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インタビュー

多発性硬化症の検査と診断

多発性硬化症の検査と診断
糸山 泰人 先生

国際医療福祉大学 前副学長/九州地区生涯教育センター長

糸山 泰人 先生

多発性硬化症は、現時点でも原因が明らかでない厚生労働省指定の特定難病です。また、発症の初期に様々な神経症状が現れた後に、それらの症状が自然に寛解(病気が治ったわけではないが、症状が消失すること)したり再発したりするので大変に診断の難しい病気です。そのため医師は、診察の際に患者さんの症状を尋ね神経学的な診察を行うだけでなく、MRIをはじめとした検査を重ねて慎重に診断を行います。本記事では、多発性硬化症の検査方法や診断方法について、国際医療福祉大学前副学長 糸山泰人先生に解説していただきます。

多発性硬化症では、実に様々な神経症状が現れて、寛解したり再発したりしやすいため、病歴を詳しく聞き実際に体の状態を観察する神経学的検査を行うことが大切です。ただし、神経学的検査は患者さんの負担が少なく手軽に行えるものの、多発性硬化症の確定診断をするのには十分ではありません。そのため、MRI検査(核磁気共鳴画像検査)、髄液検査、誘発電位検査などを重ねて行います。

多発性硬化症はひとつの検査で診断ができるわけではなく、中枢神経(脳や視神経や脊髄)における病変の時間的ならびに空間的な多発性を確認して診断するものですから、詳しい神経症状の病歴と実際の神経学的診察が重要となります。

多発性硬化症が疑われる患者さん、もしくは多発性硬化症の再発や増悪が疑われる患者さんに対して、医師は神経学的検査を実施します。物の見え方や、眼球の運動を確認する方法、椅子に腰掛けてもらったり、ベットに横になっていただいた姿勢で、体の感覚や運動機能、それに反射などが正常か否かを確認する様々な検査を行ないます。多発性硬化症の診断をするためや発症や再発の確認をする場合の基本となる検査です。

  

核磁気共鳴画像(MRI)とは磁場のなかに検体を置き電波を照射し、それにより得られた信号(MR信号)を画像化する方法です。即ち、MRIとは人体内部の各組織に含まれる水素原子核に反応して画像を結ぶ装置です。

体内の水素原子の緩和を違う角度(視点)から見たT1強調画像、T2強調画像で観察すると、多発性硬化症の場合は、病巣は水分が多いためT1強調画像にて病巣は黒く映ります(低信号)。一方、T2強調画像では白く映ります(高信号)。医師は、これらの画像と他のデータをもとに、多発性硬化症の診断を行います。多発性硬化症の患者さんの脳や脊髄のMRI検査を行った場合、多数の斑状の病巣が確認できます。(多発性硬化症の病名は中枢神経系の組織に硬化した病巣が多発することに由来しています。)このような病巣は脳室の周辺や大脳皮質近傍に認められやすい傾向があります。また新しい病巣では、ガドリニウム造影効果が認められます。

腰椎穿刺を行って脳髄液を採集した後、脳脊髄液に多発性硬化症に特有な異常が起きているかどうかを判断します。多発性硬化症は自己免疫反応のような免疫システムの異常が中枢神経系に起こっているのではないかと考えられています。そのため、採集した髄液を分析し、免疫機能の異常の有無を確認します。具体的には、γ-グロブリン(特にlgG)の上昇,オリゴクローナルバンドの存在(髄液を電気泳動して、血清にはない異常なバンドが検出される), 髄鞘塩基性タンパク(MBP)の上昇が確認できた場合は、多発性硬化症の可能性が高くなります。

多発性硬化症では、脱髄病変が脳・小脳・脳幹・脊髄内部で多発し、神経刺激の伝導をさまたげるようになります。この病変の存在の有無を調べるために、検者に視覚、聴覚や感覚の外的刺激を与えて、それにより誘発される脳の電気的反応をみる検査です。

多発性硬化症の病因は不明であり、また診断に特異的な検査異常がないため、その診断はおもに病気の特徴に基づいた診断基準によってなされます。その基本事項は「中枢神経系に2カ所以上の病変が存在する」という空間的な多発性と、「中枢神経病変による症候が再発と寛解を繰り返す」という時間的多発性の2点です。

注意深く病歴を聴取しながら、そして神経学的検査での所見から病変の空間的多発性と時間的多発性を確認し、かつ他の疾患を除外して(鑑別すべき代表的な疾患としては、臨床病像が類似している視神経脊髄炎があります。)多発性硬化症を診断します。近年では時間的および時間的多発性の病変の確認にはMRI画像検査を用いることが多く、国際的な多発性硬化症の診断基準もMRI検査が主体となっています。

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