瘤レーザー治療センターのHPはこちら

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