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インタビュー

地域医療再興のための再編―新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院が担う三次救急

地域医療再興のための再編―新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院が担う三次救急
紙谷 義孝 先生

新潟大学 地域医療教育センター ・魚沼基幹病院  麻酔科部長 特任教授

紙谷 義孝 先生

新潟県の魚沼地域は米どころとして有名であり、自然も豊かな地域です。その一方、かつてこの地域には三次救急、つまり高度医療・高度救急を担う病院が全く存在しませんでした。このような状況を解決するべく出来た病院が新潟大学の関連病院である、新潟大学地域医療教育センター 魚沼基幹病院です。2015年6月に誕生した魚沼基幹病院 麻酔科に初代教授として赴任された紙谷義孝先生に、病院が持つ機能についてお話をうかがいました。

2015年6月にオープンした魚沼基幹病院(外観)

 

2015年6月にオープンした魚沼基幹病院(内部)

新潟県魚沼地域の地域医療は、いくつかの病院によって担われてきました。例えば、400床程度の新潟県立小出病院、200床程度の新潟県立六日町病院などです。どこも地域を担う大切な病院でした。しかし、これらが分散していたことによりある問題が生じていました。ひとつひとつの病院は「ある程度」の部分まで地域医療を支える力がありました。しかし、どこの病院も医師不足です。大学病院並みの三次救急(交通事故による外傷や大がかりな手術をしなければならない施設)を担うことのできる病院が魚沼地域にはひとつもなかったのです。三次救急は具体的には長岡赤十字病院をはじめとする長岡市にある病院で担われてきたのです。

救急で扱わなければいけない病気や外傷には「時間がすべて」というものがあります。交通事故ももちろんですが、心筋梗塞なども時間がすべてです。魚沼地域ではすぐに処置をすれば助かったであろう命が失われてしまうこともありました。

この、「時間が全て」という救急の患者さんを救うためには「ある程度」の病院がいくつかあっても成立しないことは明らかでした。三次救急、つまり高度医療を担うことのできる病院が必要だったのです。そのため、魚沼地域では地域医療を担っていた施設を集約化する試みが行われました。その集約を終えた後、新潟大学のサポートのもとで立ち上げられた病院が魚沼基幹病院です。

救急を担う病院としての期待の大きさはすでに現れ、その機能が生かされています。既にドクターヘリが3~4日に1度は飛んできます。これまでは重症患者の約2割が長岡などの圏域外に救急搬送されていましたが、魚沼地域内で対応できるようになりました。南魚沼市消防本部によると、平成26 年6~ 11 月に約10%だった救急患者の長岡への搬送は、平成27 年の同時期では約2%に減少しています。十日町からの期待も大きく、開院を見越して山にトンネルが掘られました。これにより、将来的には十日町から30分以内で魚沼基幹病院に来られるようになるため、十日町地区で今までは救命できなかったような病気も救命できるようになると期待されています。

ヘリポートについて説明する紙谷教授

また、魚沼基幹病院では教育を一つの軸としています。総合診療で有名な水戸協同病院のモデルを目指しており、研修医への教育を充実させることを考えています。総合診療科は現在の一つの売りですが、魚沼基幹病院は総合診療医として、米国セントルイスで病院総合医、いわゆる「ホスピタリスト」として、実地臨床及び臨床教育に従事していた石山貴章医師を迎え、日本における「ホスピタリスト」育成の場となることを目論んでいます。さらに総合診療科だけでなく、臨床の第一線におられる優秀な先生にも集まって頂いています。

現在は、協力型研修施設という形をとっており、新潟大学の本院と連携しています。将来的には単独で研修施設としての認定を受け、教育を軸に据えていくプランも考えています。

充実しつつある魚沼基幹病院の医師

魚沼基幹病院は、さまざまな文化の施設、さまざまな病院にいたメンバーが一同に会してできた病院です。そこをすり合わせながらチームとして機能させていくことには、まだまださまざまな課題があります。また、医療スタッフの職種には、医師だけでなく看護師など多くがあります。この垣根をなくすことも、チームとしての機能を高めるために重要です。通常では、病院は「麻酔科」「耳鼻咽喉科」「内科」といったように科ごとに医局が分かれています。これをなくすため、総合医局制度をとり、各科同士の垣根をなくしていく工夫をしています。

新幹線の駅にも近く、自然が豊かな病院からの風景

魚沼基幹病院は新幹線の駅、浦佐駅を最寄り駅とします。徒歩でも行き来が可能な距離にあります。これには通院の便ばかりでなく、「医師に集まってもらう」という意図があります。つまり、東京など遠くからも通ってもらうことができるということです。大宮からであればほぼ問題なく通勤することができますし、実際に通勤している医師もいます。新病院を設立するにあたって、立地を工夫したということも医師不足の解消に向けた取り組みです。

2015年10月現在、稼働させることができている病床は454床のうち概ね300床程度です。しかし、既に三次救急はスタートし、ICU(集中治療室)もオープンして、高度医療が不在であったという魚沼地域の医療ニーズに応えることが実現し始めてきました。今後は病床フル稼働し、医師にとって魅力的な病院を目指すことにより地域医療の「再興」を目指していきます。